[OP-3-2] MRガイド下集束超音波治療を施行した本態性振戦症例のAMPSを用いたADL分析
【はじめに】本態性振戦(Essential tremor:ET)は不随意運動の一種で,通常両側上肢に出現するため,日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)に多大な影響を及ぼす.当院では薬物治療で改善しないETに対してMRガイド下集束超音波治療(MR-guided Focused Ultrasound Surgery:FUS)による片側の視床凝固術を行っており,治療によるADL改善効果はAssessment of Motor and Process Skills(AMPS)を用いて評価している.
【目的】FUSで振戦が軽減することによるADLの改善をAMPSにて評価し,その定量値を用いて改善の背景を詳細に検討する.
【方法】FUS前後にAMPSを施行したET症例,51歳から82歳の男性5例,女性4例の計9例(利き手は全例右,治療対象も全例右手).AMPS評価は認定資格者である当院OTの2名が患者を分担し,患者の難渋しているADL課題の中から2つを選択して施行した.各課題ごとに16の運動技能(motor skill)項目,および20のプロセス技能(process skill)項目を4段階で採点し,この数値を多相Raschモデルに基づく専用ソフトウェアに入力する.統計処理された結果はMotor Logit値(ML),Process Logit値(PL)として分けて算出される.得られた各Logit値は介助の必要性から「ADL能力値」,また改善度の指標として「FUS前後のLogit変化量」に注目して,前者は要介助/要援助/自立,後者は変化なし/臨床上変化あり/統計学的有意な改善あり,に各々三分類した.なお,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得ており,開示すべきCOIはない.
【結果】全9例中,「ADL能力値」のMLは術前に要介助7例/要援助2例/自立0例,術後は要介助3例/要援助5例/自立1例となった.PLは術前に要介護6例/要援助2例/自立1例,術後は要介助1例/要援助1例/自立7例となった.「FUS前後のLogit変化量」のMLでは,変化なし2例/臨床上変化あり4例/統計学的有意な改善あり3例であったのに対し,PLは変化なし0例/臨床上変化あり1例/統計学的有意な改善あり8例となった.これらの結果から介助の必要性,改善度の観点からみても,MLよりPLの改善がより顕著であった.
【考察】 AMPSのmotor skillは動作の「ぎこちなさ」,process skillは「効率性の良さ」を反映するものである.利き手が右の場合,術前は課題遂行の補助を左手で行うため動作全体の効率を妨げていたが,術後は右手の振戦が軽減し,動作の主体が右手になったことに加え,左手の補助が最小限となり動作の効率性・質が向上したと考えられる.また,左手は未治療であること,右手も治療後も振戦が軽度に残存する場合があることから,動作は完遂可能だが「ぎこちなさ」が反映されることによりmotor skillの向上に繋がらない症例があったと考えた.しかしそうした症例でもprocess skillの有意な改善を認めているため,環境調整や自助具の導入など代償を行うことでmotor skillの補完による更なるADL改善が可能と思われた.
結論としてFUSによるADL改善はmotor skillの改善要素よりも,process skillの改善が優位に影響していることが示唆された.
【目的】FUSで振戦が軽減することによるADLの改善をAMPSにて評価し,その定量値を用いて改善の背景を詳細に検討する.
【方法】FUS前後にAMPSを施行したET症例,51歳から82歳の男性5例,女性4例の計9例(利き手は全例右,治療対象も全例右手).AMPS評価は認定資格者である当院OTの2名が患者を分担し,患者の難渋しているADL課題の中から2つを選択して施行した.各課題ごとに16の運動技能(motor skill)項目,および20のプロセス技能(process skill)項目を4段階で採点し,この数値を多相Raschモデルに基づく専用ソフトウェアに入力する.統計処理された結果はMotor Logit値(ML),Process Logit値(PL)として分けて算出される.得られた各Logit値は介助の必要性から「ADL能力値」,また改善度の指標として「FUS前後のLogit変化量」に注目して,前者は要介助/要援助/自立,後者は変化なし/臨床上変化あり/統計学的有意な改善あり,に各々三分類した.なお,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得ており,開示すべきCOIはない.
【結果】全9例中,「ADL能力値」のMLは術前に要介助7例/要援助2例/自立0例,術後は要介助3例/要援助5例/自立1例となった.PLは術前に要介護6例/要援助2例/自立1例,術後は要介助1例/要援助1例/自立7例となった.「FUS前後のLogit変化量」のMLでは,変化なし2例/臨床上変化あり4例/統計学的有意な改善あり3例であったのに対し,PLは変化なし0例/臨床上変化あり1例/統計学的有意な改善あり8例となった.これらの結果から介助の必要性,改善度の観点からみても,MLよりPLの改善がより顕著であった.
【考察】 AMPSのmotor skillは動作の「ぎこちなさ」,process skillは「効率性の良さ」を反映するものである.利き手が右の場合,術前は課題遂行の補助を左手で行うため動作全体の効率を妨げていたが,術後は右手の振戦が軽減し,動作の主体が右手になったことに加え,左手の補助が最小限となり動作の効率性・質が向上したと考えられる.また,左手は未治療であること,右手も治療後も振戦が軽度に残存する場合があることから,動作は完遂可能だが「ぎこちなさ」が反映されることによりmotor skillの向上に繋がらない症例があったと考えた.しかしそうした症例でもprocess skillの有意な改善を認めているため,環境調整や自助具の導入など代償を行うことでmotor skillの補完による更なるADL改善が可能と思われた.
結論としてFUSによるADL改善はmotor skillの改善要素よりも,process skillの改善が優位に影響していることが示唆された.