第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

発達障害

[OI-5] 一般演題:発達障害 5

2023年11月12日(日) 08:30 〜 09:30 第7会場 (会議場B3-4)

[OI-5-2] 協調運動の困難さがある神経発達症児の日常生活活動に対する集団作業療法の効果に関する予備的研究

東恩納 拓也1, 趙 吉春1, 中井 昭夫2, 岩永 竜一郎3 (1.東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科, 2.武庫川女子大学教育研究所/大学院臨床教育学研究科/子ども発達科学研究教育センター, 3.長崎大学生命医科学域)

【はじめに】神経発達症児に協調運動の困難さがみられやすく,発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder:DCD)は他の神経発達症と高頻度に併存することが明らかになっている.DCD児に対する介入では作業療法の効果が示され,活動や参加の改善に向けた介入が推奨されている.しかし,DCD児や協調運動の困難さがある神経発達症児の活動や参加に対する作業療法の効果については明らかになっていない.そこで,本研究では神経発達症児に対して集団作業療法を行い,神経発達症児の日常生活活動(Activity of Daily Living: ADL)に改善が認められるかについて明らかにすることを目的に予備的研究を実施した.
【方法】対象は放課後等デイサービスを利用する小学校低学年の児童と保護者とした.集団作業療法を受ける群(介入群)と受けない群(対照群)に対象者を振り分け,介入群5名(男児3名,女児2名:平均年齢6.80±0.84歳)と対照群5名(男児4名,女児1名:平均年齢7.00±0.71歳)を分析対象とした.介入群には週に1回,1回60分,2カ月間(計7回)の集団作業療法を実施した.集団作業療法の内容は,介入群の児童と保護者にとって「出来るようになりたい(なって欲しい)」「上手になりたい(なって欲しい)」運動に焦点を当て,身体機能指向型アプローチと活動指向型・参加指向型アプローチを組み合わせた活動を行った.効果指標には協調運動能力を評価するための質問紙であるDevelopmental Coordination Disorder Questionnaire日本語版(DCDQ日本語版)と,DCDのADLを評価するための質問紙であるDCDDailyQを使用した.集団作業療法の前後で全対象児の保護者が全ての質問紙に回答し,介入前後の群間比較および群内比較によって介入効果を検証した.統計解析にはSPSS Statistics 28を使用し,群間比較はMann-WhitneyのU検定,群内比較はWilcoxsonの符号付順位検定で分析した.本研究は筆頭演者所属機関の研究倫理委員会で承認を受け(SKE2022-05),対象児および保護者の同意を得て実施した.
【結果】介入前のDCDQ日本語版とDCDDailyQの得点に 2群間の有意差はみられなかったが,介入後において,介入群のDCDDailyQ「ADLへの参加」(p=.045)と「ADLの習得」(p=.046)が対照群より有意に困難度が低くなった.介入前後の比較では,対照群の質問紙の得点は介入前後で有意差がみられなかったが,介入群のDCDQ日本語版「動作における身体統制」が介入前より介入後で有意に改善した(p=.039).
【考察】介入後において,介入群のDCDDailyQ「ADLへの参加」と「ADLの習得」の困難度が対照群よりも有意に低くなったことから,集団作業療法が神経発達症児のADL改善に有効である可能性が示唆された.さらに,介入群において,介入前後でDCDQ日本語版の得点が有意に改善したため,集団作業療法が神経発達症児の協調運動能力の改善にも有効であり,ADLの改善に寄与した可能性も考えられる.今後,本研究成果を踏まえ,DCD児の活動と参加に対する作業療法の効果についてより詳細に検証していく必要がある.