第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-6] ポスター:教育 6

Sat. Sep 17, 2022 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PR-6-3] ポスター:教育 6作業療法学生への動作観察場面における口頭での助言の効果

視線分析装置を用いた検討

赤堀 将孝1石浦 佑一2亀山 一義1梅田 顕3山本 順也4 (1はくほう会医療専門学校赤穂校作業療法学科,2姫路獨協大学医療保健学部作業療法学科,3姫路医療専門学校作業療法士科,4デイサービスセンターいきしま)

【序論】指定規則の改定により2020年度入学生から,クリニカルクラークシップによる臨床参加型実習が推奨されている.この実習形態は,見学・模倣・実践の原則に則り,実践の中で学生の成長を促していくこととなる.この形態での効果を客観的に検討することは困難であったが,近年は視線分析装置を用いて動作観察スキルを客観的に捉える試みがなされている.本研究の目的は,OTRとOTSに対して視線分析装置を用いて症例の食事動作場面の動画を視聴し,OTRとOTSの助言前後の視線停留割合の相違を明らかにすることとした.
【方法】対象は,OTR(平均年齢40±2.5歳,平均臨床経験年数17.4±2.3年,認定OT2名,臨床実習指導者研修修了2名)5名,4年制大学と3年制専門学校の評価実習終了後のOTS(平均年齢22±3.9歳)28名であった.全員に対して書面での研究概要や研究参加が自由意思であることを説明の上,同意を得た.OTSは助言の効果判定のため無作為に助言あり群13名,対照群として助言なし群15名に分けた.測定は,眼球運動測定システムTalkEye Lite(竹井機器工業株式会社)を装着し,片麻痺者の食事動作(約1分)の動画を視聴した.分析は,顔面・両上肢体幹・テーブル・両下肢・その他の5領域を指定し,各領域に停留した時間と全ての領域に視線が向けられていた総時間から,各領域にどれだけ視線が向けられていたのかの割合を算出した.助言はOTRに評価実習終了程度の学生に対する助言の書き出しを依頼し,その内容を基に顔面・両上肢体幹・テーブルに関する内容を伝達した.統計処理はEZRにて,OTRとOTS助言あり・助言なしの3群間比較と,OTS助言あり・助言なし群の各群間比較を実施した.本研究は第1著者・第2著者の所属にて倫理審査の承認を受けた(はくほう医専20-1001号,姫獨生20-1).また,日本作業療法教育学会の研究助成を受け実施した.
【結果】助言をしない1回目の動画視聴では,3群間の有意差はなかった.助言後にはテーブルにおいて有意差があり,Steel-Dwass検定よりOTRと助言なし間で有意に減少した(p=0.0422).また,助言前後では,助言あり群の両下肢が有意に減少した(p=0.0327).さらに,テーブルとその他の領域において助言なし群がそれぞれ減少(p=0.0215),増加(p= 0.0125)した.
【考察】助言前に全ての群に有意差がなかったことは他分野での先行研究と類似し,主要な部分に視線を向けることは経験の有無に関わらず可能であると考えられる.前後比較において,助言あり群の下肢への視線停留割合の減少した要因として,助言内容によって視線が変化したためと考えられる.また,助言なし群のテーブルが減少し,その他の停留割合の増加した要因として,OTSは様々な情報を整理した上で固視し続けることができず,情報に合わせて様々な部位に視線が移動していた.そのため,動きの少ないテーブルが減少し,その他の領域が増加したと考えられる.しかし,助言あり群における助言後の変化が少なかったことから,臨床実習にて実際に行われている判断や理解が求められる助言のみでは,経験の少ないOTSの視線は大きく変化しないことが推察される.
【結論】OTRとOTSの視線割合は似通っていることから言語指示による具体的な視点を示すことで,対象部分を注視することができる.そのため言語的な指示は,対象者の状態を捉え,OTRとOTSの情報共有を促進することが推察される.しかし,言語指示によるOTSの視線の変化は少なかったことから実際の動作観察においては,先行した言語指示とその指示内容の理解の確認により,後の観察がより適切に実施できることが示唆される.