第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-3] ポスター:地域 3

2022年9月16日(金) 14:00 〜 15:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-3-2] ポスター:地域 3住民主体の一般介護予防事業におけるフレイル予防の取り組み

高知県仁淀川町における実践

金久 雅史1杉本 徹2桂 雅俊3有光 一樹4 (1高知リハビリテーション学院,2リハビリテーション病院すこやかな杜,3土佐リハビリテーションカレッジ,4高知リハビリテーション専門職大学)

【はじめに】
 高知県仁淀川町は,2021年10月1日時点での高齢化率が57.1%と,全国的にも高齢化先進の町である.そのような状況の中,同町では住み慣れた町で元気に過ごすために,2019年より東京大学の協力を得て,住民主体でフレイルチェック活動を展開している.筆者らは,2020年1月から住民や行政と交流を始め,その後幾度の研修会を住民らと共に行い,同年7月から試運転が開始となった一般介護予防事業における住民主体で取り組む短期集中型総合プログラム「ハツラッツ」(以下:ハツラッツ)へのOT4名のチームで参画する機会を得た.そこで,ハツラッツにおける作業療法士(以下OT)の関わりについて,参加者の体力測定結果の経過や生活機能の変化なども踏まえ,若干の考察を加えて報告する.なお,本報告は同町および該当住民に報告の趣旨を説明し同意を得ている.
【ハツラッツの取り組みとOTの支援内容】
ハツラッツでは握力や手足の筋肉量の低下,生活が不活発になっているなど,フレイルの徴候が認められる者を対象とし,運動・栄養・口腔を3本柱に掲げ,週2回半日型で3ヶ月間を1クールとして下肢筋力向上や健康維持に役立つ講話などを実践している.また,体力測定として5m歩行やTime Up and Go(以下:TUG)テスト,Chair-Standingテスト30(以下:CS-30)などを週1回の頻度で実施している.さらに,参加者の生活状況を勘案し,必要性に応じてOTが自宅訪問を行い,参加者の生活課題をアセスメントし,助言・指導を行う.カンファレンスも1クールで計3回行い,時には対象者本人が参加して住民・行政らと活発な意見交換・課題提起・具体的な対策の検討を行う.OTの主な役割としては準備・整理体操や筋力訓練における負荷量などの助言や,講話,生活機能の改善に向けた助言などである.
【参加者の経過】
 2022年2月時点で2クールが終了し,延べ12名がハツラッツを修了している.参加が定期的に行えた11名について初回・最終におけるTUGおよびCS-30の結果を示す.TUGは初回7.48±1.99秒,最終6.14±1.59秒,CS-30は16.18±5.72回,最終26.45±7.89回であった.その他,5m歩行や片脚立位バランス,握力等の向上も認めている.また,自宅周囲の溝掃除や草刈りが行えるようになった,500m先の友人宅へ独歩で尋ねることができるようになった,畑までの階段が楽に昇降できるようになった,趣味のゴルフで楽にラウンドできて準優勝した,など参加者の生活においても非常に嬉しい効果を認めている.
【考察】
 現在,コロナ禍において外出機会の減少や,日中活動時間の減少など,フレイルへ移行する引き金となるリスクが増加している状況である.その様な中,生活機能が向上することが対象者の自助をさらに高め,また,それを経験した住民が同じ地域に住む住民に声をかけて共に元気であろうとしている.住み慣れた地域でいつまでも元気に暮らしたい,生活行為の専門職であるOTはそのような住民の想い応えていかなければならない.今回,OT4名のチームで一般介護予防事業に参画し,1人では気付けなかった視点を持てたことなど得るものが多く,地域支援事業に携わることがOTとしてのスキルアップに繋がると実感できた.地域支援事業に参画できるOTのマンパワー不足など課題は山積しているが,地域包括ケアシステムの実現に向けて,地域に住む住民と共に学び,共に成長していけるよう,作業療法士の立場から今後の展開にも貢献していく必要があると考える.