第56回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

MTDLP

[PM-1] ポスター:MTDLP 1/ 理論 1

Fri. Sep 16, 2022 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PM-1-4] ポスター:MTDLP 1回復期リハビリテーション病棟における生活行為目標と合意目標の特徴と違い

岩上 さやか1冨永 渉1 (1国際医療福祉大学小田原保健医療学部)

【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)では自宅退院を円滑に行う事が重要であるが,そのためには入院患者自身が退院後の生活を具体的に考え目標を持つ必要がある.また,その支援を行う作業療法士(以下OT)は,対象者から聞いた希望を現実的な目標にすることが求められている.その為のツールとして日本作業療法士協会が開発した生活行為向上マネジメントツール(以下MTDLP)があるが,MTDLPを用いる事で対象者の目標がどの様に変化する傾向にあるのかを明らかにした研究はない.そこで本研究では,事例として日本作業療法士協会事例報告登録システム(以下登録システム)に登録されているデータを用いて,MTDLPで対象者から聞いた生活行為目標とその後OTが評価し対象者と協業して立てた合意目標とを比べ,それぞれの特徴を明らかにする事を目的とした.生活行為目標と合意目標との違いや特徴を明らかにする事で,入院患者が退院へ向け思い浮かべた目標の特徴や,その具体的な掘り下げ方を検討できる.これは退院へ向けた現実的な介入計画立案に役立ち,早期退院や作業療法利用の満足度向上に貢献できると考える.尚,本研究は筆者勤務施設の倫理審査委員会の承認を得て行った.
【方法】既存の事例情報を用いた探索的データ解析.研究対象は登録システムに登録された事例のうち,回復期病棟の対象者に対してMTDLPを用いて報告されたもの(MTDLPを用いた事例報告が始まった2015年~2021年6月までの68件全て).収集する対象情報は1) 対象者の一般情報(疾患名,障害名,性別,年齢,病棟入院期間,障害の程度),2) 生活行為目標,3) 合意目標.1)に対しては記述統計で分析を行い,2)と3)に対してはそれぞれの特徴を明らかにする目的で,単語の出現頻度,種類,関連性等,テキスト型データの質的・量的分析を行った.解析にはテキストマイニングソフトKH coderを利用した.
【結果】対象68件のうちデータ欠損の無い66件を用いた.平均年齢は68歳,男女比は1:2,疾患比は脳血管疾患:運動器疾患:その他で9:5:3であった.生活行為目標,合意目標をテキストとして分析した結果,総抽出語(使用語)と異なり語(使用語)は生活行為目標で1080(484)語と304(239)語,合意目標で2238(1027)語と498(382)語であった.品詞別では生活行為目標と合意目標とでは名詞で110語と263語,サ変名詞で104語と326語,動詞で65語と123語,副詞可能で8語と21語であった.その内出現頻度上位の5語は生活行為目標で「家事(9)」「生活(7)」「自分(7)」「身の回り(7)」「仕事(6)」,合意目標で「自宅(24)」「自立(24)」「歩行(20)」「退院(16)」「家事(14)」であった(括弧内は出現回数).また回復期病棟のキーワードである「自立」という語に対する関連語分析では,生活行為目標で「送る,いつか,管理,健康,再開」合意目標で「自宅,ADL,入浴,歩行,退院」が関連の強い上位5語であった.
【考察】分析結果より,抽出語,特にサ変名詞の数の違いから,生活行為目標より合意目標で目標に挙がる「作業」が明確になり多様化している可能性が考えられる.また副詞可能の増加から,より具体的な時期や量を示す目標に変化していると考える.一方で合意目標の頻出語からは目標の表現をセラピストが選んでいる可能性が推測される.MTDLPを用いる事で目標は具体的になると示唆されたが,内容に関しさらなる質的な分析が必要である.