[OH-1-3] 精神科デイケア利用者の活動状況とリカバリーの関連
【序論】
障害を抱えながらも対象者が希望を抱き, 満足できる人生を送ることであるリカバリーの考え方は, 精神障害者の地域生活支援において重要である. リカバリーは連続した作業のプロセスであり, 意味や価値のある作業に従事することは, リカバリーを促進する (Doroudら, 2015). 一方で, 地域生活支援において中心的役割を担う精神科デイケアについて, 利用者はデイケアに依存し, 地域から疎外されていると感じ, 地域での社会参加ができていないという指摘もある (Bryantら, 2004; 成田・小林, 2020). そこで, 精神科デイケア利用者のデイケア外での活動を捉え,リカバリーへの影響を調査することは, 今後の地域生活支援を発展させていく上で重要である.
【目的】
デイケア利用者が実施する活動の内容や時間とリカバリーの状態を解明すること. また, それらに関連する要素(生活の質 (QOL) , スティグマ, 症状や機能)との関係性も解明する.
【方法】
自己記入式の質問紙を用いた横断研究を実施した. 対象者は, 精神科デイケアを週1回以上利用する重度精神障害者で,研究内容を理解し同意の得られた者とした. ただし, 認知症及び物質依存の併発のある者は除外した. データ収集期間は2022年1~2月. 収集したデータは, 対象者の基本情報(年齢・性別・診断名・デイケア利用期間・入院回数・就労状況等), 精神症状(簡易精神症状評価尺度; BPRS), 心理社会的機能(機能の全体的評定尺度; GAF), リカバリー(日本語版Recovery Assessment Scale; RAS), デイケア利用のない日の活動状況・活動の遂行度・重要度・楽しみ(作業質問紙; OQ), スティグマ(Linkセルフスティグマ尺度; PDD), QOL(WHOQOL-26)であった. データ解析は, スピアマンの相関係数を用いて, RASとその他の因子(基本情報, OQ, PDD, WHOQOL-26)の関連を調べた. 次に, RASと有意な関連のあった因子と, その他の因子の相関を調べた. 有意水準は5%未満とした. なお, 本研究は発表者らの所属機関における倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は35名. 平均年齢は52.1±14.8歳(平均±SD)で, 26名が統合失調症の診断を有していた. デイケア利用期間は平均約6年(範囲:42〜10,113日)であった. 解析の結果, RAS合計点はWHOQOL-26合計点(相関係数r = 0.76, p < 0.001)及び全5領域(r ≧ 0.45, p < 0.05)で有意な正の相関が示された. RASとOQ, PDD, 基本情報に関連は示されなかった. 次に, WHOQOL-26とその他の因子の相関を解析し, WHOQOL-26合計点とOQにおける活動の重要度に有意な正の相関が示された(r = 0.46, p = 0.043). また, 身体的QOLとGAFに有意な正の関連が示された.
【考察】
リカバリーとQOL, QOLと活動の重要度に正の関連が示された. QOLはリカバリーの構成要素の1つであり(Leamyら, 2011), デイケア利用者の活動はリカバリーの一部と関連していたと考えられる. また, 重要度の高い活動への参加が, QOL向上を介して, リカバリーに関連していることが示唆された. 一方で, リカバリーと活動には有意な関連は示されなかったことから, デイケア外での活動はリカバリーの達成に十分に寄与していない可能性が示唆された. デイケア利用者のリカバリー促進には, 地域での他者とのつながりやアイデンティティーを構築し, デイケア外での活動機会を増やしていく必要がある.今後は対象者を拡大し, 因子同士の関係性をより明確にし, リカバリーに着目した支援方法の検討をしていく.
障害を抱えながらも対象者が希望を抱き, 満足できる人生を送ることであるリカバリーの考え方は, 精神障害者の地域生活支援において重要である. リカバリーは連続した作業のプロセスであり, 意味や価値のある作業に従事することは, リカバリーを促進する (Doroudら, 2015). 一方で, 地域生活支援において中心的役割を担う精神科デイケアについて, 利用者はデイケアに依存し, 地域から疎外されていると感じ, 地域での社会参加ができていないという指摘もある (Bryantら, 2004; 成田・小林, 2020). そこで, 精神科デイケア利用者のデイケア外での活動を捉え,リカバリーへの影響を調査することは, 今後の地域生活支援を発展させていく上で重要である.
【目的】
デイケア利用者が実施する活動の内容や時間とリカバリーの状態を解明すること. また, それらに関連する要素(生活の質 (QOL) , スティグマ, 症状や機能)との関係性も解明する.
【方法】
自己記入式の質問紙を用いた横断研究を実施した. 対象者は, 精神科デイケアを週1回以上利用する重度精神障害者で,研究内容を理解し同意の得られた者とした. ただし, 認知症及び物質依存の併発のある者は除外した. データ収集期間は2022年1~2月. 収集したデータは, 対象者の基本情報(年齢・性別・診断名・デイケア利用期間・入院回数・就労状況等), 精神症状(簡易精神症状評価尺度; BPRS), 心理社会的機能(機能の全体的評定尺度; GAF), リカバリー(日本語版Recovery Assessment Scale; RAS), デイケア利用のない日の活動状況・活動の遂行度・重要度・楽しみ(作業質問紙; OQ), スティグマ(Linkセルフスティグマ尺度; PDD), QOL(WHOQOL-26)であった. データ解析は, スピアマンの相関係数を用いて, RASとその他の因子(基本情報, OQ, PDD, WHOQOL-26)の関連を調べた. 次に, RASと有意な関連のあった因子と, その他の因子の相関を調べた. 有意水準は5%未満とした. なお, 本研究は発表者らの所属機関における倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は35名. 平均年齢は52.1±14.8歳(平均±SD)で, 26名が統合失調症の診断を有していた. デイケア利用期間は平均約6年(範囲:42〜10,113日)であった. 解析の結果, RAS合計点はWHOQOL-26合計点(相関係数r = 0.76, p < 0.001)及び全5領域(r ≧ 0.45, p < 0.05)で有意な正の相関が示された. RASとOQ, PDD, 基本情報に関連は示されなかった. 次に, WHOQOL-26とその他の因子の相関を解析し, WHOQOL-26合計点とOQにおける活動の重要度に有意な正の相関が示された(r = 0.46, p = 0.043). また, 身体的QOLとGAFに有意な正の関連が示された.
【考察】
リカバリーとQOL, QOLと活動の重要度に正の関連が示された. QOLはリカバリーの構成要素の1つであり(Leamyら, 2011), デイケア利用者の活動はリカバリーの一部と関連していたと考えられる. また, 重要度の高い活動への参加が, QOL向上を介して, リカバリーに関連していることが示唆された. 一方で, リカバリーと活動には有意な関連は示されなかったことから, デイケア外での活動はリカバリーの達成に十分に寄与していない可能性が示唆された. デイケア利用者のリカバリー促進には, 地域での他者とのつながりやアイデンティティーを構築し, デイケア外での活動機会を増やしていく必要がある.今後は対象者を拡大し, 因子同士の関係性をより明確にし, リカバリーに着目した支援方法の検討をしていく.