第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-1] ポスター:教育 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-1-2] ポスター:教育 1作業療法士のための新しいEvidence-Based Practice(EBP)自己評価尺度の開発と信頼性・妥当性の検討

増田 雄亮1八重田 淳2會田 玉美3 (1湘南医療大学保健医療学部リハビリテーション学科,2筑波大学大学院人間総合科学学術院,3目白大学大学院リハビリテーション学研究科)

【序論】
 作業療法士のEvidence-Based Practice(EBP)に対する知識と技術を測定するために,欧米を中心に尺度開発が行われてきた(Salbach NM et al, 2011; Clyde JH et al, 2016).しかし,日本を含むアジア圏においては,これらの報告はほとんど見当たらない.
【目的】
 本研究の目的は,日本の作業療法士を対象としたE新しいBP自己評価尺度を開発し,その信頼性と妥当性を検討することである.本研究により,作業療法士の卒後教育の発展やキャリア開発へと繋がる展開が期待できる.
【方法】
 まず,先行研究より作業療法士のEBP促進要因を調査し,研究者3名が協議の上で,質問項目を執筆した.予備調査を実施後,最終的に28の質問項目に対して,7段階尺度(1. 全くそう思わない~7. とてもそう思う)で回答を求める質問紙を完成させた.続いて,日本の回復期リハビリテーション病棟に勤務する1216名の作業療法士を対象として,郵送法による質問紙調査を実施した.
 尺度の妥当性は,第1に,項目分析により除外項目を検討後,探索的因子分析と確認的因子分析を実施した.モデルの適合度指標は,Comparative Fit Index(CFI),Tucker-Levis Index(TLI),Root Mean Square Error of Approximation(RMSEA)を使用した.第2に,収束的妥当性と弁別的妥当性を検討した.収束的妥当性は,平均分散抽出(AVE)値から判断し,弁別的妥当性は,因子間相関の2乗値とAVE値の関係から判断した.尺度の信頼性は,各下位尺度と尺度全体について,α係数とω係数により内的整合性を確認した.
 統計解析は,IBM SPSS Statistics 26.0J,Amos Graphics 26.0J,JASP0.16を使用し,有意水準は5%未満とした. なお,本研究は,T大学研究倫理委員会の承認を得ている(第東2019-76号).
【結果】
 531名(回収率43.7%)から回答が得られ,このうち無回答票と質問項目に欠損値があった14名を分析から除外し,515名を有効回答とした.
 尺度の妥当性は,まず,項目分析の結果,2項目を除外し,残った26項目について,探索的因子分析を実施した.因子負荷量0.55を基準とし,因子分析を3回繰り返して行った.結果,第Ⅰ因子「EBPを後押しする職場環境(5項目)」,第Ⅱ因子「EBPに対する内発的動機(3項目)」,第Ⅲ因子「EBPに対する自己効力感(3項目)」,第Ⅳ因子「EBPに対する結果予期(3項目)」の4因子14項目から成るEBP自己評価尺度が生成された.次に,確認的因子分析の結果,4因子モデルが再現された.モデル適合度は,CFI=.97,TLI=.97,RMSEA=.05であり,良好な値を示した.さらに,収束的妥当性の検討では,第Ⅰ因子~第Ⅳ因子のAVEはそれぞれ.46, .80, .62, .67であった.弁別的妥当性の検討では,第Ⅰ~第Ⅳ因子はAVE>因子間相関の2乗値であった.
 尺度の信頼性は,第Ⅰ因子α=.80, ω=.80,第Ⅱ因子α=.89, ω=.90,第Ⅲ因子α=.81, ω=.82,第Ⅳ因子α=.81, ω=.82,尺度全体ではα=.82, ω=.72であった.
【考察】
 新たに開発した作業療法士のためのEBP自己評価尺度は良好な尺度特性を有しているものと解釈できる.ただし,再テスト信頼性や併存的妥当性は未検討であるため,今後の検討が必要である.