[PA-3-1] くも膜下出血を呈した症例に対して NSTによる介入と作業療法を併行して行った小経験
【緒言】
今回,くも膜下出血を呈した症例に対して NSTによる介入と併行して作業療法を行った.栄養状態を加味したリハビリテーションの重要性を報告する.
【症例紹介】
60歳代女性,専業主婦,診断名はくも膜下出血である.既往歴は,糖尿病,脂質異常症,逆流性食道炎である.現病歴は,入浴後に幻暈などの愁訴により意識混濁し救急搬送,発症同日にコイル塞栓術が施行されるが,水頭症のため第3病日にスパイナルドレン留置となる.周術期栄養管理のため第4病日よりNST介入となった.
【経過】
経口栄養投与は第6病日より開始されたが,言語聴覚士による評価にて誤嚥のリスクが高いと判断され,ゼリー食より摂食開始となった.JCSはⅠ-2であり,礼節は保持,文節指示理解は可能であったが失見当識を認めたものの,周囲環境から病院であることは認識することが可能であった.四肢に著明な麻痺は認めなかったが全身倦怠感により筋力評価および認知機能評価の精査は困難であった.ADLについてもBarthel Index(BI)にて0点であった.作業療法は同日より開始し,認知機能賦活,ベッド上のポジショニングと関節可動域訓練を開始した.第10病日にてドレンが抜去され,離床が許可された.嚥下状態についても改善を認め,食形態が変更された.しかし,姿勢変化に伴って強い眩暈と頭痛を自覚し起坐は困難であったため,自制内でのギャッジアップを段階的に施行し離床に向けた介入を継続した.第12病日,意識レベルはJCSⅠ-0となった.しかし,姿勢変化に伴う眩暈は改善したが頭痛の訴えは持続し離床は困難であった.ADLはBIにて食事,整容,排泄管理での加点により30/100点となった.同時期より,下肢の筋力強化訓練,オーバーテーブル上での机上活動を提供した.第17病日では,姿勢変化に因る頭痛は軽減し起坐動作は自立した.同時期より積極的に離床を進め,起立動作から歩行器歩行へと段階的に移行した.第19病日にて,歩行器での病棟内移動自立となりBIは90/100点となった.食事形態についても常食に変更され全量摂取が可能となった.第21病日にて,ADLはBIにて100/100点となった.
【結果】
第24病日にて,栄養状態は改善したものの脂質異常が認められた.脂質異常に対して主食の量および蛋白質の摂取方法,野菜を取り入れた食生活の見直し,食事療法と運動療法を指導して自宅退院となった.
【考察】
急性期医療では,疾患に対する治療が優先され,適切な栄養管理が行われないことがある. 本症例においても,NST介入時に低栄養状態であることが指摘されており,活動制限,参加制限をきたすことが予測された.そのため,随時栄養プランを修正し可及的早期に栄養状態の改善に努め,摂食率が改善を認めた時期より,栄養状態の改善が期待できると判断し基本動作ならびに日常生活動作練習を積極的に行い心身機能の著しい低下をきたすことなく普段,栄養療法は治療場面で軽視されがちであるが,栄養状態や状況に合わせた心身機能の維持改善は肝要である.
今回,くも膜下出血を呈した症例に対して NSTによる介入と併行して作業療法を行った.栄養状態を加味したリハビリテーションの重要性を報告する.
【症例紹介】
60歳代女性,専業主婦,診断名はくも膜下出血である.既往歴は,糖尿病,脂質異常症,逆流性食道炎である.現病歴は,入浴後に幻暈などの愁訴により意識混濁し救急搬送,発症同日にコイル塞栓術が施行されるが,水頭症のため第3病日にスパイナルドレン留置となる.周術期栄養管理のため第4病日よりNST介入となった.
【経過】
経口栄養投与は第6病日より開始されたが,言語聴覚士による評価にて誤嚥のリスクが高いと判断され,ゼリー食より摂食開始となった.JCSはⅠ-2であり,礼節は保持,文節指示理解は可能であったが失見当識を認めたものの,周囲環境から病院であることは認識することが可能であった.四肢に著明な麻痺は認めなかったが全身倦怠感により筋力評価および認知機能評価の精査は困難であった.ADLについてもBarthel Index(BI)にて0点であった.作業療法は同日より開始し,認知機能賦活,ベッド上のポジショニングと関節可動域訓練を開始した.第10病日にてドレンが抜去され,離床が許可された.嚥下状態についても改善を認め,食形態が変更された.しかし,姿勢変化に伴って強い眩暈と頭痛を自覚し起坐は困難であったため,自制内でのギャッジアップを段階的に施行し離床に向けた介入を継続した.第12病日,意識レベルはJCSⅠ-0となった.しかし,姿勢変化に伴う眩暈は改善したが頭痛の訴えは持続し離床は困難であった.ADLはBIにて食事,整容,排泄管理での加点により30/100点となった.同時期より,下肢の筋力強化訓練,オーバーテーブル上での机上活動を提供した.第17病日では,姿勢変化に因る頭痛は軽減し起坐動作は自立した.同時期より積極的に離床を進め,起立動作から歩行器歩行へと段階的に移行した.第19病日にて,歩行器での病棟内移動自立となりBIは90/100点となった.食事形態についても常食に変更され全量摂取が可能となった.第21病日にて,ADLはBIにて100/100点となった.
【結果】
第24病日にて,栄養状態は改善したものの脂質異常が認められた.脂質異常に対して主食の量および蛋白質の摂取方法,野菜を取り入れた食生活の見直し,食事療法と運動療法を指導して自宅退院となった.
【考察】
急性期医療では,疾患に対する治療が優先され,適切な栄養管理が行われないことがある. 本症例においても,NST介入時に低栄養状態であることが指摘されており,活動制限,参加制限をきたすことが予測された.そのため,随時栄養プランを修正し可及的早期に栄養状態の改善に努め,摂食率が改善を認めた時期より,栄養状態の改善が期待できると判断し基本動作ならびに日常生活動作練習を積極的に行い心身機能の著しい低下をきたすことなく普段,栄養療法は治療場面で軽視されがちであるが,栄養状態や状況に合わせた心身機能の維持改善は肝要である.