[OJ-1-4] 要介護高齢者の作業ギャップの特徴と生活満足度の分類
【はじめに】
作業療法士は, 心身機能の低下の有無にかかわらず, 人々の参加を促し, 生活満足度の向上に寄与する専門職である. 要介護高齢者の参加を目的とした作業療法においては, 対象者が行いたいことと実際に行っていることとの間に生じる活動のギャップ(作業ギャップ)を把握することが重要である. 先行研究においては作業ギャップの数と生活満足度との関連が報告されているが, 日本人要介護高齢者の作業ギャップの特徴や生活満足度を系統的に分析した報告はなされていない.
【目的】
本研究では, 要介護高齢者の作業ギャップを評価し, その特徴を記述したうえで, どのような活動領域の作業ギャップが生活満足度を分類するかについて明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は, 要介護認定を受けて在宅で生活する要介護高齢者209人(平均年齢80.1±7.5歳, 男性42.1%)とした. 自己記入式質問票を用いたアンケートにより, 基本属性(年齢, 性別, 要介護度), 生活満足度, 作業ギャップを調査した. 作業ギャップの評価には日本語版作業ギャップ質問票(OGQ-J)を用いた. OGQ-Jは, 手段的日常生活活動(IADL), 余暇活動, 社会活動, 仕事および仕事に関連した活動の4領域における30の活動項目において「その活動を行っているか」「その活動を行いたいか」を尋ねる質問票である. OGQ-Jの回答結果によって各活動項目をそれぞれ4つの作業ギャップパターン(行っている・行いたい活動, 行っていない・行いたくない活動, 行っていない・行いたい活動, 行っている・行いたくない活動 )に分類し, 活動領域ごとに各作業ギャップパターンの数を算出した. 生活満足度を目的変数, 基本属性と各活動領域の作業ギャップパターンごとの活動数を説明変数とし, 決定木分析を行った. 本研究は倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者の約90%が「行っている・行いたい活動」として「テレビを観る, 動画や音楽を視聴する, ラジオを聴く」(90.0%)「情報を得る」(86.6%)を選択した. 「行っていない・行いたい活動」として対象者の約30~40%が選択した活動は「旅行」(38.8%)「文化活動への参加」(28.7%)「屋外活動への参加」(28.7%), 「行っている・行いたくない活動」として対象者の約10%が選択した活動は「洗濯」(11%)「掃除」(10%)であった. 生活満足度の回答結果では, 対象者の73.2%が満足群であった. 決定木分析の結果, 「行っている・行いたい社会活動」の数が3つ以上ある場合83%が満足群に分類され, 「行っている・行いたい社会活動」の数が2つ以下で「行っていない・行いたいIADL」の数が3つ以上ある場合72%が不満足群に分類された.
【考察】
OGQ-Jの調査結果から,要介護高齢者は身体的負担や社会的役割の少ない活動を「行いたい活動」と捉えていることが明らかになった. 作業ギャップである「行っていない・行いたい活動」は社会活動や余暇活動, 「行っている・行いたくない活動」はIADLに多くみられる傾向があることが明らかになった. 決定木分析の結果, 要介護高齢者が行いたい社会活動やIADLに参加することで良好な生活満足度に繋がる可能性が示された. 生活満足度を高めるためには,作業ギャップを減らすことも大切であるが, 対象者が行いたい活動を増やすことも重要であると考えられる.
作業療法士は, 心身機能の低下の有無にかかわらず, 人々の参加を促し, 生活満足度の向上に寄与する専門職である. 要介護高齢者の参加を目的とした作業療法においては, 対象者が行いたいことと実際に行っていることとの間に生じる活動のギャップ(作業ギャップ)を把握することが重要である. 先行研究においては作業ギャップの数と生活満足度との関連が報告されているが, 日本人要介護高齢者の作業ギャップの特徴や生活満足度を系統的に分析した報告はなされていない.
【目的】
本研究では, 要介護高齢者の作業ギャップを評価し, その特徴を記述したうえで, どのような活動領域の作業ギャップが生活満足度を分類するかについて明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は, 要介護認定を受けて在宅で生活する要介護高齢者209人(平均年齢80.1±7.5歳, 男性42.1%)とした. 自己記入式質問票を用いたアンケートにより, 基本属性(年齢, 性別, 要介護度), 生活満足度, 作業ギャップを調査した. 作業ギャップの評価には日本語版作業ギャップ質問票(OGQ-J)を用いた. OGQ-Jは, 手段的日常生活活動(IADL), 余暇活動, 社会活動, 仕事および仕事に関連した活動の4領域における30の活動項目において「その活動を行っているか」「その活動を行いたいか」を尋ねる質問票である. OGQ-Jの回答結果によって各活動項目をそれぞれ4つの作業ギャップパターン(行っている・行いたい活動, 行っていない・行いたくない活動, 行っていない・行いたい活動, 行っている・行いたくない活動 )に分類し, 活動領域ごとに各作業ギャップパターンの数を算出した. 生活満足度を目的変数, 基本属性と各活動領域の作業ギャップパターンごとの活動数を説明変数とし, 決定木分析を行った. 本研究は倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者の約90%が「行っている・行いたい活動」として「テレビを観る, 動画や音楽を視聴する, ラジオを聴く」(90.0%)「情報を得る」(86.6%)を選択した. 「行っていない・行いたい活動」として対象者の約30~40%が選択した活動は「旅行」(38.8%)「文化活動への参加」(28.7%)「屋外活動への参加」(28.7%), 「行っている・行いたくない活動」として対象者の約10%が選択した活動は「洗濯」(11%)「掃除」(10%)であった. 生活満足度の回答結果では, 対象者の73.2%が満足群であった. 決定木分析の結果, 「行っている・行いたい社会活動」の数が3つ以上ある場合83%が満足群に分類され, 「行っている・行いたい社会活動」の数が2つ以下で「行っていない・行いたいIADL」の数が3つ以上ある場合72%が不満足群に分類された.
【考察】
OGQ-Jの調査結果から,要介護高齢者は身体的負担や社会的役割の少ない活動を「行いたい活動」と捉えていることが明らかになった. 作業ギャップである「行っていない・行いたい活動」は社会活動や余暇活動, 「行っている・行いたくない活動」はIADLに多くみられる傾向があることが明らかになった. 決定木分析の結果, 要介護高齢者が行いたい社会活動やIADLに参加することで良好な生活満足度に繋がる可能性が示された. 生活満足度を高めるためには,作業ギャップを減らすことも大切であるが, 対象者が行いたい活動を増やすことも重要であると考えられる.