[PA-2-16] アテローム血栓性脳梗塞による失調症状に対する安定性向上のためのアプローチ
【序論】上肢・体幹に著明な失調症状を呈した症例について検討した.失調といえば重錘や弾性緊迫帯・フレンケル体操等が知られているが,根本的な症状の軽減につながる例は少ない.今回,体幹および四肢の失調に対してアプローチした結果,失調症状軽減し上肢機能改善に伴いADL自立に至ったため報告する.
【事例紹介】60代後半の男性,アテローム血栓性脳梗塞(小脳・橋).Z+22日回復期病棟に転院.自宅退院およびトイレでの排泄,食事の自立を希望していた.Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)は右上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ.上肢,体幹ともに動作時の失調症状著明,国際協調運動評価尺度(以下ICARS)56/100点,体幹失調試験(以下TAT)はStage4.関節可動域(以下ROM)は著明な制限ないものの右肘・足関節は筋緊張亢進,伸張痛あり.徒手筋力検査(以下MMT)は右上下肢5.簡易上肢機能検査(以下STEF)は右27/100点,左43/100点.MMSEは22/30点,HRS-Rは18/30点.脱抑制ありFrontal Assessment Battery(以下FAB)12/18点.ADLは見守り~全介助.起き上がり・座位保持・靴着脱は見守り.排泄はおむつ使用.更衣動作は時間を要し下衣要介助.
本症例には本研究の目的・内容について説明し拒否しても一切不利益が生じないことを文書と口頭にて説明し同意を得た.
【経過】第1期(介入開始~1週間):当初は軽度意識障害あり右優位に運動・感覚障害および四肢・体幹の失調症状著明.ベッドサイドにてROM・基本動作訓練実施.動作は「ゆっくり正確に」「左右対称」と声掛けした.
第2期(1週間~2カ月):リハ室にて移乗・上肢機能訓練を加えて実施.基本動作は体幹安定性を意識し声掛け.さらに体幹失調軽減,姿勢の安定に伴い上肢動作能力が徐々に向上.
第3期(2カ月~3カ月):床上・立位・トイレ動作訓練開始.パピーポジションで肩甲骨内外転10回繰り返し.四つ這い位で前後左右への重心移動,四肢を一側ずつ挙上し10秒保持.前方に台を置き重心移動を促し,離殿動作10回,両側に手をついて離殿を促しいざり動作1往復.トイレ動作は介助しながら自立を促し一連の動作がスムーズに実施できるようになった.
第4期(3カ月~5カ月):トイレ動作を介助なしで練習.歩行・更衣動作訓練開始.上肢機能は視覚フィードバック用いながら実施.座位動作は背もたれやひじ掛けのある椅子を利用し繰り返すことで座位保持安定し,見守りで可能となった.下衣着脱も繰り返すことで立位時も安全に行えるようになった.立位時の体幹失調と膝折れ徐々に軽減し,転倒リスクも軽減.
【結果】BRSは右上肢・手指・下肢すべてⅥ,上肢・体幹ともに動作時の失調症状軽減しICARSは33/100点となった.右肘・足関節の筋緊張亢進,伸張痛改善しADL上の影響も軽減.STEFは右58/100点,左75/100点,上肢機能改善し性急さ減少した.FABは16/18点,MMSEは27/30点,HDS-Rは26/30点.起居移動は寝返り・起き上がり・座位は自立,立ち上がり・移乗は見守りとなった.ADLは食事・整容・更衣動作全て自立,排泄は見守りとなった.ADL全体で失調軽減,随意性向上による動作能力改善がみられた.
【考察】本症例は高次脳機能障害が軽度で意欲もあり,ROMや筋力に問題なかったということもあり,協調性およびバランスのアプローチを効果的に進めることができたと考える.随意性向上はボバースによる筋緊張正常化の手法に沿っていたためと考える.また緩徐な運動はすばやい運動の際に生じやすい慣性を減少させ,運動の難易度を下げエラーを小さくする効果がある.四肢の失調に対しては視覚フィードバックを用いて繰り返し実施したことも軽減につながったと考える.
【事例紹介】60代後半の男性,アテローム血栓性脳梗塞(小脳・橋).Z+22日回復期病棟に転院.自宅退院およびトイレでの排泄,食事の自立を希望していた.Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)は右上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ.上肢,体幹ともに動作時の失調症状著明,国際協調運動評価尺度(以下ICARS)56/100点,体幹失調試験(以下TAT)はStage4.関節可動域(以下ROM)は著明な制限ないものの右肘・足関節は筋緊張亢進,伸張痛あり.徒手筋力検査(以下MMT)は右上下肢5.簡易上肢機能検査(以下STEF)は右27/100点,左43/100点.MMSEは22/30点,HRS-Rは18/30点.脱抑制ありFrontal Assessment Battery(以下FAB)12/18点.ADLは見守り~全介助.起き上がり・座位保持・靴着脱は見守り.排泄はおむつ使用.更衣動作は時間を要し下衣要介助.
本症例には本研究の目的・内容について説明し拒否しても一切不利益が生じないことを文書と口頭にて説明し同意を得た.
【経過】第1期(介入開始~1週間):当初は軽度意識障害あり右優位に運動・感覚障害および四肢・体幹の失調症状著明.ベッドサイドにてROM・基本動作訓練実施.動作は「ゆっくり正確に」「左右対称」と声掛けした.
第2期(1週間~2カ月):リハ室にて移乗・上肢機能訓練を加えて実施.基本動作は体幹安定性を意識し声掛け.さらに体幹失調軽減,姿勢の安定に伴い上肢動作能力が徐々に向上.
第3期(2カ月~3カ月):床上・立位・トイレ動作訓練開始.パピーポジションで肩甲骨内外転10回繰り返し.四つ這い位で前後左右への重心移動,四肢を一側ずつ挙上し10秒保持.前方に台を置き重心移動を促し,離殿動作10回,両側に手をついて離殿を促しいざり動作1往復.トイレ動作は介助しながら自立を促し一連の動作がスムーズに実施できるようになった.
第4期(3カ月~5カ月):トイレ動作を介助なしで練習.歩行・更衣動作訓練開始.上肢機能は視覚フィードバック用いながら実施.座位動作は背もたれやひじ掛けのある椅子を利用し繰り返すことで座位保持安定し,見守りで可能となった.下衣着脱も繰り返すことで立位時も安全に行えるようになった.立位時の体幹失調と膝折れ徐々に軽減し,転倒リスクも軽減.
【結果】BRSは右上肢・手指・下肢すべてⅥ,上肢・体幹ともに動作時の失調症状軽減しICARSは33/100点となった.右肘・足関節の筋緊張亢進,伸張痛改善しADL上の影響も軽減.STEFは右58/100点,左75/100点,上肢機能改善し性急さ減少した.FABは16/18点,MMSEは27/30点,HDS-Rは26/30点.起居移動は寝返り・起き上がり・座位は自立,立ち上がり・移乗は見守りとなった.ADLは食事・整容・更衣動作全て自立,排泄は見守りとなった.ADL全体で失調軽減,随意性向上による動作能力改善がみられた.
【考察】本症例は高次脳機能障害が軽度で意欲もあり,ROMや筋力に問題なかったということもあり,協調性およびバランスのアプローチを効果的に進めることができたと考える.随意性向上はボバースによる筋緊張正常化の手法に沿っていたためと考える.また緩徐な運動はすばやい運動の際に生じやすい慣性を減少させ,運動の難易度を下げエラーを小さくする効果がある.四肢の失調に対しては視覚フィードバックを用いて繰り返し実施したことも軽減につながったと考える.