[PR-5-5] ポスター:教育 5生活行為向上マネジメントを活用した評価実習における学生の理解度・習熟度について
【はじめに】
2020年からの指定規則改定に伴い,日本作業療法士協会主催の臨床実習指導者講習会においても,臨床実習での生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)の活用を推奨している.本学科の評価実習は,1期(4週間)の実習を,身体・老年期障害,精神障害,発達障害の3領域から3期間経験するよう設定している.今回,令和3年度の身体・老年期障害領域の評価実習において,A4用紙2枚の症例報告書作成を課題とした実習と,MTDLPシートを用いた実習を経験した学生に対し,実習課題の違いによる理解度・習熟度の比較について調査を行い,MTDLPを用いた実習の有効性と課題について検討したので報告する.なお,学生へは本研究の目的を口頭で説明し,アンケートの回答をもって同意が得られたとした.
【対象および方法】
対象は令和3年度の評価実習で身体・老年期障害領域を2期間経験した作業療法学科学生3年生18名(男性8名,女性10名)である.実習課題として,1期目,2期目の実習ではA4用紙2枚の症例報告書の作成を課題とし,3期目の実習では,MTDLPシート(一般情報シート,生活行為聞き取りシート,興味関心チェックシート,生活行為アセスメントシート,課題分析シート,生活行為向上プラン演習シートの5シート)の作成を課題とした.実習終了後,対象となる学生に対して,MTDLPの各シート項目について,「5:よくできた」から「1:できなかった」の5段階にて自己記入を行い,「作成にあたり難しかったこと」「サポートが欲しかったこと」について自由記述にて回答を求めた.また,症例報告書とMTDLPシートの理解度・習熟度の比較では,それぞれの項目について「MTDLPシート」「症例報告書」「どちらも変わらない」から選択し,症例報告書とMTDLPシートを使用した感想について自由記述にて回答を求めた.
【結果】
有効回答率は94.4%であった.「あまりできなかった」「できなかった」の回答が認められた項目は,生活行為聞き取りシートの記載,生活行為アセスメント演習シートの予後予測,考察の記載でそれぞれ2名(11.8%)であった.自由記述では,目標がない対象者の聞き取りが難しい,予後予測が本当に達成可能なのかアドバイスが欲しかった,等の意見が認められた.また,症例報告書とMTDLPシート活用による理解度・習熟度では,「MTDLPシートの方が考えやすい」との回答が多かった項目は,対象者の全体像の把握(80%),心身機能・構造の分析(53.3%),活動と参加の分析(86.7%),個人因子の把握(80%),環境因子の把握(73.3%),目標設定・実施計画の作成(60%),「症例報告書の方が考えやすい」との回答が多かった項目は,評価結果からの考察のしやすさ(40%)であった.割合の変化がない項目は,生活課題と評価結果の相互関連性の整理(それぞれ33.3%)であった.自由記述では,「MTDLPシートは項目に沿った評価を行えばいいので考えやすい」「生活背景や具体的な生活課題を把握しやすい」と回答した一方で,「発表などで相手に伝え難い」という意見が散見された.また,症例報告書では「相互関連性や動作分析などの記載ができる」「活動・参加以外の目標が立てられるため目標選択の幅が広い」などの意見もみられた.
【考察】
MTDLPシートは項目に沿った評価により把握すべき情報の取りこぼしが少なく,対象者の全体像の把握やそれを踏まえた目標設定の理解を促しやすいツールであると考える.一方,MTDLPでは相互関連性の整理や評価結果からの考察といった統合と解釈に関する具体的な記載の機会が得にくく,学生によってはMTDLPツール以外で統合と解釈の理解を促す働きかけが必要であると考える.
2020年からの指定規則改定に伴い,日本作業療法士協会主催の臨床実習指導者講習会においても,臨床実習での生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)の活用を推奨している.本学科の評価実習は,1期(4週間)の実習を,身体・老年期障害,精神障害,発達障害の3領域から3期間経験するよう設定している.今回,令和3年度の身体・老年期障害領域の評価実習において,A4用紙2枚の症例報告書作成を課題とした実習と,MTDLPシートを用いた実習を経験した学生に対し,実習課題の違いによる理解度・習熟度の比較について調査を行い,MTDLPを用いた実習の有効性と課題について検討したので報告する.なお,学生へは本研究の目的を口頭で説明し,アンケートの回答をもって同意が得られたとした.
【対象および方法】
対象は令和3年度の評価実習で身体・老年期障害領域を2期間経験した作業療法学科学生3年生18名(男性8名,女性10名)である.実習課題として,1期目,2期目の実習ではA4用紙2枚の症例報告書の作成を課題とし,3期目の実習では,MTDLPシート(一般情報シート,生活行為聞き取りシート,興味関心チェックシート,生活行為アセスメントシート,課題分析シート,生活行為向上プラン演習シートの5シート)の作成を課題とした.実習終了後,対象となる学生に対して,MTDLPの各シート項目について,「5:よくできた」から「1:できなかった」の5段階にて自己記入を行い,「作成にあたり難しかったこと」「サポートが欲しかったこと」について自由記述にて回答を求めた.また,症例報告書とMTDLPシートの理解度・習熟度の比較では,それぞれの項目について「MTDLPシート」「症例報告書」「どちらも変わらない」から選択し,症例報告書とMTDLPシートを使用した感想について自由記述にて回答を求めた.
【結果】
有効回答率は94.4%であった.「あまりできなかった」「できなかった」の回答が認められた項目は,生活行為聞き取りシートの記載,生活行為アセスメント演習シートの予後予測,考察の記載でそれぞれ2名(11.8%)であった.自由記述では,目標がない対象者の聞き取りが難しい,予後予測が本当に達成可能なのかアドバイスが欲しかった,等の意見が認められた.また,症例報告書とMTDLPシート活用による理解度・習熟度では,「MTDLPシートの方が考えやすい」との回答が多かった項目は,対象者の全体像の把握(80%),心身機能・構造の分析(53.3%),活動と参加の分析(86.7%),個人因子の把握(80%),環境因子の把握(73.3%),目標設定・実施計画の作成(60%),「症例報告書の方が考えやすい」との回答が多かった項目は,評価結果からの考察のしやすさ(40%)であった.割合の変化がない項目は,生活課題と評価結果の相互関連性の整理(それぞれ33.3%)であった.自由記述では,「MTDLPシートは項目に沿った評価を行えばいいので考えやすい」「生活背景や具体的な生活課題を把握しやすい」と回答した一方で,「発表などで相手に伝え難い」という意見が散見された.また,症例報告書では「相互関連性や動作分析などの記載ができる」「活動・参加以外の目標が立てられるため目標選択の幅が広い」などの意見もみられた.
【考察】
MTDLPシートは項目に沿った評価により把握すべき情報の取りこぼしが少なく,対象者の全体像の把握やそれを踏まえた目標設定の理解を促しやすいツールであると考える.一方,MTDLPでは相互関連性の整理や評価結果からの考察といった統合と解釈に関する具体的な記載の機会が得にくく,学生によってはMTDLPツール以外で統合と解釈の理解を促す働きかけが必要であると考える.