第56回日本作業療法学会

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[PN-10] ポスター:地域 10

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-10-8] ポスター:地域 10買物の再開に至った訪問リハビリテーション事例から買物に関する評価介入の要点を考える

霜鳥 将1 (1鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院訪問リハ科塩田サテライト)

【はじめに】高齢者にとって買物は健康維持・社会参加の観点で重要と言われている(倉持裕彌2015).今回,店舗従業員(以下,従業員)から買物支援サービスを受けながら店内で電動カートを使用する事で買物を再獲得した事例から,店が提供できるインフォーマルサービスに焦点を当てた買物の評価・介入の要点について考察を加え報告する.尚,発表に際し事例からの同意と当院倫理審査会から承認を得ている.【事例紹介】70歳代男性.要介護2.診断名は腰椎椎間板ヘルニア.既往歴はポリオ(右下肢麻痺),右肩腱板断裂術後,左正中尺骨神経麻痺.甥夫婦と敷地内同居.以前は杖歩行にて週2-3回近所の商店とコンビニへタバコや食品を買いに行っていたが,X年Y月,腰椎椎間板ヘルニア悪化による杖歩行困難とコンビニの閉店によって買物が困難となる.X年Y+3月,買物の再開を希望され介入に至る.【初期評価】FIM102/126点(移乗6.車椅子移動4). Lawton IADL尺度 3/5点(買物0).買物は月1-2回甥の妻に依頼.「1人で自由にタバコ・日用品・食品を買いに行きたい」との希望が聞かれた.
【経過】買物の再獲得までの4ヶ月の過程を記す
1.買物場所と移動手段の選択
買いたい物に嗜好品を含む事と買物頻度が不定である事から,目標を「ご自身で最寄りの店へ行き買物をする」に設定.移動手段は電動カートを検討し,安全な走行が確認できた為導入した.
2.店での動作確認
買物を行うには店内を電動カートで移動する必要があった為,最寄りのスーパーA・B,コンビニCに対し,道路交通法における電動カートの位置付けを説明した上で,店内での買物訓練実施の協力を依頼.訓練当日は従業員と共に以下を確認.(1)通行の安全性:店内は最低速(0.5km/h)で走行.他客とすれ違いを含め危険場面無し.(2) 商品の運び方:膝上にカゴを乗せた走行を試みたがハンドル操作が阻害される為,電動カート備付けのカゴに直接商品を入れ運んだ.(3) 会計:中央列よりも最外側列のレジの方が,空間的な広さから運転が容易で並び易いと事例は話された.(4)袋詰め・積荷:従業員が援助.
訓練の様子を踏まえ従業員と今後の買物の可否を協議した結果,2店は容認,スーパーAのみ「バイクだと思うお客さんもいそう」「誰か付添って欲しい」「もしもの時の対応に困る」等の意見から単独で店内での電動カート使用に難色を示した.
3.店で可能な買物支援サービスや諸条件の確認
買物動作は概ね可能であったが,毎回同様に遂行できるか,他者への迷惑等,事例は不安を話された.その為,店で可能な買物支援サービスを確認.袋詰め・支払い・積荷の他,スーパーBは事前連絡があれば店内のみ従業員の付添いが可能と伺った.また混雑せず従業員が多い時間帯も教えて頂き,事例は「安心して買物に来られる」と話された.
【結果】電動カートを使用し店での買物自立(買物不可の店あり).FIM107/126点(車椅子移動6). Lawton IADL尺度 4/5点(買物1)【考察】移動手段と買物動作を獲得しても店内で電動カートを使用した買物に不安があった.しかし,店が可能な買物支援サービスや諸条件を確認した事で不安が軽減し,買物の再獲得に繋がったと考えられる.つまり,店で可能な買物支援サービスや買物を行い易くする諸条件の有無が買物の可否や買物場所を選択する上で重要な判断材料になった事から,生活機能のみならず,地域の中の各店で提供できるインフォーマルサービスの確認も買物に関する評価・介入の要点になると考えられた.また電動カートに抵抗感を示す店もあった事から,買物が持続できる社会創りに向け店や市民への啓蒙も地域のOTの役割である事が示唆された.