[OF-2-1] 補足運動野症候群の臨床症状の特徴と腫瘍摘出範囲との相関
【背景】補足運動野症候群(以下SMA症候群)は術後重度の運動麻痺が急速に回復することが知られている一方,その回復の程度や期間にはばらつきがある.悪性神経膠腫患者のリハビリテーションには,運動機能,高次脳機能の評価を基に中・長期的な機能予後予測が重要であるが困難な場合も多い.
【目的】SMA近傍の神経膠腫摘出例の臨床症状の経過と摘出範囲(深度)を検証し,その特徴を明確にする.
【対象と方法】2017年~2022年11月,当院でSMA近傍の摘出術を行った神経膠腫患者21例を対象とした.対象症例の摘出範囲(深度)を1)補足運動野のみ2)帯状回を含めた摘出3)脳梁まで含めた摘出に分類した.以下の項目について摘出範囲(深度)で比較を行った.
1,上肢と手指のBrunnstrom recovery stage(以下BRS)の周術期とその後の変化.2,歩行可能までの期間.3,周術期と2か月後の日常生活動作(FIM).4,周術期と2か月後のMMSE-JとFABの変化.さらに,5,術後約3か月以内に術前の生活に復帰している社会復帰群と復帰していない非社会復帰群とに分類し,各臨床的因子(年齢,性別,初/再発,術式(awake,general),局在(Lt,Rt),病理診断WHO分類 Grade(2016),摘出範囲(深度)について有意差をみた.1~4はMann-Whitney U検定,5はχ2乗検定を使用した.(JMPpro ver16)
【結果】対象者の年齢中央値は39歳(25~62).男性13例,女性8例であった.局在は左半球が13例,右半球が8例.初発18例,再発3例.術式はawake14例,general7例.病理診断はWHO分類(2016)GradeⅡ6例,Ⅲ10例,Ⅳ5例であった.摘出範囲(深度)1)は4例.2)は10例.3)は7例であった. 1,SMAのみの摘出では運動麻痺は軽微であり,概ね約2週間で回復したのに対し,帯状回,脳梁までの摘出では術直後BRSⅠ~Ⅱを認める症例が多かった.摘出範囲(深度)によらず,手指の随意性から改善する症例が多かった.2,歩行可能までの日数はSMAのみ,帯状回までの摘出に比べ,脳梁までの摘出例は有意に長かった.(p=0.0351)
3,MMSE-JはSMAのみの摘出では低下なく,帯状回,脳梁を含めた摘出では術後軽度低下するが,2か月後には回復した.FABはすべての摘出域で術後軽度低下を認めたが,MMSE-Jと同様に2か月後には回復が見られた.4,FIMは帯状回,脳梁までの摘出では術後低下する症例がいるが,約2か月後には改善を認めた.摘出範囲(深度)での有意差は認めなかった.5,社会復帰に関してWHO 分類,摘出範囲(深度)で有意差を認めた.(p=0.0076,p=0.0026)
【考察・結論】SMA症候群の重症度や期間は切除された量ではなく切除部位との関連が深いとの報告がある.(shamov T et al )運動機能は帯状回,脳梁までの摘出で重度の麻痺が出現した症例が多く,歩行獲得までの期間にも有意差を認めた.術後,語想起や発話遅延の影響でFABが低下するが,2か月には改善を認める.脳梁までの摘出では術後,ADL能力の低下が予測されるため,早期から積極的なリハの介入や環境調整が重要であると考える.社会復帰に関しては,臨床的因子の中では,WHOGrade(2016)と摘出範囲(深度)の関与が大きいことが示唆された.術前より多職種間での情報共有と回復を見据えたプログラム構成が必要である.
【結語】①全例,早期より機能回復傾向を示したが,脳梁までの摘出例の回復は緩やかであった.②摘出範囲(深度)により回復傾向には差があり,術前から情報共有を行い予測に基づいたゴール設定が必要である.③今後,症例を重ね追加解析が必要である.
(本研究は本学倫理委員会にて承認を得ている.)
【目的】SMA近傍の神経膠腫摘出例の臨床症状の経過と摘出範囲(深度)を検証し,その特徴を明確にする.
【対象と方法】2017年~2022年11月,当院でSMA近傍の摘出術を行った神経膠腫患者21例を対象とした.対象症例の摘出範囲(深度)を1)補足運動野のみ2)帯状回を含めた摘出3)脳梁まで含めた摘出に分類した.以下の項目について摘出範囲(深度)で比較を行った.
1,上肢と手指のBrunnstrom recovery stage(以下BRS)の周術期とその後の変化.2,歩行可能までの期間.3,周術期と2か月後の日常生活動作(FIM).4,周術期と2か月後のMMSE-JとFABの変化.さらに,5,術後約3か月以内に術前の生活に復帰している社会復帰群と復帰していない非社会復帰群とに分類し,各臨床的因子(年齢,性別,初/再発,術式(awake,general),局在(Lt,Rt),病理診断WHO分類 Grade(2016),摘出範囲(深度)について有意差をみた.1~4はMann-Whitney U検定,5はχ2乗検定を使用した.(JMPpro ver16)
【結果】対象者の年齢中央値は39歳(25~62).男性13例,女性8例であった.局在は左半球が13例,右半球が8例.初発18例,再発3例.術式はawake14例,general7例.病理診断はWHO分類(2016)GradeⅡ6例,Ⅲ10例,Ⅳ5例であった.摘出範囲(深度)1)は4例.2)は10例.3)は7例であった. 1,SMAのみの摘出では運動麻痺は軽微であり,概ね約2週間で回復したのに対し,帯状回,脳梁までの摘出では術直後BRSⅠ~Ⅱを認める症例が多かった.摘出範囲(深度)によらず,手指の随意性から改善する症例が多かった.2,歩行可能までの日数はSMAのみ,帯状回までの摘出に比べ,脳梁までの摘出例は有意に長かった.(p=0.0351)
3,MMSE-JはSMAのみの摘出では低下なく,帯状回,脳梁を含めた摘出では術後軽度低下するが,2か月後には回復した.FABはすべての摘出域で術後軽度低下を認めたが,MMSE-Jと同様に2か月後には回復が見られた.4,FIMは帯状回,脳梁までの摘出では術後低下する症例がいるが,約2か月後には改善を認めた.摘出範囲(深度)での有意差は認めなかった.5,社会復帰に関してWHO 分類,摘出範囲(深度)で有意差を認めた.(p=0.0076,p=0.0026)
【考察・結論】SMA症候群の重症度や期間は切除された量ではなく切除部位との関連が深いとの報告がある.(shamov T et al )運動機能は帯状回,脳梁までの摘出で重度の麻痺が出現した症例が多く,歩行獲得までの期間にも有意差を認めた.術後,語想起や発話遅延の影響でFABが低下するが,2か月には改善を認める.脳梁までの摘出では術後,ADL能力の低下が予測されるため,早期から積極的なリハの介入や環境調整が重要であると考える.社会復帰に関しては,臨床的因子の中では,WHOGrade(2016)と摘出範囲(深度)の関与が大きいことが示唆された.術前より多職種間での情報共有と回復を見据えたプログラム構成が必要である.
【結語】①全例,早期より機能回復傾向を示したが,脳梁までの摘出例の回復は緩やかであった.②摘出範囲(深度)により回復傾向には差があり,術前から情報共有を行い予測に基づいたゴール設定が必要である.③今後,症例を重ね追加解析が必要である.
(本研究は本学倫理委員会にて承認を得ている.)