[PP-1-2] ポスター:基礎研究 1非利き手の書字練習における書字能力の改善と手指機能との関係性
【はじめに】
利き手に障害が生じ,機能改善が見込めない場合には,非利き手での書字動作獲得に向けて作業療法が実施される.我々はなぞり書きによる書字練習によって非利き手の書字能力が改善することを報告した(Mutai, 2021).本研究の目的は,今後の効果的な練習方法を検討するために,非利き手の書字能力の改善と手指機能との関係性を明らかにすることである.
【方法】
対象は同意が得られた健常学生38名(男性10名,女性28名,21.0±1.2歳).除外基準は上肢に筋・骨系,神経系の病気を有する人,上肢に感覚障害を有する人とした.書字練習は1日1回20分で10日間実施した.練習方法は,A4用紙の150個のマス内に薄く印刷した文章のなぞり書きを行った.評価項目は,手指機能として,非利き手の握力,ピンチ力(3指つまみ),およびオコナー手指巧緻テスト(Raw Score,点数が高いほど機能が低い)を用い,書字能力評価として,字形と書字速度の評価を行った.字形の評価は,評価者5名による5段階(1拙劣,1やや拙劣,3普通,4やや上手,5上手)で評価しその中央値を採用した. 書字速度は記載した文字数を時間で除した(文字数/分).評価時は,できるだけ速く丁寧に記載する様に指示し,A4用紙100個のマス目に日常よく使用する文字を模写してもらった.評価は練習前,5日目,および10日目に実施した.統計解析は,まず,練習前と5日,10日の書字能力評価の比較を一元配置分散分析またはFriedman検定後,多重比較を行った.次に,書字能力の練習前と5日,10日の差を改善量とし,改善量と手指機能との関係性について,Pearsonの積率相関係数またはSpearmanの順位相関係数を用いた.本研究は当該施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
字形評価の中央値は,練習前:2,5日:3,10日:3であり,書字速度の平均値は,練習前:13.9,5日:15.7,10日:17.6であり,練習前と5日,10日間で書字能力は有意に改善を認めた.字形評価の改善量(5日まで,10日まで)と手指機能との相関係数は,オコナースコア(r=0.324,P=0.048,r=0.327,P=0.045),握力(r=0.028, P=0.866,r=0.161,P=0.333),ピンチ力(r=-0.335, P=0.040,r=-0.069,P=0.680),書字速度の改善量(5日まで,10日まで)と手指機能との相関係数は,オコナースコア(r=-0.198, P=0.233,r=-0.120,P=0.472),握力(r=-0.149, P=0.371,r=-0.050,P=0.764),ピンチ力(r=0.390, P=0.016,r=0.467 P=0.003)であった.
【考察】
字形の改善については,オコナースコアが5日と10日で中等度の正の相関を認め,ピンチ力が5日で中等度の負の相関を認めた.手指の巧緻性が低くても直接的な書字練習により字形は改善すると考えられるため,手指の巧緻性を高めるペグ練習等の間接的な練習は必要がない可能性がある.ピンチ力が強い人は,練習初期の段階では無駄な力が入り字形の改善に影響を及ぼしている可能性があるので,練習初期の段階では強くに握らないような指導が必要かもしれない.ただし,これについては実際のペンを把持する圧力とピンチ力との関係性を検証する必要がある.
書字速度については,ピンチ力が5日と10日で中等度の正の相関を認めた.ピンチ力の高い人は書字速度が練習により速くなるため,ピンチ力強化を併用することで,書字速度をより高める可能性がある.ただし,字形と書字速度の練習初期の改善について,ピンチ力は相反する影響を及ぼす可能性があるので,どちらの改善を優先するかによって,ピンチ力への指導は検討する必要がある.
利き手に障害が生じ,機能改善が見込めない場合には,非利き手での書字動作獲得に向けて作業療法が実施される.我々はなぞり書きによる書字練習によって非利き手の書字能力が改善することを報告した(Mutai, 2021).本研究の目的は,今後の効果的な練習方法を検討するために,非利き手の書字能力の改善と手指機能との関係性を明らかにすることである.
【方法】
対象は同意が得られた健常学生38名(男性10名,女性28名,21.0±1.2歳).除外基準は上肢に筋・骨系,神経系の病気を有する人,上肢に感覚障害を有する人とした.書字練習は1日1回20分で10日間実施した.練習方法は,A4用紙の150個のマス内に薄く印刷した文章のなぞり書きを行った.評価項目は,手指機能として,非利き手の握力,ピンチ力(3指つまみ),およびオコナー手指巧緻テスト(Raw Score,点数が高いほど機能が低い)を用い,書字能力評価として,字形と書字速度の評価を行った.字形の評価は,評価者5名による5段階(1拙劣,1やや拙劣,3普通,4やや上手,5上手)で評価しその中央値を採用した. 書字速度は記載した文字数を時間で除した(文字数/分).評価時は,できるだけ速く丁寧に記載する様に指示し,A4用紙100個のマス目に日常よく使用する文字を模写してもらった.評価は練習前,5日目,および10日目に実施した.統計解析は,まず,練習前と5日,10日の書字能力評価の比較を一元配置分散分析またはFriedman検定後,多重比較を行った.次に,書字能力の練習前と5日,10日の差を改善量とし,改善量と手指機能との関係性について,Pearsonの積率相関係数またはSpearmanの順位相関係数を用いた.本研究は当該施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
字形評価の中央値は,練習前:2,5日:3,10日:3であり,書字速度の平均値は,練習前:13.9,5日:15.7,10日:17.6であり,練習前と5日,10日間で書字能力は有意に改善を認めた.字形評価の改善量(5日まで,10日まで)と手指機能との相関係数は,オコナースコア(r=0.324,P=0.048,r=0.327,P=0.045),握力(r=0.028, P=0.866,r=0.161,P=0.333),ピンチ力(r=-0.335, P=0.040,r=-0.069,P=0.680),書字速度の改善量(5日まで,10日まで)と手指機能との相関係数は,オコナースコア(r=-0.198, P=0.233,r=-0.120,P=0.472),握力(r=-0.149, P=0.371,r=-0.050,P=0.764),ピンチ力(r=0.390, P=0.016,r=0.467 P=0.003)であった.
【考察】
字形の改善については,オコナースコアが5日と10日で中等度の正の相関を認め,ピンチ力が5日で中等度の負の相関を認めた.手指の巧緻性が低くても直接的な書字練習により字形は改善すると考えられるため,手指の巧緻性を高めるペグ練習等の間接的な練習は必要がない可能性がある.ピンチ力が強い人は,練習初期の段階では無駄な力が入り字形の改善に影響を及ぼしている可能性があるので,練習初期の段階では強くに握らないような指導が必要かもしれない.ただし,これについては実際のペンを把持する圧力とピンチ力との関係性を検証する必要がある.
書字速度については,ピンチ力が5日と10日で中等度の正の相関を認めた.ピンチ力の高い人は書字速度が練習により速くなるため,ピンチ力強化を併用することで,書字速度をより高める可能性がある.ただし,字形と書字速度の練習初期の改善について,ピンチ力は相反する影響を及ぼす可能性があるので,どちらの改善を優先するかによって,ピンチ力への指導は検討する必要がある.