第57回日本作業療法学会

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一般演題

精神障害/MTDLP

[OH-4] 一般演題:精神障害 4

Sun. Nov 12, 2023 9:40 AM - 10:40 AM 第7会場 (会議場B3-4)

[OH-4-2] 精神疾患患者の睡眠問題に対して作業療法士が介入する利点

立山 和久1, 綾部 直子2,3, 羽澄 恵3,4, 松井 健太郎5, 吉田 寿美子1 (1.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神リハビリテーション部, 2.国立大学法人 秋田大学 教育文化学部, 3.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部, 4.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所公共精神健康医療研究部, 5.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター臨床検査部)

【目的】
不眠症状等の睡眠問題を抱えた精神疾患患者は少なくない.当院精神リハビリテーション部では睡眠・覚醒障害研究部や臨床検査部などと連携し,不眠症に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia:CBT-I)をベースにした集団プログラム(睡眠力アッププログラム)を精神科ショート・ケアの枠組みで実施している.本研究はその有用性を踏まえて精神疾患患者の睡眠問題に対して作業療法士が介入する利点について考察する.
【方法】
本研究は,2019年12月27日から2021年8月6日の期間に,睡眠問題を抱え,主治医から介入の必要性を求められた患者を対象として,不眠重症度(ISI),抑うつ症状(PHQ-9),睡眠に関する非機能的な信念と態度(DBAS)の得点の前後比較を対応のあるt検定を用いて分析し,プログラム参加の満足度や感想を計量的に分析した.プログラムは1回のセッションにつき4~7名程度の参加者を対象とし,作業療法士2名がファシリテーターとなり,計4回(120分/回)を隔週で実施した.プログラムは睡眠問題の改善やQOLの向上を目的として,CBT-Iに基づいた睡眠衛生指導や心理教育,睡眠スケジュール法のレクチャーに加え,運動やリラクセーション技法等の体験学習や参加者の意見交換を行なった.本研究は,国立精神・神経医療研究センター倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
全4回のセッションに参加した者は41名(男性16名,女性25名,平均43.6±16.5歳)であった.不眠重症度(14.3→11.8,p=.004),抑うつ症状(12.0→10.2,p=.001),睡眠に関する非機能的な信念と態度(89.1→80.7,p=.002)が有意に改善した.プログラム参加の平均満足度は全ての回で8点台(10点満点)であった.感想としては「同じ悩みを持つ方々と悩みを共有できたことが安心というか一人じゃないと思えた」,「難しいストレッチでなくてもリラクセーション効果が感じられた」,「眠りをコントロールすることはできないと思っていたが,アロマや音楽を用いることで,眠れなかった日も気持ち良く過ごすおおらかさを身に付けられた」等が挙がった.また感想の上位抽出語(回数)としては,1回目は睡眠(24),参考(15),皆さん(8)等が,2回目は運動(31),時間(17),分かる(7)等が,3回目はリラックス(14),体験(12),五感(8)等が,4回目はストレッチ(23),取り入れる(11),呼吸(10)等が,修了後はありがとう(19),プログラム(16),参加(12)等が挙がった.
【考察】
本プログラムでは,不眠症状だけでなく,うつ症状の改善にも有用性が示された.また本プログラムでは参加者の相互学習,体験学習,及び得られた知見の実生活への般化を重視しており,参加者の感想からもこれらの介入要因がプログラムの有用性を高める一因になったことが示唆された.
作業療法は心身機能の回復はもちろん,患者の生活を構成する作業バランスの調整や作業を通した自己コントロール感の改善等を目的として介入し,その人らしい生活の再建を目指す治療である.以上より,実際に人や物,環境を活用した作業を体験学習する機会を作り,般化のための具体的な方法を試行錯誤するサポートを行なうのは作業療法士が持つ強みであり,睡眠問題への介入においてもそれが利点になる可能性が示唆された.