[PA-1-14] Covid-19による隔離期間に自主練習と短時間のOT介入により上肢機能の向上を認めた脳卒中患者2例
【はじめに】Covid-19の院内感染により個室隔離となった脳卒中患者に対し,隔離期間の自主練習と短時間のOT介入により,上肢機能の向上を認めた2症例を報告する.なお報告にあたり家族と本人に口頭と文章で説明を行い同意を得た.
【症例】症例1:40代男性,右手利き,脳梗塞,第17病日当院転院(X日).軽度の右片麻 痺,構音障害を認めた.ADL自立. 症例2:60代男性,右手利き,脳梗塞,第13病日当院転院(X+1日).軽度の右片麻痺,右上下肢の感覚障害,失語を認めた.ADL自立.
【経過】両者とも同部屋に入院していた.X+21日に同室者が陽性となり当院の感染症病棟
へ転棟.濃厚接触者として部屋で隔離対応となったが,X+23日に両者とも陽性となった.感染症病棟満床のため,回復期病棟でゾーニングを行ない個室隔離となった.
【リハビリテーション介入】両者とも症状は軽度であった為,感染対策を講じ介入するこ
ととした.感染対策として,Full PPE,介入するスタッフの人数,時間を制限することと した.感染対策により積極的な介入は困難なため,自主練習の提供,生活場面での麻痺側
上肢の使用を促した.OT介入時には自主練習へのフィードバック,回数や方法の調整等
を行った.また,不満や不安の傾聴など,精神面のケアも行なった.また,物品は使用後
廃棄できるものや症例の私物等を利用した.
【上肢機能評価】隔離数日前に実施した上肢機能検査を隔離後に実施し比較,検討した.
緊急隔離となったため,検査項目は異なっている.症例1(隔離3日前),FMA:61/66,WMFT:43.62,WMFT-FAS:64,STEF:57,MAL-AOU:3.81,MAL-QOM:3.18
症例2(隔離2日前),FMA:49/66,STEF:59
【結果】10日間の隔離後隔離介助となった.介入したスタッフへの感染も認めなかった. 隔離解除後に実施した上肢機能検査の結果は症例1,FMA:63/66,WMFT:34.28,WMFT-FAS:71,STEF:82,MAL-AOU:4.0,MAL-QOM:3.3
症例2,FMA:59/66,STEF:86となり全検査で向上を認めた.
【考察】両者ともSTEFでの得点の向上が大きく,症例2はFMAでもMCIDの9~10点を上回った.両者とも麻痺が軽度であり,他の検査では得点の変動が少なかったと考えられる.上肢機能の改善には練習量が重要な要素となるといわれており,自主練習の量を確保できたことで上肢機能が向上したと考えられた.また,OTでは直接的な介入が制限されたため,自主練習の内容と量の調整,モチベーションの維持,ストレス緩和など,自主練習のマネジメントを中心に介入した.竹林は「作業療法士は,対象者やその家族が主体的に動くことが出来るように,様々な手法を用いて,自主練習時間をマネジメントする事は必須となる」と述べており(竹林崇,2018),自主練習時間をマネジメントできたことでより効果的に自主練習を行えたと考えられた.
自主練習については「最初はイライラしたが,自主トレを渡されてやる気になった」とい った感想があり,OTの介入について「短い時間でも来てくれることに意味がある」など の肯定的な感想を得られ,隔離期間の自主練習やOT介入の精神面への効果も示唆された.
【報告の限界】両症例とも発症後約1月で麻痺が軽度であり,上肢機能の予後は良好と考えられたため,自然回復の可能性は否定できない.しかし,緊急時で介入が制限された状況でもOTの介入する意義はあったと考えられた.
【症例】症例1:40代男性,右手利き,脳梗塞,第17病日当院転院(X日).軽度の右片麻 痺,構音障害を認めた.ADL自立. 症例2:60代男性,右手利き,脳梗塞,第13病日当院転院(X+1日).軽度の右片麻痺,右上下肢の感覚障害,失語を認めた.ADL自立.
【経過】両者とも同部屋に入院していた.X+21日に同室者が陽性となり当院の感染症病棟
へ転棟.濃厚接触者として部屋で隔離対応となったが,X+23日に両者とも陽性となった.感染症病棟満床のため,回復期病棟でゾーニングを行ない個室隔離となった.
【リハビリテーション介入】両者とも症状は軽度であった為,感染対策を講じ介入するこ
ととした.感染対策として,Full PPE,介入するスタッフの人数,時間を制限することと した.感染対策により積極的な介入は困難なため,自主練習の提供,生活場面での麻痺側
上肢の使用を促した.OT介入時には自主練習へのフィードバック,回数や方法の調整等
を行った.また,不満や不安の傾聴など,精神面のケアも行なった.また,物品は使用後
廃棄できるものや症例の私物等を利用した.
【上肢機能評価】隔離数日前に実施した上肢機能検査を隔離後に実施し比較,検討した.
緊急隔離となったため,検査項目は異なっている.症例1(隔離3日前),FMA:61/66,WMFT:43.62,WMFT-FAS:64,STEF:57,MAL-AOU:3.81,MAL-QOM:3.18
症例2(隔離2日前),FMA:49/66,STEF:59
【結果】10日間の隔離後隔離介助となった.介入したスタッフへの感染も認めなかった. 隔離解除後に実施した上肢機能検査の結果は症例1,FMA:63/66,WMFT:34.28,WMFT-FAS:71,STEF:82,MAL-AOU:4.0,MAL-QOM:3.3
症例2,FMA:59/66,STEF:86となり全検査で向上を認めた.
【考察】両者ともSTEFでの得点の向上が大きく,症例2はFMAでもMCIDの9~10点を上回った.両者とも麻痺が軽度であり,他の検査では得点の変動が少なかったと考えられる.上肢機能の改善には練習量が重要な要素となるといわれており,自主練習の量を確保できたことで上肢機能が向上したと考えられた.また,OTでは直接的な介入が制限されたため,自主練習の内容と量の調整,モチベーションの維持,ストレス緩和など,自主練習のマネジメントを中心に介入した.竹林は「作業療法士は,対象者やその家族が主体的に動くことが出来るように,様々な手法を用いて,自主練習時間をマネジメントする事は必須となる」と述べており(竹林崇,2018),自主練習時間をマネジメントできたことでより効果的に自主練習を行えたと考えられた.
自主練習については「最初はイライラしたが,自主トレを渡されてやる気になった」とい った感想があり,OTの介入について「短い時間でも来てくれることに意味がある」など の肯定的な感想を得られ,隔離期間の自主練習やOT介入の精神面への効果も示唆された.
【報告の限界】両症例とも発症後約1月で麻痺が軽度であり,上肢機能の予後は良好と考えられたため,自然回復の可能性は否定できない.しかし,緊急時で介入が制限された状況でもOTの介入する意義はあったと考えられた.