[PR-5-3] ポスター:教育 5作業に焦点を当てた作業療法実践自己効力感尺度の開発
信頼性・妥当性の検証
【はじめに】日本作業療法士協会は作業療法(以下,OT)の定義を「人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点をあてた治療,指導,援助である」とした(2018).筆者らは,作業に焦点を当てた作業療法実践(以下,OFP)はどのような行動ができることか概念化した結果に基づき開発した「OFP自己効力感尺度(以下,SES-OFP)」の内容妥当性について報告した(青山ら,2021).本研究の目的は, SES-OFP暫定尺度から尺度項目を選定し信頼性・妥当性を検討することである.本研究は,筆頭筆者所属機関研究倫理委員会の承認を得た(承認番号:2102).【調査方法】対象は,国内で臨床業務に携わっている作業療法士,国内作業療法士養成校に在籍し総合臨床実習でOTの一連のプロセスを1事例以上経験した学生とした.調査はe-mailやSociak Network Serviceを利用した.対象者に研究の説明文を送付し協力を求め,回答者には周囲への情報提供も依頼した.回答はGoogle Formを利用し,完全無記名とし倫理的配慮を明記した.対象者には基本属性に関する内容と暫定尺度への回答(とてもうまくできる:10点,全くうまくできない:1点)を求めた.【分析方法】暫定尺度項目全てに回答が得られたものを有効回答とし,①データの天井効果と床効果,②Item-Total(以下,I-T)相関分析,③暫定尺度の因子構造について探索的因子分析を実施し,抽出された因子数で因子分析を実施した(promax回転,主因子法).④因子分析により選定された尺度項目の構成概念妥当性を共分散構造分析にて検討した.⑤尺度の信頼性は,内的整合性はCronbachʼs α で検証した.統計解析はSPSS Statistics 27と Amos Graphics ver.27を使用した.【結果】①調査期間は令和3年2月〜令和3年4月で,有効回答数は246名(OTR有資格者225名,学生21名)だった.②天井効果,床効果は認められなかった. ③I-T相関:全項目が合計得点と有意な相関関係を示した(r=.676~.915).④探索的因子分析にて3因子構造が想定され,削除項目がなくなるまで4回の因子分析を繰り返した結果「作業療法の成果を示す」10項目,「理論に基づいて評価する」11項目,「意味のある作業を支援する」10項目,計31項目が採用された.⑤構成概念妥当性:比較適合度指標(以下,CFI)=.911,残差平方平均平方根(以下,RMSEA)=.096であった.⑥内的整合性:尺度全体のCronbachʼs α=.988,各因子はα=.981〜.970であった. 【考察】尺度開発のサンプル数は,尺度項目数の7倍がVery Good,5倍がadequateとされている(COSMIN,2019).今回の暫定尺度項目数は45項目で,5倍以上のサンプル数が確保できた.構成概念妥当性は,CFI>.95,RMSEA<.06で十分なモデル適合度とされているが(COSMIN,2018), CFIが.90以上であればモデルがデータに適合していると判断され,RMSEAは.05以下であれば良好で.10以上で良くない適合と解釈される(山本ら,2002).本研究では,CFI=.911,RMSEA=.96であり,本尺度は一定の水準をクリアできたと考えた.信頼性について,尺度作成では,α係数が.70以上で内部一貫性は高く(小塩ら,2018),尺度の構成要素は少なくとも3つ以上あることが望ましいとされている(Fayersら,2007).本尺度は3因子で構成され,α係数も.70を上回っており,内的整合性は確保できたと考えた.本尺度は,OFPに対する自己効力感の測定だけでなく,職業的アイデンティティが十分に構築されていない学生や若年OTR,自身の職業的アイデンティティやOT実践に対する危機を感じているOTRに対し,OFPの具体的行動を示しながら臨床教育に活用できると考えた.