[PP-4-3] ポスター:基礎研究 4利き手・非利き手におけるつまみ力調整能力と長さ知覚を用いた手指固有感覚との関連
【緒言】我々は日常生活において,多種多様な対象を把持・操作しており,適切で円滑な把持・操作には経時的な力の調整能力が不可欠である.力の調整には感覚情報からの様々なフィードバックが重要であり,対象物の属性等を把握する体性感覚や,対象操作に関わる関節位置覚・運動覚の固有感覚の情報が必要である.筆者らは第53回日本作業療法学会において,擬似的に触覚をコントロールすることにより力の調整精度が低下することを示した.今回,対象物操作時は手指関節の巧みな運動により円滑な操作を実現していることから,手指の関節固有感覚情報の力の調整精度に対する影響に注目した.測定機器を用いた力の調整要素の評価と,手指関節固有感覚に含まれる長さ知覚を測定し,力の調整精度に影響を与える要因について検討した.
【方法】対象は上肢に神経筋疾患,整形外科疾患の既往のない右利き健常成人男女8名(平均年齢23.9±1.6歳).本研究に対する説明を十分に行い同意が得られたものとした.なお本研究は筆者所属の倫理委員会の承認を得ている.
本研究ではつまみ力調整課題の計測機器は,円柱状ピンチ力測定器(S-19109,竹井機器工業;特注品)を用いた.測定器で検出される手指圧変動は,ストレインアンプ(TSA-210,竹井機器工業)を介してコンピュータに記録した.被験者は円柱ピンチ力測定器を母指と示指でつまみ,加圧することで生成される波形と標的を一致させるよう教示した.標的は最大つまみ力の5〜25%の範囲で上下する正弦波(0.1Hz)とし,手指圧変動を視覚的に確認できるようコンピュータモニターに表示した.測定は利き手・非利き手各3回実施した.調整精度は生成波形と標的の誤差を算出し3周期の平均を誤差総和とし,誤差の標準偏差(SD)をばらつきをとして算出した.
長さ知覚は,3段にロッド(φ6)をセットできるアクリルホルダーを使用し最下段に70mmの参照用ロッド,中・上段にテストロッドを固定した.テストロッドのうち1本は70mm,もう1本が+0.8,0.9,1,2,3,4mm長いものとし,中・上段のいずれかに固定した.被験者はアイマスクし,参照用ロッドと長さが異なるロッドがどちらか回答した.測定は利き手・非利き手各30(6×5)回実施した.長さ知覚の判定は75%以上正答した最短ロッドを識別可能長さとした.
【結果】長さ知覚の結果を,①利き手が良い,②利き手と非利き手で同じ,③非利き手が良いの3群で力の調整精度の誤差総和とばらつきを比較検討した.①では誤差総和(Rt/Lt):124.3/166.8,SD(Rt/Lt):0.15/0.33,②は誤差総和(Rt/Lt):137.9/155.2,SD(Rt/Lt):0.41/0.59,③は誤差総和(Rt/Lt):53.2/66.1,SD(Rt/Lt):0.04/0.05であった.いずれの群においても誤差総和とばらつきは利き手の方が小さいが,左右の結果の差の大きさに長さ知覚の成績が関与する傾向が確認された.
【考察】手指巧緻性の要素の一つである力の調整能力と長さ知覚に関連がある可能性が示された.しかし,本結果から利き手の誤差総和が非利き手よりも少ないことや,固有感覚は運動経験の影響を受けること,また近年非利き手の方が感覚や調整能力に長けているなどの報告もあり,今後巧緻性の直接的な評価として力の調整能力を検討する上で,利き手・非利き手の特質や体性・固有感覚,生活上の使用経験なども含め幅広く検討する必要があると考える.
本研究はJSPS科研費JP19K19798の助成を受けたものである.
【方法】対象は上肢に神経筋疾患,整形外科疾患の既往のない右利き健常成人男女8名(平均年齢23.9±1.6歳).本研究に対する説明を十分に行い同意が得られたものとした.なお本研究は筆者所属の倫理委員会の承認を得ている.
本研究ではつまみ力調整課題の計測機器は,円柱状ピンチ力測定器(S-19109,竹井機器工業;特注品)を用いた.測定器で検出される手指圧変動は,ストレインアンプ(TSA-210,竹井機器工業)を介してコンピュータに記録した.被験者は円柱ピンチ力測定器を母指と示指でつまみ,加圧することで生成される波形と標的を一致させるよう教示した.標的は最大つまみ力の5〜25%の範囲で上下する正弦波(0.1Hz)とし,手指圧変動を視覚的に確認できるようコンピュータモニターに表示した.測定は利き手・非利き手各3回実施した.調整精度は生成波形と標的の誤差を算出し3周期の平均を誤差総和とし,誤差の標準偏差(SD)をばらつきをとして算出した.
長さ知覚は,3段にロッド(φ6)をセットできるアクリルホルダーを使用し最下段に70mmの参照用ロッド,中・上段にテストロッドを固定した.テストロッドのうち1本は70mm,もう1本が+0.8,0.9,1,2,3,4mm長いものとし,中・上段のいずれかに固定した.被験者はアイマスクし,参照用ロッドと長さが異なるロッドがどちらか回答した.測定は利き手・非利き手各30(6×5)回実施した.長さ知覚の判定は75%以上正答した最短ロッドを識別可能長さとした.
【結果】長さ知覚の結果を,①利き手が良い,②利き手と非利き手で同じ,③非利き手が良いの3群で力の調整精度の誤差総和とばらつきを比較検討した.①では誤差総和(Rt/Lt):124.3/166.8,SD(Rt/Lt):0.15/0.33,②は誤差総和(Rt/Lt):137.9/155.2,SD(Rt/Lt):0.41/0.59,③は誤差総和(Rt/Lt):53.2/66.1,SD(Rt/Lt):0.04/0.05であった.いずれの群においても誤差総和とばらつきは利き手の方が小さいが,左右の結果の差の大きさに長さ知覚の成績が関与する傾向が確認された.
【考察】手指巧緻性の要素の一つである力の調整能力と長さ知覚に関連がある可能性が示された.しかし,本結果から利き手の誤差総和が非利き手よりも少ないことや,固有感覚は運動経験の影響を受けること,また近年非利き手の方が感覚や調整能力に長けているなどの報告もあり,今後巧緻性の直接的な評価として力の調整能力を検討する上で,利き手・非利き手の特質や体性・固有感覚,生活上の使用経験なども含め幅広く検討する必要があると考える.
本研究はJSPS科研費JP19K19798の助成を受けたものである.