第56回日本作業療法学会

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[PN-5] ポスター:地域 5

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-5-1] ポスター:地域 5地域在住高齢者の疼痛関連要因が価値ある作業への参加に与える影響

井上 貴雄1大類 淳矢1田崎 史江1今井 亮太1今岡 真和1 (1大阪河﨑リハビリテーション大学リハビリテーション学部)

【序論】
 医療技術および社会制度の発展により,地域在住する高齢者数が増えている.同時に,地域在住高齢者の健康増進の重要性が増している.作業療法では患者自身にとって価値のある作業に参加できる状態を介入目標の一つにしており,地域リハビリテーションではその重要性はさらに大きくなる.一方,増加する高齢者の第一愁訴は疼痛であり,その疼痛はADL動作などを困難にし,他者への依存を高めてしまうことなどが報告されている.
【目的】
 本研究の目的は地域在住高齢者の,その個人にとって価値ある作業への参加度と疼痛関連因子を同時に評価し,地域在住高齢者が抱える疼痛関連要因が価値ある作業への参加に与える影響について検討する事である.
【方法】
 対象は2021に実施した本学運動機能測定事業に参加した地域在住高齢者153名(男性40名,女性93名,平均年齢75.5±6.8歳)とした.調査項目は,個人にとって価値のある日々の活動(余暇活動,生産的活動,セルフケア)について作業統制や作業バランス,遂行満足度を評価する自記式作業遂行指標(Self-completed Occupational Performance Index,以下SOPI),痛みの破局的思考尺度(pain catastrophizing scale以下,PCS),中枢性感作症候群の評価である日本語版Central Sensitization Inventory(以下,CSI)痛みによる運動恐怖を評価する日本語版Tampa Scale for Kinesiophobia(以下,TSK),広汎性疼痛指数(widespread pain index:WPI),圧痛閾値(Pressure Pain threshold以下,PPT)とした.統計解析にはSPSSを用い,Spearmanの順位相関係数を求めた(有意確率p<0.05).なお本研究は,筆頭著者所属先の研究倫理委員会の承認を得て実施し,対象者には文書及び口頭による説明によって同意を得た.本発表に関して開示すべき利益相反にあたる企業等はない.
【結果】
 対象者の平均SOPIスコアは37.9±7.6,PCSは11.0±11.6,CSIは6.7±5.1,TSKは18.3±6.3,WPIは1.2±1.8,PPTは16.5±5.6であった.解析の結果,SOPI下位項目である生産的活動(r=-0.264),セルフケア(r=-0.264),作業統制(r=-0.221),作業バランス(r=-0.291),遂行満足度(r=-0.270)において,PCSと有意な負の相関関係が認められた.また,SOPIはCSIと負の相関関係が認められた(r=-0.268).さらに,相関係数は小さいがSOPIの遂行満足度はTSKと有意な負の相関が認められた(r=-0.179).WPI,PPTはSOPIと有意な相関関係を認めなかった.
【考察】
 結果より,地域在住高齢者の価値ある作業への参加と疼痛関連要因が負の相関を示すことが確認された.中でも疼痛から生じる破局的思考は地域在住高齢者の日々の生産的活動やセルフケア,またその作業統制や作業バランス,作業遂行満足度に負の影響を与えている可能性が示唆された.近年の疼痛に対する治療では痛みに対する対処療法だけでなく痛みに関連する認識を介入対象とした認知行動療法的なアプローチが実践されている.本研究より,地域在住高齢者の価値ある作業への参加を促し,さらなる健康増進を目指すためには,疼痛に対する認知行動療法的アプローチを地域在住高齢者にも積極的に行う必要があるのではないかと考えられた.