[OH-2-3] 統合失調症患者に対するSocial Cognition and Interaction Training(SCIT)による就労への効果検討
【はじめに】
統合失調症患者の就業率は,他の精神疾患に比べ低い.先行研究では,統合失調症患者の就労を阻害する要因として,精神症状の他,認知機能障害などが挙げられているが,社会認知機能は直接的に就労と関連することが報告されている.社会認知機能の改善のためのプログラムには,Social Cognition and Interaction Training (以下,SCIT)がある.SCITは,社会認知機能を改善させることが明らかとなっているが,就労への影響については十分な検討がなされていない.本研究の目的は,統合失調症患者の就労者と非就労者の社会認知機能および就労関連因子を比較することにより非就労者の特徴を明らかにし,非就労者に対するSCIT実施による社会認知機能および就労関連因子への効果を検討することである.
【方法】
本研究は,所属大学倫理委員会の承認を得て実施した.対象者は,精神科デイケアに通院している統合失調症患者とし,SCITへの参加の同意の得られた非就労者をSCIT介入群へ組み込んだ.調査項目は,基本情報として,年齢,性別,教育年数,入院回数,総入院日数,罹病期間,クロルプロマジン(CP)換算量を収集した.また,精神症状を機能の全般的評定尺度修正版(mGAF),神経認知機能を統合失調症認知評価尺度日本語版(SCoRS-J),社会認知機能を成人版表情認知検査およびSocial Cognition Screening Questionnaire日本語版(SCSQ-J),職業準備性を厚生労働省就労移行支援のためのチェックリスト,動機づけを一般的因果律志尺度東邦版(GCOS-T),自己効力感を地域生活における自己効力感尺度(SECL),レジリエンスを精神的回復力尺度(ARS),内面化されたスティグマをLinkスティグマ尺度日本語版にて評価した.SCITは,週1回,約1時間程度の認知機能セッションを20〜24回,3~5人のグループで行われた.分析は,就労群(一般雇用,A型,B型,アルバイト,パートに就いている者)と非就労群の群間比較にMann-WhitneyのU検定を,非就労群のSCIT実施前後比較にWilcoxonの符号付順位検定を実施し,有意水準を5%とした.
【結果】
対象者39名(男性26名,女性13名)の属性は,年齢44.5±9.5歳,教育年数12.6±1.9年,入院回数5.1±4.9回,総入院日数500±962日,罹病期間21.3±10.5年,CP換算値452±316mg/日であり,就労群が16名,非就労群が23名であった.群間比較の結果,就労群が非就労群に比して良好であった項目は,mGAF,就労移行支援のためのチェックリスト,SCoRS-J評価者評価,SCSQ作業記憶項目,メタ認知項目および合計点であった (いずれもp<0.05).
非就労群に対してSCITを実施した結果,SCSQメタ認知およびmGAFが改善した(いずれもp<0.05).
【考察】
本研究では,就労群は非就労群に比べてmGAF,就労移行支援のためのチェックリスト,SCoRS-J評価者評価,SCSQ作業記憶項目,メタ認知項目および合計点の項目で良好な成績であり,これらの項目の成績が低い者が就労していないことが示唆された.有意差が認められた項目のうち,SCITによる訓練効果が認められたのはSCSQメタ認知項目およびmGAFであった.これらの項目の改善には,SCITの自身の対人場面での経験を議論し,日常生活に反映させる練習を行なったことが寄与した可能性がある.
統合失調症患者の就業率は,他の精神疾患に比べ低い.先行研究では,統合失調症患者の就労を阻害する要因として,精神症状の他,認知機能障害などが挙げられているが,社会認知機能は直接的に就労と関連することが報告されている.社会認知機能の改善のためのプログラムには,Social Cognition and Interaction Training (以下,SCIT)がある.SCITは,社会認知機能を改善させることが明らかとなっているが,就労への影響については十分な検討がなされていない.本研究の目的は,統合失調症患者の就労者と非就労者の社会認知機能および就労関連因子を比較することにより非就労者の特徴を明らかにし,非就労者に対するSCIT実施による社会認知機能および就労関連因子への効果を検討することである.
【方法】
本研究は,所属大学倫理委員会の承認を得て実施した.対象者は,精神科デイケアに通院している統合失調症患者とし,SCITへの参加の同意の得られた非就労者をSCIT介入群へ組み込んだ.調査項目は,基本情報として,年齢,性別,教育年数,入院回数,総入院日数,罹病期間,クロルプロマジン(CP)換算量を収集した.また,精神症状を機能の全般的評定尺度修正版(mGAF),神経認知機能を統合失調症認知評価尺度日本語版(SCoRS-J),社会認知機能を成人版表情認知検査およびSocial Cognition Screening Questionnaire日本語版(SCSQ-J),職業準備性を厚生労働省就労移行支援のためのチェックリスト,動機づけを一般的因果律志尺度東邦版(GCOS-T),自己効力感を地域生活における自己効力感尺度(SECL),レジリエンスを精神的回復力尺度(ARS),内面化されたスティグマをLinkスティグマ尺度日本語版にて評価した.SCITは,週1回,約1時間程度の認知機能セッションを20〜24回,3~5人のグループで行われた.分析は,就労群(一般雇用,A型,B型,アルバイト,パートに就いている者)と非就労群の群間比較にMann-WhitneyのU検定を,非就労群のSCIT実施前後比較にWilcoxonの符号付順位検定を実施し,有意水準を5%とした.
【結果】
対象者39名(男性26名,女性13名)の属性は,年齢44.5±9.5歳,教育年数12.6±1.9年,入院回数5.1±4.9回,総入院日数500±962日,罹病期間21.3±10.5年,CP換算値452±316mg/日であり,就労群が16名,非就労群が23名であった.群間比較の結果,就労群が非就労群に比して良好であった項目は,mGAF,就労移行支援のためのチェックリスト,SCoRS-J評価者評価,SCSQ作業記憶項目,メタ認知項目および合計点であった (いずれもp<0.05).
非就労群に対してSCITを実施した結果,SCSQメタ認知およびmGAFが改善した(いずれもp<0.05).
【考察】
本研究では,就労群は非就労群に比べてmGAF,就労移行支援のためのチェックリスト,SCoRS-J評価者評価,SCSQ作業記憶項目,メタ認知項目および合計点の項目で良好な成績であり,これらの項目の成績が低い者が就労していないことが示唆された.有意差が認められた項目のうち,SCITによる訓練効果が認められたのはSCSQメタ認知項目およびmGAFであった.これらの項目の改善には,SCITの自身の対人場面での経験を議論し,日常生活に反映させる練習を行なったことが寄与した可能性がある.