[PP-1-3] ポスター:基礎研究 1Web会議システムを利用し,遠隔でバランス検査を実施した場合の再現性と信頼性の検討
若年層の健常者を対象とした予備実験
【はじめに】日本の高齢化に伴い要介護状態のリスクに関わる評価を実施することは,介護予防の点において重要である.検査は一般に医療施設等で行われるが,遠隔地在住者や医療施設等に通うことが困難な高齢者に対しては,検査の実施が困難となる場合がある.そこで本研究では,Webテレビ会議システムを利用した遠隔で評価(遠隔評価)を実施した場合の信頼性について検討することにし,今回は予備実験として,若年層の健常者を対象に実施しすることにした.
【対象と方法】対象はA大学リハビリテーション学部学生の男性6人,女性5人の計11人とした(年齢21.45±0.68歳).遠隔評価を実用的なものにするためには,TVモニター越しからの教示で評価対象者が必要な動作を実施できること,あるいは,そばに家族など医療専門的な知識がない者が,評価を補助したとしても,教示により補助が実践できることが条件となる.本研究では,介護予防の中でも特に転倒予防に着目したこと,前述の条件を満たす評価という観点から,バランス機能の検査の中から,Timed Up and Go test(以下TUG)と連続底背屈運動テスト(以下底背屈テスト)を選定し実施することにした.検査は通常の対面形式で1回,Webテレビ会議システムを用いた遠隔で3回の計4回実施し,1回は検者を入れ替え実施した.最後に遠隔評価の感想アンケートを対面で行った.なお,Webテレビ会議システムはZoomを用いた.遠隔からの評価実施者は,4年生の臨床実習を終了した学生とした.分析は,正規性検定としてShapiro-Wilk検定を用い,正規性が認められた場合は,対面式検査と初回の遠隔検査との関連を示す再現性と初回遠隔と2回目遠隔の検者内信頼性の検討には級内相関係数を用い,検者間信頼性は,初回の遠隔検査結果と検者を変えた遠隔検査結果の間にピアソンの相関係数を用いて検討した.正規性が認められなかった場合は,対面式検査と初回の遠隔検査,その後に実施した検査との間,検者を変えた検査との間でそれぞれ,スピアマンの順位相関係数を用いて分析を行い再現性と各信頼性について検討した.いずれも有意水準は5%とした.アンケートは記述統計とした.なお,本研究は筆頭著者所属大学の研究倫理審査委員会の審査を経て実施した(2021A08).
【結果】 TUGの再現性と検者内信頼性のICC(1,1)は,0.90であり,検者間信頼性では,r=0.70,p=0.02で相関が認められた.連続底背屈テストの再現性は認められなかったが,遠隔検査での検者内信頼性はr=0.69,p=0.02,検者間信頼性はr=0.87,p=0.04であった.また,アンケートでは「遠隔検査時に音声が聞き取りにくい」とする回答が多かった.
【考察】本研究を通してZoomを用いた遠隔でのTUGの再現性及び信頼性は高く,補助者を1人充てることが可能であれば実施可能であることが示唆された.連続底背屈テストに関しては,TUGよりも評価指示の内容が複雑であることや,画面を通して底背屈数をカウントすることの難しさが影響していることが考えられた.今後は,高齢者を対象に実施し,遠隔の場合,音声の聞き取りやすさやカメラのセッティングについて検討していく必要があると考えられる.
【対象と方法】対象はA大学リハビリテーション学部学生の男性6人,女性5人の計11人とした(年齢21.45±0.68歳).遠隔評価を実用的なものにするためには,TVモニター越しからの教示で評価対象者が必要な動作を実施できること,あるいは,そばに家族など医療専門的な知識がない者が,評価を補助したとしても,教示により補助が実践できることが条件となる.本研究では,介護予防の中でも特に転倒予防に着目したこと,前述の条件を満たす評価という観点から,バランス機能の検査の中から,Timed Up and Go test(以下TUG)と連続底背屈運動テスト(以下底背屈テスト)を選定し実施することにした.検査は通常の対面形式で1回,Webテレビ会議システムを用いた遠隔で3回の計4回実施し,1回は検者を入れ替え実施した.最後に遠隔評価の感想アンケートを対面で行った.なお,Webテレビ会議システムはZoomを用いた.遠隔からの評価実施者は,4年生の臨床実習を終了した学生とした.分析は,正規性検定としてShapiro-Wilk検定を用い,正規性が認められた場合は,対面式検査と初回の遠隔検査との関連を示す再現性と初回遠隔と2回目遠隔の検者内信頼性の検討には級内相関係数を用い,検者間信頼性は,初回の遠隔検査結果と検者を変えた遠隔検査結果の間にピアソンの相関係数を用いて検討した.正規性が認められなかった場合は,対面式検査と初回の遠隔検査,その後に実施した検査との間,検者を変えた検査との間でそれぞれ,スピアマンの順位相関係数を用いて分析を行い再現性と各信頼性について検討した.いずれも有意水準は5%とした.アンケートは記述統計とした.なお,本研究は筆頭著者所属大学の研究倫理審査委員会の審査を経て実施した(2021A08).
【結果】 TUGの再現性と検者内信頼性のICC(1,1)は,0.90であり,検者間信頼性では,r=0.70,p=0.02で相関が認められた.連続底背屈テストの再現性は認められなかったが,遠隔検査での検者内信頼性はr=0.69,p=0.02,検者間信頼性はr=0.87,p=0.04であった.また,アンケートでは「遠隔検査時に音声が聞き取りにくい」とする回答が多かった.
【考察】本研究を通してZoomを用いた遠隔でのTUGの再現性及び信頼性は高く,補助者を1人充てることが可能であれば実施可能であることが示唆された.連続底背屈テストに関しては,TUGよりも評価指示の内容が複雑であることや,画面を通して底背屈数をカウントすることの難しさが影響していることが考えられた.今後は,高齢者を対象に実施し,遠隔の場合,音声の聞き取りやすさやカメラのセッティングについて検討していく必要があると考えられる.