第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-4] ポスター:教育 4

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-4-3] ポスター:教育 4職場内での科学的研修システム導入の試み

インストラクショナルデザインに基づく実践例

阿諏訪 公子1徳永 千尋2関 一彦13川田 佳央14 (1医療法人社団メドビュー 東京ちどり病院,2日本医療科学大学保健医療学部,3帝京平成大学健康医療スポーツ学部,4東京都立大学大学院健康福祉学部 後期博士課程)

【目的】我々が提供する作業療法の質は,提供者間で差が生じないよう努める責務がある.組織内研修システム(以下システム)は,職務遂行能力の向上に不可欠なシステムであり,職員の自己効力感の強化や,組織の発展・収益の向上につながるとされている.今回当院にてインストラクショナルデザインに倣い,「作業療法士教育ガイドライン2019」で示された作業療法教育の情意領域に関してシステムを構築し,職務遂行能力向上を目的に実践した.実施後の実態を検証し,知見を得たため報告する.【方法】対象者:①メンバー(以下本人)当院作業療法士A群(男性5名女性1名)・同B群(男女各3名)いずれも経験年数1年目~5年目,②評価者2名(各群に1名いずれも女性,経験年数10年以上).システム:ARCSモデルに倣い内容を示す.Attention;注意喚起:経済産業省が提唱する「社会人基礎力」及びハラスメント関連を評価者が講義.Relevance;関連:講義を踏まえ行動指標として「社会人基礎力自己チェックシート」(以下評価表)を作成.本人・評価者各々が,行動指標をルーブリック評価(7段階,以下評価項目)で評価(以下上期).Confidence;自信:第三者を交えて内容を検証後,評価者が本人へ利点と課題を口頭で教示.業務中に課題解決に向けて取り組めるよう助言.上期より4か月後に再評価(以下,下期).Satisfaction;満足感:下期にシステム導入に関し,無記名自記式質問紙法にて調査する.検証はa.調査結果の実態b.本人評価と評価者評価の関連をSpearmanの順位相関係数で算出し検討した(統計ソフトEZR ver.1.41).なお,本報告に際し,筆頭演者の所属機関の倫理委員会の承認及び対象者の同意を得ている.開示すべきCOI関係にある企業等はない.【結果】a.①評価表の内容理解:よく分かった4名,何となんとなく分かった8名②評価項目の内容理解:何となく分かった6名(表現が抽象的・分類が細かく判断に迷うなど)が最多であった.③再評価時の認識:改善5名(内容が具体的で取り組みやすかったなど),変化なし5名(自己で変化を認識しづらい・同評価項目内では向上するも次の基準には達していないなど)であった.④評価表の導入:とてもよかった5名(定期的に自己の振り返りができるなど),まあまあよかった6名(自己を客観視しやすい)などであった.b.上期(r);A群3名(0.30,0.35,0.67)B群6名(0.31,0.60,0.62,0.67,0.74,0.80)下期(r);A群5名(0.29,0.42,0.48,0.53,0.58)B群3名(0.31,0.37,0.46)で弱い相関が大勢であった(P<0.05).なお,各期の中央値は(上期-下期の順)A群:本人(4,4,3,5,3,3-3,4,5,4,3,4)評価者(3,3,2,3,3,3-4,3,3,4,3,3)B群:本人(5,4,4,4,4,4-5,5,4,5,5,4)評価者(4,4,4,4,4,4-4,3,3,2,3,3)であった.以上より,本システム導入は肯定的意見が多数であった.本人評価は,本人の能力・態度の認識を示し,評価者の評価視点・対応姿勢の違いが類似度に影響を及ぼしたと解釈する.【考察】Salasら(2001)によれば,効果的な研修戦略は,望ましい行動・認知・態度を示し,学習される知識・能力・態度を実践する機会を与え,学習方法や実践方法に関する助言を与えることとされている.今回,対象者の大半が取り組むべき課題を認識しているため,自己効力感を高め,業務遂行能力の改善への土壌はできたと推察する.一方,類似度は,評価者間で実践方法に関する助言の質や上期での対象者の知識などの差が,下期の対象者の変化に影響を与えたことを示しており,業務遂行上の変化は不明確である.よって,評価者間の対応姿勢の統一のための指針を明示し,評価項目をより具体化するなどシステム強化を図る必要がある.