第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-7] ポスター:教育 7

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-7-2] ポスター:教育 7Communication and intervention skills assessment in clinical settingの開発ためのデルファイ法を用いた内容妥当性の検討

篠原 和也1葛谷 憲彦2鈴木 ゆい2鹿田 将隆1 (1常葉大学保健医療学部,2常葉大学リハビリテーション病院リハビリテーション科)

【はじめに】 リハビリテーション(以下,リハ)における患者とセラピストとの関係性は極めて重要であるにもかかわらず,良好な関係作りに必要なスキルを測定できるツールはない.本研究の目的は,この関係作りに必要なスキルを測定できる「Communication and intervention skills assessment in clinical setting(以下,CISA):臨床場面におけるコミュニケーションと介入技能評価」の開発のために,理学療法士(以下,PT),言語聴覚士(以下,ST),作業療法士(以下,OT)の専門家を対象にしたデルファイ法による調査から,CISA案の内容妥当性を検討することである.
【方法】 1.対象者 機縁法により募集した新人教育の経験がある臨床経験10年以上の熟練セラピストで,かつ,患者と信頼関係の形成に努めた経験を持つPT17名,OT16名,ST9名であった.2.手続き セラピストが患者との信頼関係を形成する行為の概念[篠原ら,2021]から86の質問項目(以下,項目)を試作し,googleフォームで同意の程度を調べるアンケートを作成した.対象者にアンケートのURLを電子メールで送信後,各項目に対する同意の程度を4段階で評定し,同意できない場合の理由を入力するよう依頼した.調査の集計と回答をもとに改訂したアンケートを対象者に再送信し,上述のように回答を求める調査を2回繰り返した.項目内容の改訂は,第1回と第2回の調査における対象者の指摘をもとに研究者間で行った.3.分析 第3回調査終了時にitem-level content validity index(以下,I-CVI)が0.80以上の項目を選定し,かつ,scale-level content validity index, averaging calculation method(以下,S-CVI/Ave)が0.90以上となる厳格な基準[Politら,2006]を満たすことを確認した.本研究は筆頭演者が所属する大学の研究倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号:変―2021-052).
【結果】 3回における調査の有効回答率は100%であった.対象者の性別は男性22名,女性20名,臨床経験年数の中央値(範囲)は13.0年(10-37年)であり,経験ある臨床領域には急性期病院,回復期リハ病棟,療養型病棟,ホスピス,認知症治療病棟,地域包括ケア病棟,クリニック,介護老人保健施設,通所リハ,訪問リハ,通所介護,発達領域の病院や施設,精神科病院,保健所,保護司,教育機関が含まれていた.第1回調査では86項目のうち,23項目が修正,19項目が他の項目に統合や削除され67項目に改訂された.第2回調査では67項目のうち,22項目が修正,13項目が他の項目に統合や削除され54項目に改訂された.第3回調査終了時には,54項目のI-CVIは全て0.80以上となり,全項目が選定された.また,S-CVI/Aveは0.98となり,上述した2つの基準を満たした.
【考察】 デルファイ法の参加者数は30名以上となっても結果に大差はないとされている[Greenら,2005].なお,2021年のPT129,875人,OT104,286人,ST36,255人という有資格者の現状を反映し,かつ,標本数を30名と仮定した各数はPT15名,OT10名,ST5名となるが,本研究の対象者数はこの数を充足し,かつ,対象者の臨床領域の経験は広域に及ぶと考えられた.また,本研究はデルファイ法で推奨される3段階以上の調査とその有効回答率が70%以上であること[Hassonら,2000]を確保し,上述の厳格な基準から54項目を選出できた.
【結論】 豊富な臨床経験を有するPT,OT,STの知見が反映され,かつ,項目別およびツール全体の内容妥当性が担保されたCISA案が完成した.