[OJ-1-5] 重度認知症高齢者が表出する非言語的サインの特徴
【はじめに】認知症者の作業ニーズやその背景を明らかにすることは作業療法介入の基本として取り組まれているが,認知症の病態や進行度により面接による作業ニーズの聞き取りは困難となる場合が多い.そのような認知症高齢者の作業ニーズを捉えるのに有効な手段として利用されるツールの一つに,「認知症高齢者の絵カード評価法(Assessment by the Picture Cards for the Elderly with Dementia;以下,APCD)」がある.APCDは,線画によるイラストと作業名が記載された70枚の絵カードで構成され,絵カードを通じて作業の文脈を聞き取る.APCDの使用にあたって,クライエントの語りを聞き出だせない場合には,非言語的なサインを注意深く観察する.しかし,認知症高齢者が表出する非言語的サインをどのように評価者が読み取っているのか十分に明らかにされておらず,その種類や内容の詳細についても報告はされていない.そこで本研究では,言語機能が低下した重度認知症高齢者が表出する非言語的サインにはどのようなものがあるのかを分析し,検討することとした.
【目的】APCD実施中の重度認知症高齢者が表出する非言語的サインにはどのようなものがあるのかを明らかにする.
【方法】対象者9名のAPCD実施場面の様子をアクションカメラで録画し,研究協力者に録画記録の視聴を依頼した.さらに,研究協力者に視聴した録画記録の中でみられる対象者の非言語的なサインについての意見を聴取し,その内容のカテゴリー化を行った.なお本研究は家族への同意を得ており,筆頭著者の所属する倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】分析の結果,頷きやジェスチャー,絵カードへの接触などの「身体動作の変化」,笑顔や目の見開きなどの「表情の変化」,セラピストや絵カードへ視線を向けるなどの「視線の変化」,発話速度や発話量,声質の変化などの「周辺言語の変化」,肯定的な発話や頷き,ジェスチャーによる素早い応答といった「応答のタイミングの変化」の5つのカテゴリーにまとまった.
【考察】本研究の結果と従来から指摘されている重度認知症高齢者の非言語的サインの概念を比較すると,その多くが類似していたが,従来にはない新たなサインとして「応答のタイミングの変化」が生成された.また,「表情の変化」や「視線の変化」でみられる目元を中心とした変化は,本研究の対象者全員に共通して見られたことから,重度認知症高齢者とのコミュニケーションにおいて特に注目すべき非言語的なサインであると考えられた.これらの非言語的なサインの種類や特徴を踏まえることで,APCDは重度認知症高齢者の作業ニーズを捉える有効な手段となる可能性が示唆された.
【目的】APCD実施中の重度認知症高齢者が表出する非言語的サインにはどのようなものがあるのかを明らかにする.
【方法】対象者9名のAPCD実施場面の様子をアクションカメラで録画し,研究協力者に録画記録の視聴を依頼した.さらに,研究協力者に視聴した録画記録の中でみられる対象者の非言語的なサインについての意見を聴取し,その内容のカテゴリー化を行った.なお本研究は家族への同意を得ており,筆頭著者の所属する倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】分析の結果,頷きやジェスチャー,絵カードへの接触などの「身体動作の変化」,笑顔や目の見開きなどの「表情の変化」,セラピストや絵カードへ視線を向けるなどの「視線の変化」,発話速度や発話量,声質の変化などの「周辺言語の変化」,肯定的な発話や頷き,ジェスチャーによる素早い応答といった「応答のタイミングの変化」の5つのカテゴリーにまとまった.
【考察】本研究の結果と従来から指摘されている重度認知症高齢者の非言語的サインの概念を比較すると,その多くが類似していたが,従来にはない新たなサインとして「応答のタイミングの変化」が生成された.また,「表情の変化」や「視線の変化」でみられる目元を中心とした変化は,本研究の対象者全員に共通して見られたことから,重度認知症高齢者とのコミュニケーションにおいて特に注目すべき非言語的なサインであると考えられた.これらの非言語的なサインの種類や特徴を踏まえることで,APCDは重度認知症高齢者の作業ニーズを捉える有効な手段となる可能性が示唆された.