第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

脳血管疾患等

[OA-10] 一般演題:脳血管疾患等 10

2023年11月11日(土) 13:40 〜 14:40 第2会場 (会議場A1)

[OA-10-1] 回復期脳卒中患者におけるFIM利得および退院時運動FIM得点の予測式の外的妥当性の検証

小林 竜1, 小林 法一2 (1.練馬駅リハビリテーション病院, 2.東京都立大学大学院人間健康科学研究科 作業療法科学域)

【序論】回復期病棟の脳卒中患者のリハビリテーション(以下,リハ)において入院初期に日常生活活動の帰結を予測することは患者のリハ目標やプログラムの設定,退院先の整備などに不可欠である.先行研究では,回復期病棟に入院した脳卒中患者を対象に入院時Functional Independence Measure(以下,FIM)や年齢などのデータから重回帰分析を用いてFIM利得や退院時運動FIM得点を予測する手法が多数報告されている.一方,徳永らは年齢などにおける要因の影響を層別化したうえで影響係数を掛け合わせ,FIM利得や退院時運動FIM得点を予測する新しい予測手法を報告している.しかし,この予測モデルの外的妥当性の検証を行った研究は我々が知る限り1件のみであり,臨床応用の可能性について十分な確認がなされているとは言い難い.
【目的】本研究の目的は,徳永らによって開発された「回復期脳卒中患者におけるFIM利得および退院時運動FIM得点の予測式(2015年)」の外的妥当性について検証することである.
【方法】2021年4月~2022年9月にA病院を退院した脳卒中患者(脳梗塞または脳卒中)を対象とし,これを検証群とした.病院の患者データベースより年齢,性別,疾患名,入退院時のFIM,在院日数,一日あたりの平均リハ実施単位数などのデータを収集した.その後,予測式を用いてFIM利得および退院時運動FIM得点の予測値を算出した.予測値と実測値の相関関係を調べるためSpearmanの順位相関分析を行った.また,実測値と予測値の差である残差を算出した.次に,退院時運動FIM得点の残差が±10点以内の者を予測範囲内群,残差>10と予測より高値であった群,残差<-10と予測より低値であった群の3群に分けて,各群の特徴を比較した.なお,本研究は筆頭著者の所属する研究機関の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】分析対象者は207名となった.男性は112名,女性は95名で,平均年齢は76.0±12.0であった.疾患は脳梗塞が146名,脳出血が61名であった.運動FIM利得の予測値と実測値の相関は|r|=0.52であり,残差の平均は7.37±12.6であった.退院時運動FIM得点の予測値と実測値の相関は|r|=0.86であり,残差の平均は5.29±12.8であった.退院時運動FIM得点が予測より高値であった群(n=52)は予測範囲内群(n=136)より有意に在院日数が長く,入院時運動FIM得点および入院時FIM合計が低かった(p<0.05).予測より低値であった群(n=19)は予測範囲内群より有意に一日あたりの平均リハ実施単位数が少なかった(p<0.05).
【考察】徳永らの予測モデルの外的妥当性について検証群を用いて検証した結果,運動FIM利得の予測値と実測値は中等度の相関,退院時運動FIM得点の予測値と実測値の相関は高い相関を示した.また,これらの値は先行研究の結果と近似していた.このことから,徳永らの予測モデルの外的妥当性が担保されたと考える.一方,残差は先行研究よりも大きい傾向を示し,予測が困難なケースも存在することが明らかになった.予測モデルの精度を高めるために,今後は予測モデルの適用基準をより明確にしていく必要がある.