[OC-1-2] 呼吸法指導には信頼関係が重要と考えられた一例
【はじめに】
OTは呼吸障害に対し,ADLの改善に有益な動作方法の指導や住環境整備を行い,PTで習得した呼吸法や基本動作を日常生活にうまく反映させること,自己管理が行えるように患者教育を行うことが重要と石川らが(2020)述べている.介入により自己管理する言動が見られ,ADLの向上に繋がった重度COPD患者の事例を報告する.対象者には報告の趣旨を説明し,同意を得た.
【事例紹介・評価(医療療養型病床開始時)】
70歳代男性.X-12年にCOPDと診断.直近では,在宅酸素療法を行いながらも1カ月もたずに呼吸困難で入退院を繰り返す(過去10回).自宅生活が困難となり,A病院から当院入院となる.地域包括ケア病棟でのリハ後,医療療養病床に入棟した.社交的だが,気が短い. 酸素 1.5L/min 安静時SpO₂ 98% 夜間NPPV使用
握力 右 17.4㎏/左 12.5㎏ MMSE 27点 TUG 28.1秒 体重 35.9㎏
FIM 83点 トイレ動作後 SpO₂ 98→93% 脈拍 113回 修正Borgスケール 5
【アプローチ】
(地域包括ケア病棟:入院初日~2ヶ月)
PT・OT介入.安静時,労作時に口すぼめ呼吸等を指導した.発熱で臥床期間もあったが,約1カ月で呼吸法を意識し始め,呼吸法を自主訓練するようになった.ボンベカートで10m程歩行可能だったが,息苦しさのため生活場面でトイレに行くことができなかった.
(医療療養病床:入院2ヶ月~4ヶ月)
転棟後,目標「トイレに行けるようになる」を共有した.①呼吸指導として,労作時の肩甲骨挙上に対し肩の力を抜くことと4秒の呼気を促した.②ADL訓練では,まずはベッドサイドでポータブルトイレ(以下P-トイレ)での訓練を開始した.動作時に呼気を意識させる,脈の増加や呼気が4秒続かない時に休憩を促した.休憩も,SpO₂の回復時間を評価し,目安時間を意識させた.不安感が呼吸苦を増加させる印象があった為,負荷・頻度を漸増しながら,病棟トイレでの排泄訓練へ進展した.③環境調整では,病棟と協議し,トイレが近い部屋に変更し,リハ時のトイレ訓練から少しずつ日常生活へ移行した.他に,入浴指導やNPPVのリーク対策を行い,呼吸仕事量の軽減にも着目した.
【結果】入院4カ月
体重 35.9㎏→36.1㎏ 握力 右 17.4→20.0㎏/左 12.5→15.0㎏ MMSE 27→29点
歩行距離 10m→28m(ボンベカート) 活動 FIM 83→106点 TUG 28.1→24.0秒
トイレでの排泄は,夜間も可能となった.P-トイレは外さず,苦しい時に使用できる環境を設定.本人から「こんな呼吸法を今まで教えてくれなかった」「4秒吐ければ,(呼吸が)落ち着いてくるのがわかる」「今は脈が多いだろう,ちょっと待たないと」と聞かれた.また,継続する療養生活で「自分も食堂に食べに行ってみようかな」と活動範囲を広げたいという想いが表れた.
【考察】
ADL向上の要因として,①PTが呼吸法の基礎訓練を行い,OTが実際の生活場面で動作や環境に段階的にアプローチを行い,各職種の強みを活かせたこと.②客観的かつ具体的数値,課題や成果のフィードバックを繰り返したこと,と考える.それにより,患者自身が効果を認める具体的な呼気の時間や休息時間を意識できるようになり,自己管理能力が向上したと考える.画一的な指導法だけではなく,本人が理解しやすい具体的な指導法が大切であり,呼吸生理やNPPV,血ガスなどの幅広い知識を提供する事で本人との信頼関係が向上し,呼吸指導の効果が見られたと考える.
OTは呼吸障害に対し,ADLの改善に有益な動作方法の指導や住環境整備を行い,PTで習得した呼吸法や基本動作を日常生活にうまく反映させること,自己管理が行えるように患者教育を行うことが重要と石川らが(2020)述べている.介入により自己管理する言動が見られ,ADLの向上に繋がった重度COPD患者の事例を報告する.対象者には報告の趣旨を説明し,同意を得た.
【事例紹介・評価(医療療養型病床開始時)】
70歳代男性.X-12年にCOPDと診断.直近では,在宅酸素療法を行いながらも1カ月もたずに呼吸困難で入退院を繰り返す(過去10回).自宅生活が困難となり,A病院から当院入院となる.地域包括ケア病棟でのリハ後,医療療養病床に入棟した.社交的だが,気が短い. 酸素 1.5L/min 安静時SpO₂ 98% 夜間NPPV使用
握力 右 17.4㎏/左 12.5㎏ MMSE 27点 TUG 28.1秒 体重 35.9㎏
FIM 83点 トイレ動作後 SpO₂ 98→93% 脈拍 113回 修正Borgスケール 5
【アプローチ】
(地域包括ケア病棟:入院初日~2ヶ月)
PT・OT介入.安静時,労作時に口すぼめ呼吸等を指導した.発熱で臥床期間もあったが,約1カ月で呼吸法を意識し始め,呼吸法を自主訓練するようになった.ボンベカートで10m程歩行可能だったが,息苦しさのため生活場面でトイレに行くことができなかった.
(医療療養病床:入院2ヶ月~4ヶ月)
転棟後,目標「トイレに行けるようになる」を共有した.①呼吸指導として,労作時の肩甲骨挙上に対し肩の力を抜くことと4秒の呼気を促した.②ADL訓練では,まずはベッドサイドでポータブルトイレ(以下P-トイレ)での訓練を開始した.動作時に呼気を意識させる,脈の増加や呼気が4秒続かない時に休憩を促した.休憩も,SpO₂の回復時間を評価し,目安時間を意識させた.不安感が呼吸苦を増加させる印象があった為,負荷・頻度を漸増しながら,病棟トイレでの排泄訓練へ進展した.③環境調整では,病棟と協議し,トイレが近い部屋に変更し,リハ時のトイレ訓練から少しずつ日常生活へ移行した.他に,入浴指導やNPPVのリーク対策を行い,呼吸仕事量の軽減にも着目した.
【結果】入院4カ月
体重 35.9㎏→36.1㎏ 握力 右 17.4→20.0㎏/左 12.5→15.0㎏ MMSE 27→29点
歩行距離 10m→28m(ボンベカート) 活動 FIM 83→106点 TUG 28.1→24.0秒
トイレでの排泄は,夜間も可能となった.P-トイレは外さず,苦しい時に使用できる環境を設定.本人から「こんな呼吸法を今まで教えてくれなかった」「4秒吐ければ,(呼吸が)落ち着いてくるのがわかる」「今は脈が多いだろう,ちょっと待たないと」と聞かれた.また,継続する療養生活で「自分も食堂に食べに行ってみようかな」と活動範囲を広げたいという想いが表れた.
【考察】
ADL向上の要因として,①PTが呼吸法の基礎訓練を行い,OTが実際の生活場面で動作や環境に段階的にアプローチを行い,各職種の強みを活かせたこと.②客観的かつ具体的数値,課題や成果のフィードバックを繰り返したこと,と考える.それにより,患者自身が効果を認める具体的な呼気の時間や休息時間を意識できるようになり,自己管理能力が向上したと考える.画一的な指導法だけではなく,本人が理解しやすい具体的な指導法が大切であり,呼吸生理やNPPV,血ガスなどの幅広い知識を提供する事で本人との信頼関係が向上し,呼吸指導の効果が見られたと考える.