[PQ-2-4] ポスター:管理運営 2作業療法士と介護福祉士を中心とした腰痛予防対策チームの取り組み
チェックリストを用いたラウンドとアンケート調査を通して
【はじめに】厚生労働省は,平成25年に職場における腰痛予防対策指針を改定し,令和3年に業務による腰痛災害発生の3割以上を占める保健衛生業に向けた腰痛予防特設サイトを開設するなど腰痛予防への取り組みを推進している.当院では,これまでに腰痛に関する職員の実態調査,腰痛予防ポスターの掲示,全職員を対象とした福祉用具の研修等を実施してきた.今回,腰痛予防対策の新たな取り組みとして,病棟業務で発生する腰痛リスクアセスメントの実施等を目的に,当院衛生委員会の中に各病棟(回復期3病棟,一般2病棟,地域包括ケア1病棟)からリハビリテーション部(作業療法士もしくは理学療法士)1名,看護部(介護福祉士)1名の2名体制とした計12名の腰痛予防対策チームを立ち上げ,発足2年目に当院全6病棟の看護・介護職員に対して巡回による腰痛リスク評価(以下ラ
ウンド)を行う機会を設けた.以下その取り組みについて考察を加えて報告する.尚,本報告は当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】腰痛予防対策チームメンバーに対して,ケア・介助時の身体の使い方,福祉用具の使用方法,チェックリストを用いたラウンドについて指導研修を行った.研修後,各病棟にてラウンドを実施し,挙がった問題点に対する対策を1か月間施行した後に再ラウンドを行った.その後,当院の看護・介護職員(計206名)を対象に腰痛に関するアンケート調査を行った.
【結果】ラウンド結果では,各病棟で異なった問題点が挙がり,それぞれの病棟に応じた対策(ケア方法の実技指導,福祉用具の動画研修,前かがみ注意ポスターの掲示,ストレッチ方法の提示,腰痛予防ベルトの冊子作成等)を必要とした.また,チェックリスト18項目のうち,再ラウンド時に改善した項目は回復期A病棟8項目,B病棟7項目,C病棟8項目,一般a病棟3項目,b病棟5項目,地域包括ケア病棟11項目であった.アンケート結果では,回収率が91.2%であった.腰痛に関心がある職員は87.2%を占め.各病棟で行った対策の認知度は91.0%であった.腰痛予防対策が役に立ったと感じた職員が70.7%であった一方,腰痛予防対策の具体的な実行については「あまりできなかった」
が54.3%であった.腰痛予防対策実施前後の腰痛における痛みの強さ(NRS対策前4.11±2.70対策
後3.70±2.53)と頻度(NRS対策前3.93±2.78対策後3.53±2.60)はともに有意差(p<0.01)を認めた.今後も腰痛予防における取り組みが必要だと感じた職員は89.9%を占めた.
【考察】ラウンド結果より各病棟で異なった問題点が抽出された点から,ポスター掲示や研修など病院全体で行う腰痛予防対策とは別に各病棟単位のラウンドを行うことは重要であったと考える.また,介助時の身体の使い方や福祉用具の特徴を専門的に把握している作業療法士と普段病棟にてケアを行う介護福祉士を中心に腰痛予防対策チームを構成しラウンドを実施することで,抽出された問題点に対して実行可能な対策を挙げることができた.しかし,対策後の改善に病棟間で差を認めた点から,ラウンドの精度と対策における効果のばらつきが課題であったと考える.アンケート結果より今回の活動で一定の職員の腰痛改善を図ることができたと考える.しかし,腰痛予防対策を認知し役立ったと感じる職員が多かった一方,対策があまり実行できなかった職員が半数を占めた.この点から,多くの職員が日常的に腰痛予防対策に取り組める風土作りが必要であったと考える.今後の活動として,腰痛予防対策チームメンバーの教育を促進し,ラウンドの精度向上に努め,効果的な対策が実施できるようにチームマネジメントの推進を図っていきたいと考える.
ウンド)を行う機会を設けた.以下その取り組みについて考察を加えて報告する.尚,本報告は当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】腰痛予防対策チームメンバーに対して,ケア・介助時の身体の使い方,福祉用具の使用方法,チェックリストを用いたラウンドについて指導研修を行った.研修後,各病棟にてラウンドを実施し,挙がった問題点に対する対策を1か月間施行した後に再ラウンドを行った.その後,当院の看護・介護職員(計206名)を対象に腰痛に関するアンケート調査を行った.
【結果】ラウンド結果では,各病棟で異なった問題点が挙がり,それぞれの病棟に応じた対策(ケア方法の実技指導,福祉用具の動画研修,前かがみ注意ポスターの掲示,ストレッチ方法の提示,腰痛予防ベルトの冊子作成等)を必要とした.また,チェックリスト18項目のうち,再ラウンド時に改善した項目は回復期A病棟8項目,B病棟7項目,C病棟8項目,一般a病棟3項目,b病棟5項目,地域包括ケア病棟11項目であった.アンケート結果では,回収率が91.2%であった.腰痛に関心がある職員は87.2%を占め.各病棟で行った対策の認知度は91.0%であった.腰痛予防対策が役に立ったと感じた職員が70.7%であった一方,腰痛予防対策の具体的な実行については「あまりできなかった」
が54.3%であった.腰痛予防対策実施前後の腰痛における痛みの強さ(NRS対策前4.11±2.70対策
後3.70±2.53)と頻度(NRS対策前3.93±2.78対策後3.53±2.60)はともに有意差(p<0.01)を認めた.今後も腰痛予防における取り組みが必要だと感じた職員は89.9%を占めた.
【考察】ラウンド結果より各病棟で異なった問題点が抽出された点から,ポスター掲示や研修など病院全体で行う腰痛予防対策とは別に各病棟単位のラウンドを行うことは重要であったと考える.また,介助時の身体の使い方や福祉用具の特徴を専門的に把握している作業療法士と普段病棟にてケアを行う介護福祉士を中心に腰痛予防対策チームを構成しラウンドを実施することで,抽出された問題点に対して実行可能な対策を挙げることができた.しかし,対策後の改善に病棟間で差を認めた点から,ラウンドの精度と対策における効果のばらつきが課題であったと考える.アンケート結果より今回の活動で一定の職員の腰痛改善を図ることができたと考える.しかし,腰痛予防対策を認知し役立ったと感じる職員が多かった一方,対策があまり実行できなかった職員が半数を占めた.この点から,多くの職員が日常的に腰痛予防対策に取り組める風土作りが必要であったと考える.今後の活動として,腰痛予防対策チームメンバーの教育を促進し,ラウンドの精度向上に努め,効果的な対策が実施できるようにチームマネジメントの推進を図っていきたいと考える.