第57回日本作業療法学会

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一般演題

運動器疾患

[OD-1] 一般演題:運動器疾患 1

Fri. Nov 10, 2023 2:30 PM - 3:30 PM 第6会場 (会議場A2)

[OD-1-1] 橈骨遠位端骨折術後患者の炎症症状と痛みの経時的変化

大野 博子1, 大森 みかよ1, 寺内 昂2, 大森 圭貢3, 仁木 久照2 (1.聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーションセンター, 2.聖マリアンナ医科大学整形外科学教室, 3.湘南医療大学保健医療学部)

【目的】橈骨遠位端骨折術後の侵害受容性疼痛は,遷延化に伴いCRPSヘ移行することがある.そのため急性期の痛みを含む炎症症状のマネジメントが重要である.しかし,術後の炎症症状の経過を詳細にみた報告はほとんどない.本研究の目的は,橈骨遠位端骨折術後から12週までの痛み,熱感,腫張の経時的変化を調査し,明らかにすることである.
【対象・方法】対象は,橈骨遠位端骨折術後患者29名(男性7名・女性22名,平均年齢 64.69±10.34歳,利き手損傷13名・非利き手損傷16名)である.方法は,痛みの評価としてVAS,Short-Form McGill Pain Questionnaire-2(SF-MPQ2),Pain Catastrophizing Scale(PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を,熱感の評価として表面体温計による手関節の皮膚温を,腫脹の評価として8の字法による周径を,術後2,4,8,12週で測定し,経時的に比較した.統計的手法は,分散分析及び多重比較を用い,危険率5%未満を有意水準とした.本研究は,聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会の承認を得た(承認番号4254).
【結果】VASは,2週に比べ8週(p=0.027)と12週(p<0.001)で,4週に比べ12週(p<0.001),8週に比べて12週(p=0.003)で有意に低値であった.SF-MPQ2(持続性)は,2週に比べ12週(p<0.001)で,4週に比べ8週(p=0.007)と12週(p<0.001)で,SF-MPQ2(間欠性)では4週に比べて12週(p=0.002)で,SF-MPQ2(神経性)では2週に比べ12週(p=0.005)で有意に低値を示した.SF-MPQ2(感情性)では分散分析で有意差があったが多重比較では有意差はなかった.PCS(反芻)は,2週に比べて12週(p=0.001)で,4週に比べて12週(p=0.005)で,PCS(無気力)は,2週に比べて12週(p=0.002)で有意差を認めた,PCS(拡大視)は,有意差がなかった.またHADSは,不安・抑うつとも有意差がなかった.術側の手関節背側の皮膚温は,2週に比べ8週(p=0.042)と12週(p=0.002)で,掌側は2週に比べ8週(p=0.008)と12週(p<0.001)で,4週と比べ12週(p=0.016)で有意に低値であった.術側周径は,2週に比べ8週と12週(p<0.001)で,4週に比べ12週(p=0.006)で有意に低値であった.
【考察】術後のVAS,術側の手関節背側・掌側の皮膚温,術側周径は,術後2週と4週に差がなかったが,8週以降では有意に低値となり,少なくともこの時期までは炎症症状のマネジメントを継続する必要があると考えられた.一方,PCS(拡大視)やHADSは,12週の経過で有意な変化を示さず,炎症とは異なる因子を捉えていると考えられる.