[OH-3-2] 認知症者における作業療法中の態度・行動と焦燥性興奮の関係性
【背景・目的】多くの介護を要する認知症者は年々増加し認知症が進行すると焦燥性興奮(以下,Agitation)が増悪し介護負担の促進因子となるため作業療法による軽減を図る.しかしAgitationへの介入効果の報告は差異がありAgitationを有する認知症者は作業療法中の態度・行動(以下,Engagement)が安定しない.効果を判定する際の介入前後の変化だけでなくEngagementの評価を行い介入効果に言及する必要があるがEngagementとAgitationとの関連性とそれらの関連要因を示した報告は筆者らが知る限り国内ではなされていない.本研究の目的として認知症者のEngagementとAgitationの相互関連性とそれらの関連要因を検討することとした.
【方法】対象者および期間:対象者は当院精神科に2022年4月1日から10月1日に入院し認知症と診断された男女とした.除外基準は活動制限が必要と主治医から判断され1週間以内に抗精神病薬,抗うつ薬,睡眠薬を新たに服用開始した者とした.研究デザインは単施設の横断研究とした.用いた評価:基本属性は,年齢,性別,Clinical Dementia Rating(以下,CDR),インターライ方式を用いた視覚・聴覚障害の程度とした.臨床的評価は認知機能をMini Mental State Examination(以下,MMSE),Activities of Daily Living(以下,ADL)をPhysical Self Maintenance Scale(以下,PSMS),併存疾患はCharlson Comorbidity Index (以下,CCI),疼痛はPain Assessment in Advanced Dementia(以下,PAINAD)を用いた.主たる評価として作業療法処方後2週間から1ヶ月以内の連続2週間のAgitationはCohen-Mansfield Agitation Inventory(以下,CMAI),EngagementはAssessment Scale for Engagement in Activities (以下,ASEA)を用いた.統計解析:EZRを用い基本属性,臨床的評価,CMAIおよびASEAをSpearmanの順位相関係数で有意水準5%未満で分析をした.倫理的配慮:病院長の許可を得て実施し本報告は対象者とその家族へ説明し同意を得ている.大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科の承認を得て実施した.
【結果】対象者は23例,平均年齢(±標準偏差:SD)は80.1(±6.80)歳,男性が11例,女性が12例,CDRは軽度が2例,中等度が5例,重度が16例であった.視覚は1.83(±0.76)点,聴覚は1.52(±0.83)点,共に中央値は1で軽度から中等度の障害を認めた.臨床的評価はMMSEは平均8.96(±9.31)点で重度の認知機能障害を認めた.PSMSは平均0.57(±0.92)点であり何らかの介助が必要な状態であった.CMAIは平均31.90(±10.71)点で何らかのAgitationが出現していた.併存疾患は平均2.43(±1.47)点で重症度はmediumからhighであった.PAINADは平均1.06(±1.49)点であった.ASEAは平均12.70(±4.09)点であった.CMAIと基本属性,臨床的評価の相関分析の結果,CDR,CCIとの間に正の相関を認めた(ρ=.42,p<.05,ρ=.50,p<.05).MMSE,PSMSとの間に負の相関を認めた(ρ=-.43,p<.05,ρ=-.57,p<.01).ASEAと基本属性,臨床的評価の相関分析の結果,MMSE,PSMSとの間に正の相関を認めた(ρ=.56,p<.01,ρ=.42,p<.04).CDR,視覚,CMAIとの間に負の相関を認めた(ρ=-.48,p<.05,ρ=-.63,p<.05,ρ=-.70,p<.05).
【考察】AgitationとEngagementは相互に関連しており,共通して認知機能障害,ADL,認知症の重症度と関連,Agitationは併存疾患とEngagementは視覚障害と関連している事が明らかになった.Cohen-Mansfield(2011)はEngagementは認知機能,ADL,視覚との関連を示唆し本研究と同様の結果となった.一方でAgitationとの関連は先行研究では報告されていない新規的な知見であると思われた.
【方法】対象者および期間:対象者は当院精神科に2022年4月1日から10月1日に入院し認知症と診断された男女とした.除外基準は活動制限が必要と主治医から判断され1週間以内に抗精神病薬,抗うつ薬,睡眠薬を新たに服用開始した者とした.研究デザインは単施設の横断研究とした.用いた評価:基本属性は,年齢,性別,Clinical Dementia Rating(以下,CDR),インターライ方式を用いた視覚・聴覚障害の程度とした.臨床的評価は認知機能をMini Mental State Examination(以下,MMSE),Activities of Daily Living(以下,ADL)をPhysical Self Maintenance Scale(以下,PSMS),併存疾患はCharlson Comorbidity Index (以下,CCI),疼痛はPain Assessment in Advanced Dementia(以下,PAINAD)を用いた.主たる評価として作業療法処方後2週間から1ヶ月以内の連続2週間のAgitationはCohen-Mansfield Agitation Inventory(以下,CMAI),EngagementはAssessment Scale for Engagement in Activities (以下,ASEA)を用いた.統計解析:EZRを用い基本属性,臨床的評価,CMAIおよびASEAをSpearmanの順位相関係数で有意水準5%未満で分析をした.倫理的配慮:病院長の許可を得て実施し本報告は対象者とその家族へ説明し同意を得ている.大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科の承認を得て実施した.
【結果】対象者は23例,平均年齢(±標準偏差:SD)は80.1(±6.80)歳,男性が11例,女性が12例,CDRは軽度が2例,中等度が5例,重度が16例であった.視覚は1.83(±0.76)点,聴覚は1.52(±0.83)点,共に中央値は1で軽度から中等度の障害を認めた.臨床的評価はMMSEは平均8.96(±9.31)点で重度の認知機能障害を認めた.PSMSは平均0.57(±0.92)点であり何らかの介助が必要な状態であった.CMAIは平均31.90(±10.71)点で何らかのAgitationが出現していた.併存疾患は平均2.43(±1.47)点で重症度はmediumからhighであった.PAINADは平均1.06(±1.49)点であった.ASEAは平均12.70(±4.09)点であった.CMAIと基本属性,臨床的評価の相関分析の結果,CDR,CCIとの間に正の相関を認めた(ρ=.42,p<.05,ρ=.50,p<.05).MMSE,PSMSとの間に負の相関を認めた(ρ=-.43,p<.05,ρ=-.57,p<.01).ASEAと基本属性,臨床的評価の相関分析の結果,MMSE,PSMSとの間に正の相関を認めた(ρ=.56,p<.01,ρ=.42,p<.04).CDR,視覚,CMAIとの間に負の相関を認めた(ρ=-.48,p<.05,ρ=-.63,p<.05,ρ=-.70,p<.05).
【考察】AgitationとEngagementは相互に関連しており,共通して認知機能障害,ADL,認知症の重症度と関連,Agitationは併存疾患とEngagementは視覚障害と関連している事が明らかになった.Cohen-Mansfield(2011)はEngagementは認知機能,ADL,視覚との関連を示唆し本研究と同様の結果となった.一方でAgitationとの関連は先行研究では報告されていない新規的な知見であると思われた.