[PA-1-16] Pusher現象と半側空間無視を呈したレビー小体型認知症事例に対する作業療法の実践
【はじめに】Pusher現象は脳卒中後に姿勢異常を示す現象であり,視覚情報や体性感覚情報を利用したリハビリテーションが有効とされている.しかし,半側空間無視などの合併により回復が阻害される可能性がある.左視床出血後にPusher現象,半側空間無視を認めたレビー小体型認知症(DLB)事例に対し,高次脳機能障害に配慮したPusher現象へのリハビリテーションについて報告する.
【事例紹介】80代女性,右利き.左視床出血後に意識障害,運動麻痺が出現し,modified Rankin Scale(mRS):grade4,Functional Independence Measure (FIM):18/126点,Stroke Impairment Assessment Set (SIAS):8/31点であった.第12病日に回復期リハビリテーション病棟へ転棟となった.既往歴にDLBがあり,入院前のMini Mental State Examination(MMSE)は21点であった.なお,本報告に際して書面にて同意を得ている.
【作業療法評価(第12病日)】Brunnstrom Stage手指VI,上肢III,下肢IV,Trunk Control Test(TCT):36/100点.右への傾倒に伴い端座位保持が困難でScale for Contraversive Pushing(SCP):6/6点,Burke Lateropulsion Scale(BLS):9/17点.MMSE:10/30点.Catherine Bergego Scale(CBS):2.8点で右側の認識低下が疑われた.FIM:20/126点だが,覚醒度や疲労により自立度の変動があった.
【介入方法】鏡での視覚的アプローチや,体性感覚情報を利用した座位訓練課題を設定した.また,複雑な指示理解は困難であり,関節運動を限定した運動や模倣動作を用いて課題を設定した.さらに,視覚刺激が少なく正面を注視できるような環境を設定した.
【経過】視覚的アプローチ後は,姿勢の自己修正がみられたが即時効果に留まったため,体性感覚情報を使用したアプローチを併用した.机を使用して接触面積を拡大し,両足底・臀部・大腿部後面・両前腕・手掌で支持できる環境を設定した.段階的に接触面積を減少させた結果,上肢支持がない状態でも5分程度の端座位保持が可能となった.この段階で,セルフケアの動作獲得に向け,食事・整容動作を目的とした課題指向型訓練を設定した.
【結果(第32病日)】SIAS:64/76点,FMA:102/126点で手を口元まで運ぶことが可能となった.MMSE:11/30点,CBS:0/28点で半側空間無視は改善した.SCP:0/6点,BLS:1/17点で,座位保持が可能となりTCT:61/100点となった.食事は半量程度の自力摂取が可能となり,FIM:53/100点となった.
【考察】Pusher現象例ではSVV(主観的視覚垂直)が鉛直位に保たれているため,視覚的フィードバックや,非麻痺側の体性感覚情報の利用が有効だとされている.また,DLBにより複雑な指示理解が困難だったため,関節運動を限定した運動を用いて,模倣を促しながら難易度を調整した結果,アウトカムが向上した.しかし本例は発症から短期間の報告であり,自然回復の可能性は否定できないと考えられた.
【事例紹介】80代女性,右利き.左視床出血後に意識障害,運動麻痺が出現し,modified Rankin Scale(mRS):grade4,Functional Independence Measure (FIM):18/126点,Stroke Impairment Assessment Set (SIAS):8/31点であった.第12病日に回復期リハビリテーション病棟へ転棟となった.既往歴にDLBがあり,入院前のMini Mental State Examination(MMSE)は21点であった.なお,本報告に際して書面にて同意を得ている.
【作業療法評価(第12病日)】Brunnstrom Stage手指VI,上肢III,下肢IV,Trunk Control Test(TCT):36/100点.右への傾倒に伴い端座位保持が困難でScale for Contraversive Pushing(SCP):6/6点,Burke Lateropulsion Scale(BLS):9/17点.MMSE:10/30点.Catherine Bergego Scale(CBS):2.8点で右側の認識低下が疑われた.FIM:20/126点だが,覚醒度や疲労により自立度の変動があった.
【介入方法】鏡での視覚的アプローチや,体性感覚情報を利用した座位訓練課題を設定した.また,複雑な指示理解は困難であり,関節運動を限定した運動や模倣動作を用いて課題を設定した.さらに,視覚刺激が少なく正面を注視できるような環境を設定した.
【経過】視覚的アプローチ後は,姿勢の自己修正がみられたが即時効果に留まったため,体性感覚情報を使用したアプローチを併用した.机を使用して接触面積を拡大し,両足底・臀部・大腿部後面・両前腕・手掌で支持できる環境を設定した.段階的に接触面積を減少させた結果,上肢支持がない状態でも5分程度の端座位保持が可能となった.この段階で,セルフケアの動作獲得に向け,食事・整容動作を目的とした課題指向型訓練を設定した.
【結果(第32病日)】SIAS:64/76点,FMA:102/126点で手を口元まで運ぶことが可能となった.MMSE:11/30点,CBS:0/28点で半側空間無視は改善した.SCP:0/6点,BLS:1/17点で,座位保持が可能となりTCT:61/100点となった.食事は半量程度の自力摂取が可能となり,FIM:53/100点となった.
【考察】Pusher現象例ではSVV(主観的視覚垂直)が鉛直位に保たれているため,視覚的フィードバックや,非麻痺側の体性感覚情報の利用が有効だとされている.また,DLBにより複雑な指示理解が困難だったため,関節運動を限定した運動を用いて,模倣を促しながら難易度を調整した結果,アウトカムが向上した.しかし本例は発症から短期間の報告であり,自然回復の可能性は否定できないと考えられた.