[OK-3-4] 施設入所認知症高齢者のQOLに活動・参加が及ぼす影響の検討
【背景と目的】
認知症は,進行性で不可逆的な認知機能低下と生活障害を引き起こす.そのため,認知症高齢者に対する支援は認知症症状を有しつつも生活の質(QOL)をいかに高めるかに主眼が置かれる.先行研究では,認知症高齢者のQOLに関与する因子として,認知機能,ADL自立度,鬱病の診断,周辺症状(BPSD),痛みなどが報告されている.世界保健機関(WHO)は活動・参加の機会をもつことが人々のQOL向上に繋がると提言しているが,認知症高齢者のQOLと活動・参加の関係についての検証は少ない.今回,施設入所認知症高齢者のQOLに対して,これまでに報告されている因子を含め,活動・参加の影響を検討することを目的とした.
【対象】
A県内にある介護施設に入所中の認知症高齢者を対象とした.包含基準は,65歳以上,Mini Mental State Examination(MMSE)10~23点.除外基準は,失語症を合併している者とした.対象者の家族にインフォームドコンセントをとり,対象者本人からは,インフォームドアセントを得た.
【方法】
研究デザインは横断研究とした.QOL尺度は Quality of Life in Alzheimer’s Disease(QOL-AD)を用い,主観的および客観的QOLを評価した.施設勤務の作業療法士により主観的QOLを聴取し,介護職員により客観的QOLを評価した.活動・参加はActivity Card Sort-Japan Version(ACS-JPN)を用いて現在行っている活動・参加の項目数(全72項目)を測定した.また,認知機能(MMSE),ADL自立度(Barthel Index;BI),BPSD(NPI-NH),痛み(NRS)に加え,握力,意欲(Vitality Index;VI)を評価した.分析は,相関分析により多重共線性の影響がある変数を除外した後,重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,QOLと各変数の関係を調査した.従属変数はQOL-AD,独立変数はACS-JPN,MMSE,BI,NPI-NH,NRS,握力,意欲,年齢とした.なお,本研究は日本福祉大学「人を対象とする研究」に関する倫理委員会で承認された上で実施した(承認番号:21-009).
【結果】
34名(年齢:86.2±6.3歳,男性10名・女性24名,MMSE:15.5±3.5点)の対象者がリクルートされた.鬱病の診断がある者はいなかった.相関分析から,|r|>0.9となるような変数は存在しなかったため,すべての変数を対象とした.重回帰分析の結果,主観的QOLにはACS-JPN(β=0.528,p<0.001),NPI-NH(β=-0.311,p=0.036)が有意に関係していた(R2=0.518).一方,客観的QOLにはNPI-NH(β=-0.471,p<0.001),ACS-JPN(β=0.442,p=0.002),が有意に関係していた(R2=0.612).いずれも残差は正規分布し,多重共線性の影響は認められなかった.
【考察】
本研究の結果から,行っている活動・参加の項目数が増え,BPSDが減少すると主観的および客観的QOLが向上することが明らかとなった.活動・参加機会を増加させる作業療法介入や,施設での過ごし方を検討することの重要性が示唆された.客観的QOLでよりBPSDの影響度が高かった理由としては,評価者である介護職員の介護負担感が影響を及ぼしていることが推測された.本研究では,行っている活動・参加の項目数を量的に分析した.対象者にとって重要な活動・参加への従事の有無,作業バランスがQOLへ関与していることも予測されるため,更なる検討が必要である.
認知症は,進行性で不可逆的な認知機能低下と生活障害を引き起こす.そのため,認知症高齢者に対する支援は認知症症状を有しつつも生活の質(QOL)をいかに高めるかに主眼が置かれる.先行研究では,認知症高齢者のQOLに関与する因子として,認知機能,ADL自立度,鬱病の診断,周辺症状(BPSD),痛みなどが報告されている.世界保健機関(WHO)は活動・参加の機会をもつことが人々のQOL向上に繋がると提言しているが,認知症高齢者のQOLと活動・参加の関係についての検証は少ない.今回,施設入所認知症高齢者のQOLに対して,これまでに報告されている因子を含め,活動・参加の影響を検討することを目的とした.
【対象】
A県内にある介護施設に入所中の認知症高齢者を対象とした.包含基準は,65歳以上,Mini Mental State Examination(MMSE)10~23点.除外基準は,失語症を合併している者とした.対象者の家族にインフォームドコンセントをとり,対象者本人からは,インフォームドアセントを得た.
【方法】
研究デザインは横断研究とした.QOL尺度は Quality of Life in Alzheimer’s Disease(QOL-AD)を用い,主観的および客観的QOLを評価した.施設勤務の作業療法士により主観的QOLを聴取し,介護職員により客観的QOLを評価した.活動・参加はActivity Card Sort-Japan Version(ACS-JPN)を用いて現在行っている活動・参加の項目数(全72項目)を測定した.また,認知機能(MMSE),ADL自立度(Barthel Index;BI),BPSD(NPI-NH),痛み(NRS)に加え,握力,意欲(Vitality Index;VI)を評価した.分析は,相関分析により多重共線性の影響がある変数を除外した後,重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,QOLと各変数の関係を調査した.従属変数はQOL-AD,独立変数はACS-JPN,MMSE,BI,NPI-NH,NRS,握力,意欲,年齢とした.なお,本研究は日本福祉大学「人を対象とする研究」に関する倫理委員会で承認された上で実施した(承認番号:21-009).
【結果】
34名(年齢:86.2±6.3歳,男性10名・女性24名,MMSE:15.5±3.5点)の対象者がリクルートされた.鬱病の診断がある者はいなかった.相関分析から,|r|>0.9となるような変数は存在しなかったため,すべての変数を対象とした.重回帰分析の結果,主観的QOLにはACS-JPN(β=0.528,p<0.001),NPI-NH(β=-0.311,p=0.036)が有意に関係していた(R2=0.518).一方,客観的QOLにはNPI-NH(β=-0.471,p<0.001),ACS-JPN(β=0.442,p=0.002),が有意に関係していた(R2=0.612).いずれも残差は正規分布し,多重共線性の影響は認められなかった.
【考察】
本研究の結果から,行っている活動・参加の項目数が増え,BPSDが減少すると主観的および客観的QOLが向上することが明らかとなった.活動・参加機会を増加させる作業療法介入や,施設での過ごし方を検討することの重要性が示唆された.客観的QOLでよりBPSDの影響度が高かった理由としては,評価者である介護職員の介護負担感が影響を及ぼしていることが推測された.本研究では,行っている活動・参加の項目数を量的に分析した.対象者にとって重要な活動・参加への従事の有無,作業バランスがQOLへ関与していることも予測されるため,更なる検討が必要である.