[PN-7-3] ポスター:地域 7精神障害者向け共同生活援助における作業療法士配置の影響に関する予備的検討
【緒言】
第三次作業療法5カ年計画では,障害福祉領域に参画すべく根拠に基づく作業療法士(OT)の有効性と役割を提案することが掲げられている(日本作業療法士協会,2018).共同生活援助(GH)では,OTの配置数はわずかに増加したものの,有効性と役割を十分に示すには至っていない.有効性の検討にあたっては,リカバリーが地域で生活する精神疾患をもつ人々に対する精神保健サービスの国際的な指針になっており,主観的な結果を取り入れる必要性が指摘されている(William A. Anthony et al,2003).
【目的】
本報告の目的は,精神障害者向けGHにおけるOTの配置が,対象者の主観的なリカバリー等に及ぼす影響を予備的に検討することである.
【方法】
対象は2020年4月~8月に共同生活援助事業を利用している精神障害者であった.属性として,年齢,障害支援区分,GH利用前入院歴,GH利用中入院歴,GH利用期間,評価は日本語版Recovery Assessment Scale(RAS),WHO Disability Assessment Schedule 2.0(WHODAS2.0),Life Assessment Scale for the Mentally Ill(LASMI)を用いた.対象者を各事業所におけるOT配置の有無で2群に分類し,Mann-WhitneyのU 検定を行った.統計学的有意水準は5%とした.統計ソフトはJASP16.0を用いた.本研究は,日本作業療法士協会課題研究助成(2020-1)を受け,同倫理審査および各事業所の承認,対象者には書面で同意を得て実施した.
【結果】
対象は7事業所35名,OT配置あり;A群(15名),OT配置なし;B群(20名)について群間比較した結果を示す.また各群の数値は中央値[25%タイル-75%タイル]で表記し,効果量はrとした.属性については,年齢(A群;42.00[34.00-55.50],B群;41.50[26.00-55.00],P=0.43,r=0.16), 障害支援区分(A群;3.00[2.00-3.00],B群2.00[2.00-3.00],P=0.19,r=0.25),GH利用前入院歴(日)(A群;380.00[44.00-2007.50],B群180.00[0.00-247.50],P=0.11,r=0.32),GH利用中入院歴(日)(A群;0.00[0.00-0.00],B群0.00[0.00-0.00],P=0.31,r=0.13),GH利用期間(月)(A群;25.00[11.50-98.50],B群9.00[7.80-38.80],P=0.31,r=0.13)で2群間に有意差を認めなかった.評価項目について有意差を認めた項目は,RAS合計(A群76.00 [68.50-82.00] ,B群84.50[79.75-90.25],p<0.01,r=0.48),RAS目標/成功志向・希望(A群29.00[23.00-31.50],B群33.00[26.75-36.50],p=0.02,r=0.46),RAS症状に支配されない(A群6.00[5.50-6.50],B群7.00[6.00-8.00],p<0.01,r=0.56),LASMI持続性/安定性(A群3.00[2.50-4.00],B群 2.00[1.00-2.50],p<0.01,r=0.71)であった.
【考察】
主観的なリカバリーと社会生活の安定性についてOT配置群の方がネガティブな結果であった.統計学的に有意差があるとは言えなかったものの,OT配置群は対象者の障害支援区分が高く,GH利用前の入院期間,GH利用期間がそれぞれ長い傾向が見られたことから,OT配置群はより重症度の高い対象者を受け入れていることで,主観的なリカバリーがOT未配置群に比して低かった可能性がある.余暇活動領域の作業遂行や重要活動に注目して支援を行うことでリカバリーが効果的に促進されることが指摘されており(菅沼映里ら,2014),今後,OTがそれらに着目して介入し,その効果を検証する必要がある.
第三次作業療法5カ年計画では,障害福祉領域に参画すべく根拠に基づく作業療法士(OT)の有効性と役割を提案することが掲げられている(日本作業療法士協会,2018).共同生活援助(GH)では,OTの配置数はわずかに増加したものの,有効性と役割を十分に示すには至っていない.有効性の検討にあたっては,リカバリーが地域で生活する精神疾患をもつ人々に対する精神保健サービスの国際的な指針になっており,主観的な結果を取り入れる必要性が指摘されている(William A. Anthony et al,2003).
【目的】
本報告の目的は,精神障害者向けGHにおけるOTの配置が,対象者の主観的なリカバリー等に及ぼす影響を予備的に検討することである.
【方法】
対象は2020年4月~8月に共同生活援助事業を利用している精神障害者であった.属性として,年齢,障害支援区分,GH利用前入院歴,GH利用中入院歴,GH利用期間,評価は日本語版Recovery Assessment Scale(RAS),WHO Disability Assessment Schedule 2.0(WHODAS2.0),Life Assessment Scale for the Mentally Ill(LASMI)を用いた.対象者を各事業所におけるOT配置の有無で2群に分類し,Mann-WhitneyのU 検定を行った.統計学的有意水準は5%とした.統計ソフトはJASP16.0を用いた.本研究は,日本作業療法士協会課題研究助成(2020-1)を受け,同倫理審査および各事業所の承認,対象者には書面で同意を得て実施した.
【結果】
対象は7事業所35名,OT配置あり;A群(15名),OT配置なし;B群(20名)について群間比較した結果を示す.また各群の数値は中央値[25%タイル-75%タイル]で表記し,効果量はrとした.属性については,年齢(A群;42.00[34.00-55.50],B群;41.50[26.00-55.00],P=0.43,r=0.16), 障害支援区分(A群;3.00[2.00-3.00],B群2.00[2.00-3.00],P=0.19,r=0.25),GH利用前入院歴(日)(A群;380.00[44.00-2007.50],B群180.00[0.00-247.50],P=0.11,r=0.32),GH利用中入院歴(日)(A群;0.00[0.00-0.00],B群0.00[0.00-0.00],P=0.31,r=0.13),GH利用期間(月)(A群;25.00[11.50-98.50],B群9.00[7.80-38.80],P=0.31,r=0.13)で2群間に有意差を認めなかった.評価項目について有意差を認めた項目は,RAS合計(A群76.00 [68.50-82.00] ,B群84.50[79.75-90.25],p<0.01,r=0.48),RAS目標/成功志向・希望(A群29.00[23.00-31.50],B群33.00[26.75-36.50],p=0.02,r=0.46),RAS症状に支配されない(A群6.00[5.50-6.50],B群7.00[6.00-8.00],p<0.01,r=0.56),LASMI持続性/安定性(A群3.00[2.50-4.00],B群 2.00[1.00-2.50],p<0.01,r=0.71)であった.
【考察】
主観的なリカバリーと社会生活の安定性についてOT配置群の方がネガティブな結果であった.統計学的に有意差があるとは言えなかったものの,OT配置群は対象者の障害支援区分が高く,GH利用前の入院期間,GH利用期間がそれぞれ長い傾向が見られたことから,OT配置群はより重症度の高い対象者を受け入れていることで,主観的なリカバリーがOT未配置群に比して低かった可能性がある.余暇活動領域の作業遂行や重要活動に注目して支援を行うことでリカバリーが効果的に促進されることが指摘されており(菅沼映里ら,2014),今後,OTがそれらに着目して介入し,その効果を検証する必要がある.