[PA-3-15] 回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者の主観的回復感の変容プロセス
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)に入院する脳卒中患者は,運動麻痺,ADLの障害に加え喪失体験や周囲の環境が影響し,二次的に不安や焦燥感などの情緒心理面の問題を呈する場合が多い.そのため,不安や焦燥感から生じるうつ症状などの予防を目的に,心理面に対しても目を向け捉えていくことが,患者が退院後に心身共に健康に生活を送る上で必要な支援であると考えられる.脳卒中患者の心理面での問題の改善には,運動麻痺といった身体障害の重症度よりも身体障害の改善への認識が重要であると報告されている.先行研究において,患者が主観的に感じる自己の障害改善に対する認識の程度と定義される主観的回復感が低いことは不安感が多い状態,主観的回復感が高いことは不安感が少ない状態であると述べられており,主観的回復感を感じることは,適切な心理状態でリハビリテーションを実施していく上で重要である.しかし,回復期リハ病棟への入院において脳卒中患者が発症からの体験全般を通してどのように主観的回復感を感じていくのかというプロセスを調査した報告はない.
【目的】脳卒中患者が発症から回復期リハ病棟にて主観的回復感を感じていくプロセスを明らかにすることで,適切な支援方法を分析するための一助とすることを目的とした.
【方法】本研究では,インタビューにてデータ収集を行い,質的研究方法である複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach ; 以下TEA )を用いて分析を行った.対象者の条件は,研究目的に則した等至点である「主観的回復感を感じる」に至ることを念頭に,回復感について語ることが出来る自宅退院予定の初発脳卒中患者とした.インタビューは,計3回実施し,データの統合は,全対象者のそれぞれが経験した出来事・行動とそれに伴う本人の思いを抽出し,類似した内容をまとめ,抽象度を上げたラベルを作成した.対象者が共通して体験したラベルを必須通過点とし,ラベルを時間の流れに沿って並べ矢印を結んでネットワーク化し考察を行なった.信用性の担保として共同研究者と分析を行った.なお,本研究は所属先の倫理委員会の承認を得て実施し,対象者からの承諾も得ている.
【結果】対象者は男性1名,女性2名の計3名であった.3名の対象者の統合された「主観的回復感を感じる」という等至点に早期から幾度も至るプロセスが示された.プロセスでは,急性期病棟から回復期リハ病棟にかけての病棟生活環境で,時期に応じて対象者の行動・認識は変化しており,リハビリテーションの進捗や医療職ならびに家族との関わりが影響していた.対象者全員が「野鳥の撮影に行きたい」「北海道にトレッキングに行きたい」「孫の卒園式に出席したい」と退院後の希望を語るに至った.しかし,その中途において,対象者は「主観的回復感を感じない」に早期から幾度も至る経験をし,「完全な回復は難しいと感じる」という考えを提示した.その後,対象者いずれもが第二等至点として「退院後の新たな生活を想像する」に至った.
【考察】本研究から,「主観的回復感を感じる」,「主観的回復感を感じない」の2つに至る経験の中で,対象者の価値・信念は「機能回復を切望する」から「回復に沿って退院を想定した生活行為に取り組む」に変化した.以上より,脳卒中患者が退院後の新たな生活を送るためには,心理的側面に配慮しながら発症時期に応じた包括的な支援を(家族も含めた)多職種連携で行うことが,重要であると考えられた.
【目的】脳卒中患者が発症から回復期リハ病棟にて主観的回復感を感じていくプロセスを明らかにすることで,適切な支援方法を分析するための一助とすることを目的とした.
【方法】本研究では,インタビューにてデータ収集を行い,質的研究方法である複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach ; 以下TEA )を用いて分析を行った.対象者の条件は,研究目的に則した等至点である「主観的回復感を感じる」に至ることを念頭に,回復感について語ることが出来る自宅退院予定の初発脳卒中患者とした.インタビューは,計3回実施し,データの統合は,全対象者のそれぞれが経験した出来事・行動とそれに伴う本人の思いを抽出し,類似した内容をまとめ,抽象度を上げたラベルを作成した.対象者が共通して体験したラベルを必須通過点とし,ラベルを時間の流れに沿って並べ矢印を結んでネットワーク化し考察を行なった.信用性の担保として共同研究者と分析を行った.なお,本研究は所属先の倫理委員会の承認を得て実施し,対象者からの承諾も得ている.
【結果】対象者は男性1名,女性2名の計3名であった.3名の対象者の統合された「主観的回復感を感じる」という等至点に早期から幾度も至るプロセスが示された.プロセスでは,急性期病棟から回復期リハ病棟にかけての病棟生活環境で,時期に応じて対象者の行動・認識は変化しており,リハビリテーションの進捗や医療職ならびに家族との関わりが影響していた.対象者全員が「野鳥の撮影に行きたい」「北海道にトレッキングに行きたい」「孫の卒園式に出席したい」と退院後の希望を語るに至った.しかし,その中途において,対象者は「主観的回復感を感じない」に早期から幾度も至る経験をし,「完全な回復は難しいと感じる」という考えを提示した.その後,対象者いずれもが第二等至点として「退院後の新たな生活を想像する」に至った.
【考察】本研究から,「主観的回復感を感じる」,「主観的回復感を感じない」の2つに至る経験の中で,対象者の価値・信念は「機能回復を切望する」から「回復に沿って退院を想定した生活行為に取り組む」に変化した.以上より,脳卒中患者が退院後の新たな生活を送るためには,心理的側面に配慮しながら発症時期に応じた包括的な支援を(家族も含めた)多職種連携で行うことが,重要であると考えられた.