[PP-2-1] ポスター:基礎研究 2ミラーセラピー実施時の運動条件が皮質脊髄路興奮性に与える影響
序論:
ミラーセラピー(Mirror Therapy:以下MT)とは鏡に映った非麻痺側上肢の動きを観察し,麻痺側上肢の錯覚を生じさせるものであり,脳卒中後のリハビリテーションに用いられている.Cochraneによるメタアナリシスでは,脳卒中後の運動機能障害に対するリハビリテーションの補助手段としてMTの有用性が示された一方で,その適応や頻度,期間は十分に明らかになっていない.我々は健常者を対象とした研究でMT実施時の皮質脊髄路の興奮性と運動イメージ能力との間に関連があることを報告した.
目的:
MTを実施する際の適切な運動条件を検討するために,MTを実施する際の運動条件が皮質脊髄路の興奮性に与える影響を明らかにすること.
方法:
研究内容を説明し,紙面にて同意を得た健常成人16名(男性4名,女性12名,平均年齢:21.6歳)を対象とした.神経学的,整形外科的疾患の既往があるものは除外した.皮質脊髄路興奮性は,経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(Motor evoked potential:以下MEP)にて評価した.MEPは安静条件,運動条件①(ミラーボックス内で左示指外転運動),運動条件②(ミラーボックス内で左全指屈曲運動)の3条件で計測した.安静条件は0.2Hzの頻度で,運動条件では各運動をトリガーとした磁気刺激を左一次運動野の手指領域に与え,どの条件でもMEPは右第一背側骨間筋にて記録した.いずれの条件も刺激回数は17発とし,MEP振幅値は記録されたMEP波形のうち最大および最少を除いた15波形を加算平均し,peak to peakで算出した.統計解析では安静時条件,運動条件①,運動条件②の3条件間の比較のため反復測定の分散分析を行い,有意差が確認された場合に事後検定にBonferroni法を使用した.これらの統計処理にはEZR(64-bit)を使用し,有意水準は5%とした.尚,本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,かつ所属施設の臨床研究に関する倫理審査会の承認を得て行った(承認番号4283).
結果:
計測されたMEP振幅値は安静時条件が0.32±0.36mV,運動条件①0.79±0.69mV,運動条件②が0.50±0.35mVであった.反復測定の分散分析にて3条件のMEP振幅値を比較すると有意差が認められた(p<0.05).事後検定を実施し,安静時条件と運動条件①,運動条件①と運動条件②では有意差が認められた(p<0.05)が,安静時条件と運動条件②では有意差がなかった.
考察:
本研究の結果,運動条件①と②の違いは実施した運動の種類のみが異なっていたが,運動条件①で有意にMEP振幅値が高くなったことから,MT時に実施する運動条件の違いが皮質脊髄路の興奮性に影響する可能性が明らかとなった.本研究では,第一背側骨間筋を導出筋としてMEPを計測しており,実施した運動と計測した導出筋の一致が本研究の結果に関連していると考えられる.今回の研究からMTの効果にはMT実施時の運動の種類が影響する可能性があり, 臨床場面でMTを実施する際には患側の改善させたい機能に合わせた運動を健側で実施するとより効果的である可能性が示唆された.
ミラーセラピー(Mirror Therapy:以下MT)とは鏡に映った非麻痺側上肢の動きを観察し,麻痺側上肢の錯覚を生じさせるものであり,脳卒中後のリハビリテーションに用いられている.Cochraneによるメタアナリシスでは,脳卒中後の運動機能障害に対するリハビリテーションの補助手段としてMTの有用性が示された一方で,その適応や頻度,期間は十分に明らかになっていない.我々は健常者を対象とした研究でMT実施時の皮質脊髄路の興奮性と運動イメージ能力との間に関連があることを報告した.
目的:
MTを実施する際の適切な運動条件を検討するために,MTを実施する際の運動条件が皮質脊髄路の興奮性に与える影響を明らかにすること.
方法:
研究内容を説明し,紙面にて同意を得た健常成人16名(男性4名,女性12名,平均年齢:21.6歳)を対象とした.神経学的,整形外科的疾患の既往があるものは除外した.皮質脊髄路興奮性は,経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(Motor evoked potential:以下MEP)にて評価した.MEPは安静条件,運動条件①(ミラーボックス内で左示指外転運動),運動条件②(ミラーボックス内で左全指屈曲運動)の3条件で計測した.安静条件は0.2Hzの頻度で,運動条件では各運動をトリガーとした磁気刺激を左一次運動野の手指領域に与え,どの条件でもMEPは右第一背側骨間筋にて記録した.いずれの条件も刺激回数は17発とし,MEP振幅値は記録されたMEP波形のうち最大および最少を除いた15波形を加算平均し,peak to peakで算出した.統計解析では安静時条件,運動条件①,運動条件②の3条件間の比較のため反復測定の分散分析を行い,有意差が確認された場合に事後検定にBonferroni法を使用した.これらの統計処理にはEZR(64-bit)を使用し,有意水準は5%とした.尚,本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,かつ所属施設の臨床研究に関する倫理審査会の承認を得て行った(承認番号4283).
結果:
計測されたMEP振幅値は安静時条件が0.32±0.36mV,運動条件①0.79±0.69mV,運動条件②が0.50±0.35mVであった.反復測定の分散分析にて3条件のMEP振幅値を比較すると有意差が認められた(p<0.05).事後検定を実施し,安静時条件と運動条件①,運動条件①と運動条件②では有意差が認められた(p<0.05)が,安静時条件と運動条件②では有意差がなかった.
考察:
本研究の結果,運動条件①と②の違いは実施した運動の種類のみが異なっていたが,運動条件①で有意にMEP振幅値が高くなったことから,MT時に実施する運動条件の違いが皮質脊髄路の興奮性に影響する可能性が明らかとなった.本研究では,第一背側骨間筋を導出筋としてMEPを計測しており,実施した運動と計測した導出筋の一致が本研究の結果に関連していると考えられる.今回の研究からMTの効果にはMT実施時の運動の種類が影響する可能性があり, 臨床場面でMTを実施する際には患側の改善させたい機能に合わせた運動を健側で実施するとより効果的である可能性が示唆された.