[ON-6-4] 高齢者にやさしい都市環境の構築における作業療法士の潜在的な役割
【はじめに】世界で高齢化と都市化が進む中で,高齢者にとって住みやすい都市環境の構築が求められてきており,よりその様相が顕著な日本においても,高齢者に適した都市環境の構築は喫緊の課題といえる.作業療法分野においては地域を対象とした実践が着目されてきており,作業的公正や作業的可能性の観点から高齢者の作業に影響を及ぼし得る都市環境に対して何らかの貢献をすることが作業療法士の役割であると考えられる.高齢者に適した都市環境の構築に焦点を当てた作業療法における報告は非常に少なく,その構築における作業療法士の役割も明確にはされていない.また報告されている少数の文献では作業療法士や作業科学者の視点からのみ言及されており,その実践に関与する関係者の視点は含まれていない.そこで本研究では作業療法士やそれ以外の関係者の視点から,日本での高齢者に適した都市環境の構築における作業療法士の潜在的な役割を探索した.
【方法】高齢者に適した都市環境の構築に関する実践を行った経験や知識を有する作業療法士や作業療法士と協働した経験を持つその他の職種の関係者を目的的サンプリングによって募集し,Q-methodologyによる調査を次の4つの段階を通して実施した.まず文献レビュー,国内外の専門家へのアンケート,プレテストの3段階を経て当該領域における作業療法士の役割について示した項目カードを作成した.次に対象者に対して自身の主観に応じてカードを専用のシートに配置することを求めた.次いで専用の統計ソフトを用いた主成分分析とそれに続くバリマックス回転から対象者の項目カードの配置の類似性を分析した.最後に抽出された因子とその因子を構成する項目カードの内容から,各因子に所属する対象者によって共有された視点の内容を解釈した.なお本研究は研究者が所属する研究機関の研究倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号:19015).
【結果】対象者は8名の作業療法士と7名の関係者の計15名であった.分析の結果,当該領域における作業療法士の役割として,日本での高齢者に適した都市環境の構築における作業療法の役割として,地域での日常生活活動における高齢者の参加を促進させる(視点1),高齢者の作業上のニーズや視点を反映した政策立案に向けて高齢者を擁護する(視点2),機能的な制限を補うための調整を通して作業への参加を促進するための近隣環境を整える(視点3)の3つの視点が得られた.
【考察】本研究によって得られた3つの視点は,国内外の先行研究やその他の文献において着目されてきた作業療法士の役割に関する提言とのいくつかの一致点が認められた.これらの3つの視点によって示された役割は,その対象レベルが個人からシステム政策レベルにまたがっている点や,地域の作業に焦点を当てている点において,地域を対象とした作業療法実践の概念化に向けた先行研究と一致している点が見られた.本研究の結果は対象者の主観に依るものはあるが,日本において作業療法士が高齢者に適した都市環境の構築に向けた実践を検討する上での基礎資料になりうると考えられる.
【方法】高齢者に適した都市環境の構築に関する実践を行った経験や知識を有する作業療法士や作業療法士と協働した経験を持つその他の職種の関係者を目的的サンプリングによって募集し,Q-methodologyによる調査を次の4つの段階を通して実施した.まず文献レビュー,国内外の専門家へのアンケート,プレテストの3段階を経て当該領域における作業療法士の役割について示した項目カードを作成した.次に対象者に対して自身の主観に応じてカードを専用のシートに配置することを求めた.次いで専用の統計ソフトを用いた主成分分析とそれに続くバリマックス回転から対象者の項目カードの配置の類似性を分析した.最後に抽出された因子とその因子を構成する項目カードの内容から,各因子に所属する対象者によって共有された視点の内容を解釈した.なお本研究は研究者が所属する研究機関の研究倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号:19015).
【結果】対象者は8名の作業療法士と7名の関係者の計15名であった.分析の結果,当該領域における作業療法士の役割として,日本での高齢者に適した都市環境の構築における作業療法の役割として,地域での日常生活活動における高齢者の参加を促進させる(視点1),高齢者の作業上のニーズや視点を反映した政策立案に向けて高齢者を擁護する(視点2),機能的な制限を補うための調整を通して作業への参加を促進するための近隣環境を整える(視点3)の3つの視点が得られた.
【考察】本研究によって得られた3つの視点は,国内外の先行研究やその他の文献において着目されてきた作業療法士の役割に関する提言とのいくつかの一致点が認められた.これらの3つの視点によって示された役割は,その対象レベルが個人からシステム政策レベルにまたがっている点や,地域の作業に焦点を当てている点において,地域を対象とした作業療法実践の概念化に向けた先行研究と一致している点が見られた.本研究の結果は対象者の主観に依るものはあるが,日本において作業療法士が高齢者に適した都市環境の構築に向けた実践を検討する上での基礎資料になりうると考えられる.