[ON-1-4] 子どもの身体的・心理的素養を育成するプログラムの開発
【はじめに】近年,小学校の部活動やスポーツ少年団の廃止に伴い身体を動かす機会や環境が狭小・限定化されつつある.そのためスポーツ庁は,地域住民により自主的に運営される総合型地域スポーツクラブ(以下,総合型クラブ)を推進している.しかし,指導者不足をはじめとする様々な課題を抱えており,地域格差が生じている.そこで,総合型クラブの質的充実を図っていくために産学官民で連携し,子どもが生涯にわたり運動・スポーツを楽しむための身体的・心理的素養を育成する感覚運動遊びプログラムを開発した.
【目的】本研究の目的は,開発したプログラムの効果検証を行うこと,そして,産学官民連携による総合型クラブの支援において作業療法士(以下,OT)が参画する際の介入糸口を図ることである.
【対象】対象は総合型クラブに所属している小学校1~6年生までの男女とした.参加者募集は自治体,教育委員会,総合型クラブと協力して行った.
【方法】今回開発したプログラムは,スポーツ競技・運動指導の専門家である陸上競技のオリンピアン,日本陸上競技オリンピック強化コーチ,そして,小児発達領域支援を専門とするOTの3者がコラボレーションして独自の感覚運動遊びプログラムを開発した.このプログラムは,走る・跳ぶ・投げる・協調の4つのファクターがあり合計20種目ある.対象者に1回約40分間,週2回,5週間内に10回実施してもらった.実施する種目選択は自由とした.ただし,1回に必ず各ファクターから2種目以上を選択し合計10種目以上を実施してもらった.プログラム開発者が対象者・保護者・指導者に対して事前のレクチャーを実施した.その後,実施する際にはSNSの動画配信サービスアプリを利用して本プログラムの模範実施動画を見ながら正しいやり方で実施してもらった.実施前後の測定項目は,握力,30m走,ハンドボール投げ,立ち幅跳び,反復横跳び,長座体前屈,足の開閉(ケンパ),膝の位置覚,閉眼片足立ち,ゴム紐くぐり,自己効力感の11項目とした.これらの分析はウィルコクソン符号付順位検定にて前後比較を行った.統計ソフトはIBM SPSSVer.28を用いた.本研究は筆者および共同研究者の所属する大学の研究倫理審査の承認を共に得て,対象者ならびに保護者への説明と両者からの同意を得て実施した.
【結果】本研究への参加者総数は25名であったが測定日当日の欠席・早退者を除いた最終的な対象者は,平均年齢10.1±1.6歳の男児12名,女児8名の合計20名となった.身体的・心理的効果について実施前後で比較したところ,30m走,膝の位置覚,閉眼片足立ち,ゴム紐くぐり,自己効力感の5項目において有意差を認め向上した(p<0.01).他の6項目においては有意差が見られなかった.
【考察】結果より,身体面ではダッシュ力,固有受容感覚,運動の切り替えの能力が向上し,心理面では自己効力感が向上した.つまり,短期的効用として体を上手く動かす能力である協調運動・コーディネーション能力と自己効力感が向上することが示唆された.また効用を示すことができた測定項目はOTが小児リハビリ等の評価として用いるものであった.すなわち,小学校で定期的に行われている新体力テストのデータだけでは効果を見逃してしまう可能性もあったと思われる.総合型クラブの支援においてOTの感覚統合遊びのアイディアや評価の知識・技術は,他職種からすると斬新的であり,求めていた評価視点であった.OTが持つ小児発達領域の専門性は,学童期における総合型クラブ活動を支援する際の介入糸口になると考える.
【目的】本研究の目的は,開発したプログラムの効果検証を行うこと,そして,産学官民連携による総合型クラブの支援において作業療法士(以下,OT)が参画する際の介入糸口を図ることである.
【対象】対象は総合型クラブに所属している小学校1~6年生までの男女とした.参加者募集は自治体,教育委員会,総合型クラブと協力して行った.
【方法】今回開発したプログラムは,スポーツ競技・運動指導の専門家である陸上競技のオリンピアン,日本陸上競技オリンピック強化コーチ,そして,小児発達領域支援を専門とするOTの3者がコラボレーションして独自の感覚運動遊びプログラムを開発した.このプログラムは,走る・跳ぶ・投げる・協調の4つのファクターがあり合計20種目ある.対象者に1回約40分間,週2回,5週間内に10回実施してもらった.実施する種目選択は自由とした.ただし,1回に必ず各ファクターから2種目以上を選択し合計10種目以上を実施してもらった.プログラム開発者が対象者・保護者・指導者に対して事前のレクチャーを実施した.その後,実施する際にはSNSの動画配信サービスアプリを利用して本プログラムの模範実施動画を見ながら正しいやり方で実施してもらった.実施前後の測定項目は,握力,30m走,ハンドボール投げ,立ち幅跳び,反復横跳び,長座体前屈,足の開閉(ケンパ),膝の位置覚,閉眼片足立ち,ゴム紐くぐり,自己効力感の11項目とした.これらの分析はウィルコクソン符号付順位検定にて前後比較を行った.統計ソフトはIBM SPSSVer.28を用いた.本研究は筆者および共同研究者の所属する大学の研究倫理審査の承認を共に得て,対象者ならびに保護者への説明と両者からの同意を得て実施した.
【結果】本研究への参加者総数は25名であったが測定日当日の欠席・早退者を除いた最終的な対象者は,平均年齢10.1±1.6歳の男児12名,女児8名の合計20名となった.身体的・心理的効果について実施前後で比較したところ,30m走,膝の位置覚,閉眼片足立ち,ゴム紐くぐり,自己効力感の5項目において有意差を認め向上した(p<0.01).他の6項目においては有意差が見られなかった.
【考察】結果より,身体面ではダッシュ力,固有受容感覚,運動の切り替えの能力が向上し,心理面では自己効力感が向上した.つまり,短期的効用として体を上手く動かす能力である協調運動・コーディネーション能力と自己効力感が向上することが示唆された.また効用を示すことができた測定項目はOTが小児リハビリ等の評価として用いるものであった.すなわち,小学校で定期的に行われている新体力テストのデータだけでは効果を見逃してしまう可能性もあったと思われる.総合型クラブの支援においてOTの感覚統合遊びのアイディアや評価の知識・技術は,他職種からすると斬新的であり,求めていた評価視点であった.OTが持つ小児発達領域の専門性は,学童期における総合型クラブ活動を支援する際の介入糸口になると考える.