[PA-4-16] 回復期リハビリテーション病棟および外来リハビリテーションにおける就労支援
【研究背景】
脳血管障害により高次脳機能障害を有する患者の就労に関する報告は,注意障害や失語症に対する報告が散見される.しかし,高次脳機能障害の有無と個人因子が就労可否にどの程度影響しているかの報告は少ない.当院の回復期リハビリテーション病棟と外来リハビリテーション(以下,外来)においては,高次脳機能障害を有すると就労支援に難渋するケースを経験するため,高次脳機能障害は就労可否に影響することが予測される.
【目的】
高次脳機能障害と年齢や性別の個人因子は,就労の可否に影響を及ぼすのかを明らかにし,就労に可能となる要素の検討を行う.
【研究方法】
対象は,当院入院中に就労希望があった脳卒中患者20名と就労支援目的で当院退院後に外来を利用した脳血管障害患者80名の合計100名とした.観察期間は令和2年10月~令和4年9月まで2年間とした.観察期間中に就労が可能だった群をW群,就労が不可能だった群をNW群とした.高次脳機能障害の評価は,厚労省労災補償「高次脳機能障害整理表」を使用し当院退院時または外来終了時にA~Fで判定を行った.本指標は,それぞれA:多少の困難はあるが概ね自立できる,B:困難はあるが概ね自立できる,C:困難があり多少の援助が必要,D:困難はあるが援助があればできる,E:困難が著しく大きい,F:できない,で構成される.分析に際して,高次脳機能障害の重症度をAは軽度,B,C,D,E,Fを高次脳機能障害が中等度~重度とした.統計処理は年齢,性別,高次脳機能障害の重症度を独立変数とし,就労の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.統計ソフトはRver.2.7-1を用い有意水準は5%未満とした.なお,本研究は当院倫理委員会の承認のうえ実施し,対象者には口頭および書面によるインフォームドコンセントを得た.
【結果】
W群が41名(入院8名,外来33名),NW群が59名(入院12名,外来47名)となった.各群の性別の割合および年齢±標準偏差はそれぞれ,,W群は男性87.5%,57.0歳±11.7,NW群は男性63.3%,61.1歳±14.2であった.高次脳機能障害整理表の内訳はW群では, A25名,B8名,C4名,D4名,E0名,NW群はA33名,B11名,C6名,D6名,E3名であった.高次脳障害の重症度ではW群は軽度が25名,中等度~重度が16名,NW群は軽度が33名,中等度~重度が26名となった.多変量解析の結果,性別は就労の可否と有意に関連し(OR=3.88, 95%CI=1.28-11.80,P<0.01),年齢(OR=1.02, 95%CI=0.99-1.06,P=0.18),高次脳機能障害の有無(OR=1.30, 95%CI=0.55~3.08,P=0.54)は関連を認めなかった.
【考察】
本研究では,女性よりも男性の方が就労しやすく,年齢や高次脳機能障害整理表で評価した高次脳機能障害の重症度は就労の可否に影響しないことが示唆された.高次脳機能障害には重症度だけでは評価しきれない症状が多岐にわたるためと考えられる.先行研究では,就労が可能となりやすい業種として,事務系の就労率が最も高いとの報告もあり,高次脳機能障害を呈した患者の就労支援としては,各個人の障害特性を元に職場や家族と連携し業務内容の調整など環境因子に対する介入をすることが重要になると考えられる.
脳血管障害により高次脳機能障害を有する患者の就労に関する報告は,注意障害や失語症に対する報告が散見される.しかし,高次脳機能障害の有無と個人因子が就労可否にどの程度影響しているかの報告は少ない.当院の回復期リハビリテーション病棟と外来リハビリテーション(以下,外来)においては,高次脳機能障害を有すると就労支援に難渋するケースを経験するため,高次脳機能障害は就労可否に影響することが予測される.
【目的】
高次脳機能障害と年齢や性別の個人因子は,就労の可否に影響を及ぼすのかを明らかにし,就労に可能となる要素の検討を行う.
【研究方法】
対象は,当院入院中に就労希望があった脳卒中患者20名と就労支援目的で当院退院後に外来を利用した脳血管障害患者80名の合計100名とした.観察期間は令和2年10月~令和4年9月まで2年間とした.観察期間中に就労が可能だった群をW群,就労が不可能だった群をNW群とした.高次脳機能障害の評価は,厚労省労災補償「高次脳機能障害整理表」を使用し当院退院時または外来終了時にA~Fで判定を行った.本指標は,それぞれA:多少の困難はあるが概ね自立できる,B:困難はあるが概ね自立できる,C:困難があり多少の援助が必要,D:困難はあるが援助があればできる,E:困難が著しく大きい,F:できない,で構成される.分析に際して,高次脳機能障害の重症度をAは軽度,B,C,D,E,Fを高次脳機能障害が中等度~重度とした.統計処理は年齢,性別,高次脳機能障害の重症度を独立変数とし,就労の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.統計ソフトはRver.2.7-1を用い有意水準は5%未満とした.なお,本研究は当院倫理委員会の承認のうえ実施し,対象者には口頭および書面によるインフォームドコンセントを得た.
【結果】
W群が41名(入院8名,外来33名),NW群が59名(入院12名,外来47名)となった.各群の性別の割合および年齢±標準偏差はそれぞれ,,W群は男性87.5%,57.0歳±11.7,NW群は男性63.3%,61.1歳±14.2であった.高次脳機能障害整理表の内訳はW群では, A25名,B8名,C4名,D4名,E0名,NW群はA33名,B11名,C6名,D6名,E3名であった.高次脳障害の重症度ではW群は軽度が25名,中等度~重度が16名,NW群は軽度が33名,中等度~重度が26名となった.多変量解析の結果,性別は就労の可否と有意に関連し(OR=3.88, 95%CI=1.28-11.80,P<0.01),年齢(OR=1.02, 95%CI=0.99-1.06,P=0.18),高次脳機能障害の有無(OR=1.30, 95%CI=0.55~3.08,P=0.54)は関連を認めなかった.
【考察】
本研究では,女性よりも男性の方が就労しやすく,年齢や高次脳機能障害整理表で評価した高次脳機能障害の重症度は就労の可否に影響しないことが示唆された.高次脳機能障害には重症度だけでは評価しきれない症状が多岐にわたるためと考えられる.先行研究では,就労が可能となりやすい業種として,事務系の就労率が最も高いとの報告もあり,高次脳機能障害を呈した患者の就労支援としては,各個人の障害特性を元に職場や家族と連携し業務内容の調整など環境因子に対する介入をすることが重要になると考えられる.