第56回日本作業療法学会

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スペシャルセッション

[A-15] スペシャルセッション

Fri. Sep 16, 2022 11:20 AM - 12:30 PM 第1会場 (メインホール)

座長:柴田 克之

[SS-1-1] Home-based telerehabilitation using the robotic glove for patients with intractable neurological disease

畑辺 真乃介1今岡 信介3渡邊 亜紀1河野 真太朗2今岡 信介3渡邊 亜紀1 (1社会医療法人敬和会 大分リハビリテーション病院リハビリテーション部,2医療法人社団仁泉会 畑病院リハビリテーション部,3社会医療法人敬和会 大分岡病院総合リハビリテーション課)

【序論】脳卒中ガイドライン2021では中等度以上の上肢麻痺患者に対するロボット療法に関して推奨度Bとしている.一方,上肢麻痺の改善に関する交絡因子は多岐にわたる為,ロボット療法の適格症例の選定に難渋することが多い.本研究の目的はロボット療法を適応した中等度以上の上肢麻痺患者の機能的予後に関連する因子を検討し,適格症例の選定の一助とすることである.
【方法】対象は2018年3月~2021年12月までに回復期リハ病棟に入院し,ReoGo-Jを行った脳卒中患者53名とした.包含基準はReoGo-Jを用いた上肢機能訓練が1回20分,週3~4回の頻度で4週間行えた者,介入開始時のFugl-Meyer Assessment(以下,FMA)の値が49点以下の者とし,再発患者と調査項目に欠損がある者を除外した.先行研究(Kamal Narayan Arya,2011)に準じて4週間時のFMAがMinimal Clinically Important Difference (以下,MCID)とされる9点以上の向上を認めた者を改善群,それ未満の者を非改善群に分類し,各群の背景因子(性別,病型,年齢,麻痺側,発症からの期間,表在感覚,深部感覚,FMA合計,FMA肩肘前腕,Functional Independence Measure(以下,FIM)運動項目,FIM認知項目,Modified Ashworth Scale(以下,MAS 肩,肘,手),Frontal Assessment Battery(以下,FAB)の分散を比較した.その後,従属変数を4週間時のFMAのMCIDを超える向上の有無,独立変数を介入開始時点のFMA肩肘前腕項目,表在感覚,肩関節のMAS,FABを選択しロジスティック回帰分析を行った.有意な関連性がある変数はReceiver Operatorating Characteristic curve(以下,ROC)曲線を用いてカットオフ値を算出した.算出方法はYouden Indexを採用した.本研究は症例対照試験であり当法人の倫理審査の承認(No.A0046)を受け実施された.説明と同意は「人を対象とする医学研究に関する倫理指針」に沿って本研究の情報公開し,研究への参加を拒否する機会を保障した.
【結果】背景因子の比較は介入開始時点のFMA合計(p=0.009),FMA肩肘前腕(p=0.007),FIM運動項目(p=0.007)において有意差を認めた.ロジスティック回帰分析の結果は偏回帰係数,オッズ比,95%CI ,p値の順で FMA(-0.089,0.915,0.846‐0.990,0.028),表在感覚(0.546,1.726,0.797‐3.736,0.166),MAS(0.814,2.257,0.743‐6.860,0.151),FAB(-0.089,0.915,0.752‐1.112,0.370)となり,FMA肩肘前腕項目のみ有意な関連性を認めた.ROC曲線によりカットオフ値は12.5点(感度:81%,特異度:67%,Area Under Curve:0.75)が算出された.
【考察】本研究ではロボット療法を適応した中等度以上の上肢麻痺患者の機能的予後に与える影響因子として介入開始時のFMA肩肘前腕項目が抽出され,カットオフ値を得ることができた.脳卒中後の上肢の機能回復に関するシステマティックレビューでは介入開始時のFMAの値が低値であるほど上肢の機能転帰が不良であることが明らかにされている(Fiona Coupar,2012).また,ロボット療法後の機能的予後に影響する因子として介入開始時のFMAの値が関連するという報告が散見されるが,MCIDを超える改善に関連する因子やカットオフ値を求めた調査は我々が渉猟する限り存在しなかった.このことから,中等度以上の上肢麻痺患者へのロボット療法の適応を検討する上では介入開始時のFMA肩肘前腕項目を指標とし,適格症例を抽出することで効果的な介入戦略に繋がる可能性が示唆された.本研究の限界として介入研究による効果判定が必要となる点,長期的な機能転帰を予測する因子の検討が必要である点,サンプルサイズの事前設計が十分でない点が挙げられる.