[OD-4-3] 空圧式デジタル握力計の開発 第一報
【序論】
手指変形が強い関節リウマチ患者等の握力測定には,空気で膨らませたカフと水銀式血圧計で構成される水銀式握力計が使用されてきた.しかし,水俣条約により水銀式握力計の販売が終了され,手指変形が強い患者や低握力者の握力測定が困難となっていた.我々は,ダイヤ工業(岡山市)の協力のもと,ウレタン素材にて新たなカフを開発した結果,従来のカフとほぼ同等の有効性を確認した(第56回本学会で発表済).今回,空圧センサーを電子回路に組み込んだ空圧式デジタル握力計試作1型(以下,被試験機)を試作し,その基本性能について検証した.
【方法】
1.被試験機の計測機構 ゴム球またはカフで加圧された握力を,空圧センサー(基板取付型圧力センサーMPXV5050GC6U NXP社製)を用い電圧出力にて測定する(V).その電圧値はM5Stack Core2(以下,M5Stack スイッチサイエンス社製)内でアナログ-デジタル変換(ADC)値に変換され,さらに各測定点を逐次1次式で近似して圧力値(mmHg)に換算しM5Stackのパネルに表示する.測定範囲は,整数で20~250mmHgである.
2.使用機器 アネロイド式圧力計(基準機器として使用 YAMASU社製),被試験機,三方向継手,接続ホース,ゴム球.
3.手順 検討1:アネロイド式圧力計および被試験機での計測 三方向継手とホースでアネロイド式圧力計と被試験機,またゴム球を接続.次にゴム球にて,アネロイド式圧力計を40~240 mmHg間を20 mmHg刻みに3回加圧し,被試験機の計測値を読み取り,平均を算出した.この流れを1セットとし,合計5セット繰り返しさらにその平均値および決定係数(R²)を算出した.検討2:アネロイド式圧力計および被試験機の計測値の比較 検討1で得られた2種類の圧力計の決定係数(R²)を算出した.今回,すべての統計はMicrosoft Excel 2019を使用した.
【結果】
検討1:アネロイド式圧力計の基準値は,低値から順に20.0,40.0,60.0,80.0,100.0,120.0,140.0,160.0,180.0,200.0,220.0,240.0(mmHg)で,これらを真値とした.被試験機の計測値は,低値から順に20.0,40.0,60.0,80.0,100.0,119.9,140.0,160.0,179.2,200.0,217.8,239.9(mmHg)であった.検討2:2種類の圧力計の比較をした決定係数は,y=0.9956x+0.299 R²=0.9999であった.
【考察】
検討1より,アネロイド式圧力計の基準値に対し,被試験機は高加圧値でやや低値を示す傾向にあった.要因として,①空圧センサーの出力電圧を3V以下に制限していること(最大値は5V),②AD値に変換する際に誤差が生じること,③AD値から圧力値に換算する際の誤差等が考えられる.次に検討2より,2種類の圧力計は20~240mmHg間の測定結果において,ほぼ同等な性能を有することが分かった.今回の結果を踏まえ,既開発のカフを装着した被試験機を使っての臨床試験における検証,さらに製品試作機を製作する計画である.
本研究は,所属施設の令和3年度プレ共同研究事業にて実施した.
手指変形が強い関節リウマチ患者等の握力測定には,空気で膨らませたカフと水銀式血圧計で構成される水銀式握力計が使用されてきた.しかし,水俣条約により水銀式握力計の販売が終了され,手指変形が強い患者や低握力者の握力測定が困難となっていた.我々は,ダイヤ工業(岡山市)の協力のもと,ウレタン素材にて新たなカフを開発した結果,従来のカフとほぼ同等の有効性を確認した(第56回本学会で発表済).今回,空圧センサーを電子回路に組み込んだ空圧式デジタル握力計試作1型(以下,被試験機)を試作し,その基本性能について検証した.
【方法】
1.被試験機の計測機構 ゴム球またはカフで加圧された握力を,空圧センサー(基板取付型圧力センサーMPXV5050GC6U NXP社製)を用い電圧出力にて測定する(V).その電圧値はM5Stack Core2(以下,M5Stack スイッチサイエンス社製)内でアナログ-デジタル変換(ADC)値に変換され,さらに各測定点を逐次1次式で近似して圧力値(mmHg)に換算しM5Stackのパネルに表示する.測定範囲は,整数で20~250mmHgである.
2.使用機器 アネロイド式圧力計(基準機器として使用 YAMASU社製),被試験機,三方向継手,接続ホース,ゴム球.
3.手順 検討1:アネロイド式圧力計および被試験機での計測 三方向継手とホースでアネロイド式圧力計と被試験機,またゴム球を接続.次にゴム球にて,アネロイド式圧力計を40~240 mmHg間を20 mmHg刻みに3回加圧し,被試験機の計測値を読み取り,平均を算出した.この流れを1セットとし,合計5セット繰り返しさらにその平均値および決定係数(R²)を算出した.検討2:アネロイド式圧力計および被試験機の計測値の比較 検討1で得られた2種類の圧力計の決定係数(R²)を算出した.今回,すべての統計はMicrosoft Excel 2019を使用した.
【結果】
検討1:アネロイド式圧力計の基準値は,低値から順に20.0,40.0,60.0,80.0,100.0,120.0,140.0,160.0,180.0,200.0,220.0,240.0(mmHg)で,これらを真値とした.被試験機の計測値は,低値から順に20.0,40.0,60.0,80.0,100.0,119.9,140.0,160.0,179.2,200.0,217.8,239.9(mmHg)であった.検討2:2種類の圧力計の比較をした決定係数は,y=0.9956x+0.299 R²=0.9999であった.
【考察】
検討1より,アネロイド式圧力計の基準値に対し,被試験機は高加圧値でやや低値を示す傾向にあった.要因として,①空圧センサーの出力電圧を3V以下に制限していること(最大値は5V),②AD値に変換する際に誤差が生じること,③AD値から圧力値に換算する際の誤差等が考えられる.次に検討2より,2種類の圧力計は20~240mmHg間の測定結果において,ほぼ同等な性能を有することが分かった.今回の結果を踏まえ,既開発のカフを装着した被試験機を使っての臨床試験における検証,さらに製品試作機を製作する計画である.
本研究は,所属施設の令和3年度プレ共同研究事業にて実施した.