[OH-1-1] 精神科デイ・ケアにおけるフレイル予防プログラムが身体・心理・生活満足度に与える効果
【はじめに】我が国では,健康寿命の延伸や早逝の予防が健康増進の基本的方針として定められ,健康寿命に影響するフレイル対策の推進や,予防的介入の強化を目指す必要性が叫ばれている.また,精神疾患を抱える人々(当事者)の寿命は精神疾患を持たない人の寿命と比較して22.2年短く,死因の7割が身体疾患に起因するという報告(Kondo Shinsuke,2017)や,身体活動レベルの低さが指摘され当事者の身体的問題が注目されつつある.そのような背景をふまえ,本研究では,当事者の活動の場の一つである精神科デイ・ケア(デイケア)において,フレイル予防プログラムを実施した.
【目的】本研究の目的は,デイケアにおいて通常プログラムに加え先行研究を参考にしたフレイル予防プログラムを実施した群(実験群)と,通常プログラムのみ参加した群(対照群)を比べ,身体,心理,生活満足度へ与える効果に差があるかを明らかにすることである.
【対象】2つの病院で募集し,包含基準はデイケアを利用し成人年齢に達する者で,プログラムの効果を検討するための測定会への参加に同意した者とし,除外基準は要介護認定を受けている者とした.
【方法】研究デザインは曜日ごとに行われているプログラムを実験群と対照群に割り振り,プログラム前後に成果指標測定を行う準ランダム化群間比較試験を採用した介入研究とした.プログラムは1回30分程度のセッションを約3ヶ月の間で12回,曜日を固定し週1回ないし2回実施した.内容は他職種による講話と,運動およびホームプログラムで構成した.参加者には,ホームプログラムの実施を勧め,実施記録表をつけること,毎回のセッション時にそれらを提出することを依頼し,記録表には研究代表者がコメントを記載してその都度返却した.測定項目は,基本情報として年齢,性別,主疾患,内服薬の有無とその数,投薬変更の有無,体重減少,疲労感,運動習慣,プログラムに対する興味,身長,体重,成果指標として握力,5回椅子立ち座りテスト(5STS),下腿周径,Body Mass Index(BMI),通常歩行速度,最大歩行速度,Timed Up and Go Test(TUG),歩数,Short Physical Performance Battery(SPPB),Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS),生活満足度,遂行度を初回評価と最終評価にて調査した.また,フレイル判定には日本版CHS基準(J-CHS基準)を使用した.統計解析はベースライン検定には対応のない t 検定および χ2 検定,効果判定には,分割プロットデザインによる二元配置分散分析を用いた.さらに,交互作用が得られた場合,多重比較検定を行った.なお,本研究は,筆者所属大学の研究倫理審査の承認を受けている(承認番号21086).
【結果】参加者は実験群32名,対照群15名であった.J-CHS基準ではロバストは実験群13名対照群2名プレフレイルは実験群9名対照群9名フレイルは実験群3名対照群1名であった.BMIは実験群25.9対照群25.7だった.ベースラインの比較では,運動習慣の有無のみ有意な偏りがあった.成果指標では,握力(p<0.001),5STS(p=0.01),努力歩行速度(p=0.03),SPPB(p=0.008),BPRS(p=0.006),遂行度(p=0.01)に交互作用があった.体重は時間の主効果があった(p=0.001).一方で,生活に関する遂行度には交互作用があったものの,多重比較で有意差を認めず,満足度には有意差がなかった.
【考察】アウトカム評価により,身体的尺度と心理的尺度には有意差を認めたが,満足度・遂行度は有意差を認めなかった.本研究により,デイケア利用者の身体活動レベルは低い状況にあることや,デイケアにおける身体活動プログラムは,身体,心理的側面に効果が得られることが示された一方で, 生活機能に焦点を当てた個別アプローチをデイケアの通常プログラムでも支援することも必要と考える.
【目的】本研究の目的は,デイケアにおいて通常プログラムに加え先行研究を参考にしたフレイル予防プログラムを実施した群(実験群)と,通常プログラムのみ参加した群(対照群)を比べ,身体,心理,生活満足度へ与える効果に差があるかを明らかにすることである.
【対象】2つの病院で募集し,包含基準はデイケアを利用し成人年齢に達する者で,プログラムの効果を検討するための測定会への参加に同意した者とし,除外基準は要介護認定を受けている者とした.
【方法】研究デザインは曜日ごとに行われているプログラムを実験群と対照群に割り振り,プログラム前後に成果指標測定を行う準ランダム化群間比較試験を採用した介入研究とした.プログラムは1回30分程度のセッションを約3ヶ月の間で12回,曜日を固定し週1回ないし2回実施した.内容は他職種による講話と,運動およびホームプログラムで構成した.参加者には,ホームプログラムの実施を勧め,実施記録表をつけること,毎回のセッション時にそれらを提出することを依頼し,記録表には研究代表者がコメントを記載してその都度返却した.測定項目は,基本情報として年齢,性別,主疾患,内服薬の有無とその数,投薬変更の有無,体重減少,疲労感,運動習慣,プログラムに対する興味,身長,体重,成果指標として握力,5回椅子立ち座りテスト(5STS),下腿周径,Body Mass Index(BMI),通常歩行速度,最大歩行速度,Timed Up and Go Test(TUG),歩数,Short Physical Performance Battery(SPPB),Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS),生活満足度,遂行度を初回評価と最終評価にて調査した.また,フレイル判定には日本版CHS基準(J-CHS基準)を使用した.統計解析はベースライン検定には対応のない t 検定および χ2 検定,効果判定には,分割プロットデザインによる二元配置分散分析を用いた.さらに,交互作用が得られた場合,多重比較検定を行った.なお,本研究は,筆者所属大学の研究倫理審査の承認を受けている(承認番号21086).
【結果】参加者は実験群32名,対照群15名であった.J-CHS基準ではロバストは実験群13名対照群2名プレフレイルは実験群9名対照群9名フレイルは実験群3名対照群1名であった.BMIは実験群25.9対照群25.7だった.ベースラインの比較では,運動習慣の有無のみ有意な偏りがあった.成果指標では,握力(p<0.001),5STS(p=0.01),努力歩行速度(p=0.03),SPPB(p=0.008),BPRS(p=0.006),遂行度(p=0.01)に交互作用があった.体重は時間の主効果があった(p=0.001).一方で,生活に関する遂行度には交互作用があったものの,多重比較で有意差を認めず,満足度には有意差がなかった.
【考察】アウトカム評価により,身体的尺度と心理的尺度には有意差を認めたが,満足度・遂行度は有意差を認めなかった.本研究により,デイケア利用者の身体活動レベルは低い状況にあることや,デイケアにおける身体活動プログラムは,身体,心理的側面に効果が得られることが示された一方で, 生活機能に焦点を当てた個別アプローチをデイケアの通常プログラムでも支援することも必要と考える.