[OA-15-4] 脳卒中により上肢麻痺を呈した患者に対して病棟実施型CI療法アプローチの経験
【はじめに】脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとして,Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)が提唱されており,脳卒中治療ガイドライン2021でもグレードAと推奨されている.しかし,一人の療法士が対象者に対して常に練習時間を確保することには限界がある.近年では,療法士以外の存在を教師とする,家族参加型や病棟で実施するCI療法(以下,病棟実施型CI療法)が先行研究により成果を示している.そこで今回,病棟実施型CI療法を看護師・介護福祉士の協力を得て実践し効果検証を行ったため報告する.学会発表に際し倫理的配慮として,本人へ個人情報の取り扱いについて十分に説明し同意を得た.
【症例紹介】80歳代前半の男性で右利き.左放線冠部に梗塞を認め一般病棟に入院し,32病日後に回復期病棟に入棟した.47病日目の評価は,MMSE29/30点,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢Ⅳ,手指Ⅴ,著名な感覚障害なし,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)39/66点,簡易上肢機能検査(以下,STEF)57/100点でリーチ動作では右上肢の失調症状,肘関節より遠位では分離運動低下が認められた.Motor Activity Log(以下,MAL)のAmount of Use(以下,AOU)2.16/5点,Quality of Movement(以下,QOM)2.16/5点で麻痺手の使用に対する自信の低下が見られていた.Function Independence Measure(以下,FIM)90/126点(運動58点,認知32点)で移動は近接監視の4点杖歩行で可能であった.カナダ作業遂行測定(以下,COPM)では,食事に関して一番重要度が高かったが遂行度・満足度ともに4/10点であった.また症例からは「右手で楽に食べられるようになりたい」と発言が聞かれていた.食事場面では,右上肢でスプーンを使用し摂取されるが,食事量の5割程度で左上肢に持ち替えている状態であった.
【方法・介入経過】CI療法について説明し同意を得た上で,48病日目より修正CI療法を基盤とした病棟実施型CI療法を開始した.リハビリ室では,1日60分から80分の反復的課題指向型訓練を,病棟では4週間,1日40分間を午前・午後に各20分間ずつ実施した.練習課題については,食事動作の課題を優先的に設定し,準備物や方法などを紙面で作成した.看護士・介護福祉士に対しては,内容や介入時の注意点,具体的な声掛け内容を作成した用紙をもとに説明した.また空き時間を利用し,ウォーキングカンファレンスで情報を共有しながら介入した.開始時は,練習途中から筋疲労により頸部屈曲や肩関節の代償運動が見られていた.リハビリ室や病棟での練習を重ねることで,筋持久性の向上や自身で代償運動に気付き修正される様子が見られていた.62病日に食事場面で使用していたスプーンを箸へ移行し練習を実施していった.
【結果】79病日後では,BRS上肢Ⅴ,手指Ⅴ,FMA55点,STEF77点,MAL-AOU4.16点,MAL-QOM3.41点,COPMの食事に関しては遂行度・満足度ともに9点と改善を認めた.食事場面では,代償運動が認められるものの箸を使用し全量食べられるようになられており「完全に満足ではないけど右手で食べれるようになった」と発言が聞かれていた.
【考察】本症例は回復期に介入を行っており,自然治癒の影響が大きい時期であったため,臨床的意味のある最小変化量(以下,MCID)を参考にした.本症例においてはMCIDを超える結果を得ており,病棟実施型CI療法の介入は意味のある結果をもたらした可能性があった.また病棟での関わりによって,生活場面を振り返る機会が通常の作業療法より多く,症例自身の行動変容を促すことができた可能性も考えられる.
【症例紹介】80歳代前半の男性で右利き.左放線冠部に梗塞を認め一般病棟に入院し,32病日後に回復期病棟に入棟した.47病日目の評価は,MMSE29/30点,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢Ⅳ,手指Ⅴ,著名な感覚障害なし,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)39/66点,簡易上肢機能検査(以下,STEF)57/100点でリーチ動作では右上肢の失調症状,肘関節より遠位では分離運動低下が認められた.Motor Activity Log(以下,MAL)のAmount of Use(以下,AOU)2.16/5点,Quality of Movement(以下,QOM)2.16/5点で麻痺手の使用に対する自信の低下が見られていた.Function Independence Measure(以下,FIM)90/126点(運動58点,認知32点)で移動は近接監視の4点杖歩行で可能であった.カナダ作業遂行測定(以下,COPM)では,食事に関して一番重要度が高かったが遂行度・満足度ともに4/10点であった.また症例からは「右手で楽に食べられるようになりたい」と発言が聞かれていた.食事場面では,右上肢でスプーンを使用し摂取されるが,食事量の5割程度で左上肢に持ち替えている状態であった.
【方法・介入経過】CI療法について説明し同意を得た上で,48病日目より修正CI療法を基盤とした病棟実施型CI療法を開始した.リハビリ室では,1日60分から80分の反復的課題指向型訓練を,病棟では4週間,1日40分間を午前・午後に各20分間ずつ実施した.練習課題については,食事動作の課題を優先的に設定し,準備物や方法などを紙面で作成した.看護士・介護福祉士に対しては,内容や介入時の注意点,具体的な声掛け内容を作成した用紙をもとに説明した.また空き時間を利用し,ウォーキングカンファレンスで情報を共有しながら介入した.開始時は,練習途中から筋疲労により頸部屈曲や肩関節の代償運動が見られていた.リハビリ室や病棟での練習を重ねることで,筋持久性の向上や自身で代償運動に気付き修正される様子が見られていた.62病日に食事場面で使用していたスプーンを箸へ移行し練習を実施していった.
【結果】79病日後では,BRS上肢Ⅴ,手指Ⅴ,FMA55点,STEF77点,MAL-AOU4.16点,MAL-QOM3.41点,COPMの食事に関しては遂行度・満足度ともに9点と改善を認めた.食事場面では,代償運動が認められるものの箸を使用し全量食べられるようになられており「完全に満足ではないけど右手で食べれるようになった」と発言が聞かれていた.
【考察】本症例は回復期に介入を行っており,自然治癒の影響が大きい時期であったため,臨床的意味のある最小変化量(以下,MCID)を参考にした.本症例においてはMCIDを超える結果を得ており,病棟実施型CI療法の介入は意味のある結果をもたらした可能性があった.また病棟での関わりによって,生活場面を振り返る機会が通常の作業療法より多く,症例自身の行動変容を促すことができた可能性も考えられる.