第56回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-2] ポスター:基礎研究 2/内科疾患 1

Fri. Sep 16, 2022 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PP-2-4] ポスター:基礎研究 2最大握力を発揮できる適切な握り幅の再検討

知名 規人1若菜 翔哉2小林 量作2 (1新潟リハビリテーション大学医療学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻,2新潟リハビリテーション大学医療学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻)

【はじめに】握力は病気の発生,要介護率,死亡率などと関連することが疫学研究で明確である(Carlos,2018).その測定方法は,立位にて肘関節伸展位・手関節軽度背屈位で適切な握り幅の条件で正確に測定できると考えられているが,握り幅については一致した見解となっていない.そのため,最大握力を発揮できる握り幅について明確にすることは,正確な握力測定に貢献できる意義がある.
【目的】本研究の目的は,最大握力を発揮できる握り幅を探索し,再検討することである.
【方法】研究対象は大学生の健常者40名(男性;20名,女性;20名)である.包含基準は,握力測定に影響するような運動器疾患・障害を有していない者とした.個人属性は自記式アンケートにてスポーツ活動の有無,利き手を調査し,体格は身長,体重,BMI,体組成を計測した.上肢の形態的計測は上肢長,前腕長,手部の形態を測定した.手部形態は①掌側手首皮線(橈骨茎状突起-尺骨茎状突起の中央点)から中指尖端までの距離(以下,手首-中指尖端),②母指中手指節関節から示指尖端までの距離(以下,母指MP-示指尖端)とした.握力測定は握り幅を45mm-70mmまでを5mm刻みで6段階及び被検者が主観的に選択した握り幅の計7種類で実施した.これら7つの握り幅をランダムな順番で左右交互に測定した.分析方法は男性,女性の2群間比較について対応のないt検定を実施した.また,測定回数毎の握力,握り幅毎の握力は反復測定分散分析を実施し,事後検定は多重比較を用いた.統計解析にはSPSSver28を使用し,有意水準を5%とした.
なお,本研究は新潟リハビリテーション大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:195).対象者へは書面と口頭にて説明し,紙面による同意を得た.
【結果】(1)被験者の情報は,年齢;男性平均21.8(標準偏差1.7)歳, 女性21.1(1.2)歳(以下,同順),身長;171.4(5.7)cm,160.0(5.1)cm,体重;68.0(12.4)Kg,52.9(6.9)Kg,BMI;23.1(3.7),20.7(2.4),握力;右40.3(8.3)Kg,27.8(3.2)Kg,左38.3(6.2)Kg,26.1(2.9)Kgであった.年齢を除き,いずれの項目も男女差は有意であった.
(2)各握り幅による最大握力平均値(右)は,4.5cm;男性35.9(7.5)kg,女性24.7(3.3)kg,5.0cm;36.2(7.9)kg,26.4(3.4)kg,5.5cm;38.1(9.0)kg,26.8(3.4)kg,6.0cm;39.6(7.4)kg,27.4(3.4)kg,6.5cm;38.4(8.1)kg,26.2(3.7)kg,7.0cm;38.6(7.9)kg,25.9(3.4)kg,主観的握り幅[男性6.0(0.4)cm,女性5.7(0.4)cm];40.3(8.3)kg,27.8(3.2)kgであった.
(3)最大握力を発揮した握り幅と手部形態の関係について,手首-中指尖端及び母指MP-示指尖端の距離を各100%にした場合,手首-中指尖端では男性33%,女性34%,母指MP-示指尖端では同順に47%,49%の握り幅であった.
【考察】結果より,最大握力を発揮する握り幅は男女ともに6.0cm及び主観的握り幅であった.このことはFuransonら(1991)の報告と同様である.また,握り幅の差が握力の差を示したことについて,サルコメアの至適筋節長が関係している(寺田,2017).筋節中にある太いフィラメントと細いフィラメントの重なる部分が一番長くなる位置において最大収縮力を発揮できることから,最大握力を発揮する最適な握り幅を選択することは重要であると考える.その指標としては,手首-中指尖端の34%,母指MP-示指尖端の48%であり,和才ら(1980),江口ら(1999)の報告とほぼ同様である.したがって,手首-中指尖端の距離×約1/3,母指MP-示指尖端の距離×約1/2を計測するか,主観的握り幅で握力測定すれば,最大握力を発揮できることが示唆された.