[OP-3-4] 健常成人における感覚処理特性と自律神経機能および自閉症傾向・気分状態との関連性
【はじめに】
感覚刺激に対する反応傾向である感覚処理特性は自閉スペクトラム症において大きく偏りがあるとされ,感覚処理障害児や自閉スペクトラム症児は安静時や感覚刺激暴露時の副交感神経活動が低いことが報告されている.また,感覚処理特性は精神疾患を有する方にも広く偏りがあるとされ,精神疾患を有する方の副交感神経機能の低下と関連していることが考えられる.しかし,これらの精神疾患を有する方の副交感神経機能には,精神症状や薬物治療による影響があり,感覚処理特性との関連性の検証には限界がある.そこで本研究では,健常成人を対象として感覚処理特性と副交感神経機能および自閉症特性,気分状態との関連を調査した.
【目的】
本研究の目的は,健常成人を対象として感覚処理特性と副交感神経活動の指標である呼吸性洞性不整脈(respiratory sinus arrhythmia: RSA)および自閉症特性,気分状態との関連を明らかにすることである.
【方法】
本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得て,事前に十分な説明を行い文書にて同意が得られた健常成人39名(男性20名,女性19名,21.6±0.3歳)を対象に,青年/成人感覚プロファイル(Adolescent/Adult Sensory Profile: A/ASP),Sensory Challenge Protocol(SCP)実施時のRSA計測,自閉症スペクトラム指数(Autism spectrum Quotient: AQ),Profile Of Mood States 2nd Edition(POMS2)を実施した.RSAの計測には携帯型脈波測定装置Polypul (PCG)Ⅱ(ニホンサンテク)を使用し,POMS2では過去1週間の持続する感情状態について尋ねた.解析では,まずAASPの基準に従って感覚過敏または感覚回避の特性が「高い」「非常に高い」と評価される対象者を低閾値群,上記に該当しない対象者を統制群とした.次に,2群間でSCP中のRSA値と,各感覚刺激のRSA値から安静時のRSA値を除した値を対応の無いt検定で比較した.さらに,全対象者における安静時のRSA値とAQおよびPOMS2の各スコア間でPearsonの相関係数を求めた.
【結果】
AASPの結果に基づいた分類では,低閾値群が19名(男性10名,女性9名,22.0±0.5歳,感覚過敏46.5±1.4,感覚回避45.1±1.5),統制群は20名(男性10名,女性10名,21.2±0.5歳,感覚過敏33.5±1.3,感覚回避32.6±1.4)であった.2群間での比較では,SCP中の安静時および各感覚刺激時のいずれにおいても低閾値群の方が統制群よりも有意にRSA値が低かった(p<0.01).また,各感覚刺激のRSA値から安静時のRSA値を除した値は,前庭および聴覚刺激において低閾値群の方が統制群よりも有意に大きかった(前庭p=0.03,聴覚p=0.02).加えて,安静時のRSA値とAQの社会的スキルとの間に有意な相関をみとめた(r=-0.4,p=0.01).
【考察】
本研究では,感覚閾値が低い傾向にある人は,そうでない人と比べて安静時および感覚刺激課題中のRSA値が継続して低い状態にあることが示された.また,RSA値は対人機能を反映する指標と関連があることが分かった.Polyvagal理論では,副交感神経である迷走神経には社会的行動に関与する腹側迷走神経と,原始的な防衛的行動に関与する背側迷走神経の2種類があり,RSAは前者を反映するとされる.よって,感覚刺激に対する閾値が低い傾向にある人は常態的にRSAが低い状態にあり,RSAと関連する対人機能スキルに問題を抱えやすい傾向にあることが示唆された.
感覚刺激に対する反応傾向である感覚処理特性は自閉スペクトラム症において大きく偏りがあるとされ,感覚処理障害児や自閉スペクトラム症児は安静時や感覚刺激暴露時の副交感神経活動が低いことが報告されている.また,感覚処理特性は精神疾患を有する方にも広く偏りがあるとされ,精神疾患を有する方の副交感神経機能の低下と関連していることが考えられる.しかし,これらの精神疾患を有する方の副交感神経機能には,精神症状や薬物治療による影響があり,感覚処理特性との関連性の検証には限界がある.そこで本研究では,健常成人を対象として感覚処理特性と副交感神経機能および自閉症特性,気分状態との関連を調査した.
【目的】
本研究の目的は,健常成人を対象として感覚処理特性と副交感神経活動の指標である呼吸性洞性不整脈(respiratory sinus arrhythmia: RSA)および自閉症特性,気分状態との関連を明らかにすることである.
【方法】
本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得て,事前に十分な説明を行い文書にて同意が得られた健常成人39名(男性20名,女性19名,21.6±0.3歳)を対象に,青年/成人感覚プロファイル(Adolescent/Adult Sensory Profile: A/ASP),Sensory Challenge Protocol(SCP)実施時のRSA計測,自閉症スペクトラム指数(Autism spectrum Quotient: AQ),Profile Of Mood States 2nd Edition(POMS2)を実施した.RSAの計測には携帯型脈波測定装置Polypul (PCG)Ⅱ(ニホンサンテク)を使用し,POMS2では過去1週間の持続する感情状態について尋ねた.解析では,まずAASPの基準に従って感覚過敏または感覚回避の特性が「高い」「非常に高い」と評価される対象者を低閾値群,上記に該当しない対象者を統制群とした.次に,2群間でSCP中のRSA値と,各感覚刺激のRSA値から安静時のRSA値を除した値を対応の無いt検定で比較した.さらに,全対象者における安静時のRSA値とAQおよびPOMS2の各スコア間でPearsonの相関係数を求めた.
【結果】
AASPの結果に基づいた分類では,低閾値群が19名(男性10名,女性9名,22.0±0.5歳,感覚過敏46.5±1.4,感覚回避45.1±1.5),統制群は20名(男性10名,女性10名,21.2±0.5歳,感覚過敏33.5±1.3,感覚回避32.6±1.4)であった.2群間での比較では,SCP中の安静時および各感覚刺激時のいずれにおいても低閾値群の方が統制群よりも有意にRSA値が低かった(p<0.01).また,各感覚刺激のRSA値から安静時のRSA値を除した値は,前庭および聴覚刺激において低閾値群の方が統制群よりも有意に大きかった(前庭p=0.03,聴覚p=0.02).加えて,安静時のRSA値とAQの社会的スキルとの間に有意な相関をみとめた(r=-0.4,p=0.01).
【考察】
本研究では,感覚閾値が低い傾向にある人は,そうでない人と比べて安静時および感覚刺激課題中のRSA値が継続して低い状態にあることが示された.また,RSA値は対人機能を反映する指標と関連があることが分かった.Polyvagal理論では,副交感神経である迷走神経には社会的行動に関与する腹側迷走神経と,原始的な防衛的行動に関与する背側迷走神経の2種類があり,RSAは前者を反映するとされる.よって,感覚刺激に対する閾値が低い傾向にある人は常態的にRSAが低い状態にあり,RSAと関連する対人機能スキルに問題を抱えやすい傾向にあることが示唆された.