[PA-4-6] 運動量増加機器(上肢用ロボット型運動訓練装置 ReoGo®-J)の導入前後における上肢機能およびADLの比較検討
【背景と目的】2020年4月運動量増加機器の使用による加算が診療報酬上新設された.当院では上肢用ロボット型運動訓練装置(ReoGo®-J)を導入し脳卒中後上肢麻痺に対し使用している.算定条件の一つに発症から2ヶ月という条件が提示されているが,加算の取得状況やそれに伴う機能変化,転帰についての報告はない.また算定要件に該当し運動量の増加にともない,従来の介入と比較して運動機能やADLがどの程度改善されたかについても不明である.よって,本研究の目的は後方視的に運動量増加機器加算の新設前後において,脳卒中により重度から中等度上肢麻痺を生じた例を抽出し上肢機能やADLの回復について比較検討することである.
【対象と方法】対象は2018年4月から2022年3月,当院へ搬送され脳梗塞,脳出血と診断後リハビリテーションを実施しかつ年齢80歳以下,入院期間14日以上90日未満とした577例.加算開始前後で2群に分類し加算開始前283例,加算開始後294例となった.なお,加算を取得していたのは294例中79例であった.そして開始時Fugl meyer assessment上肢項目 (FMA)47点以上,実施単位数20単位以下および100単位以上を除外し,解析の対象は加算開始前(対照群)102例,加算開始後(介入群)が45例となった.方法はカルテより基礎的情報,FMA,Functional Independence Measure (FIM)を抽出した.背景因子として性別,年齢,疾患名,リハビリテーション開始までの日数,在院日数,実施総単位数を抽出し2群間で比較した.つぎにFMAとFIMについてそれぞれ介入前後を比較した.最後にFAMとFIMの変化量を算出し2群間での比較を行った.統計解析は尺度および正規性に従いパラメトリック検定,ノンパラメトリック検定をそれぞれ選択した.また,介入前後比較および変化量の比較については効果量rも算出した.すべての解析において有意水準は5%としEZRを用いて解析した.
【結果】対照群,介入群の順に示す.年齢(68.0±9.5歳,65.4±11.2歳),性別(男/女62/40名,32/13名),疾患(脳梗塞/脳出血67/35名,32/13名),リハビリテーション開始までの日数(1.9±0.6日,1.9±1.0日),在院日数(40.5±12.1日,37.4±12.5日),実施単位数(51.2±17.2単位,58.3±28.1単位),開始時FMA(15.3±14.9点,16.8±16.4点),退院時FMA(32.3±14.9点,41.0±22.9点),開始時FIM(41.9±21.6点,42.3±19.5点),退院時時FIM(73.1±31.5点,68.6±27.3点),FMA変化量(17.0±18.2,18.7±15.4,r=0.10),FIM変化量(31.1±25.0,26.4±16.7,r=0.09).統計解析では,背景因子には有意差を認めなかった.FMA,FIMの介入前後比較では両群とも有意差および大きな効果量(r=0.71~0.87)を認めた.2群間におけるFMA,FIM変化量の比較では有意差はなく効果量も小さかった.
【考察】運動量増加機器の導入および加算の新設前後比較では上肢機能とADLの改善度に差がなかった.後ろ向き観察研究かつ対象が急性期でもあり未知の交絡や各種バイアス,自然回復の影響も示唆される.また本調査では機器の練習メニューや実際の機器使用時間まで検討もできていない.以上のような限界もあるが,加算の有無にかかわらず,開始時期,開始時の機能とADL,機器の難易度設定,他の介入との併用などに配慮した導入を再考していく必要がある.
【倫理的配慮】本研究は後ろ向き観察研究であり,個人情報の取扱いには十分配慮しヘルシンキ宣言を遵守している.また医療法人錦秀会倫理審査委員会の承認(承認番号:2022-13)を受けている.
【対象と方法】対象は2018年4月から2022年3月,当院へ搬送され脳梗塞,脳出血と診断後リハビリテーションを実施しかつ年齢80歳以下,入院期間14日以上90日未満とした577例.加算開始前後で2群に分類し加算開始前283例,加算開始後294例となった.なお,加算を取得していたのは294例中79例であった.そして開始時Fugl meyer assessment上肢項目 (FMA)47点以上,実施単位数20単位以下および100単位以上を除外し,解析の対象は加算開始前(対照群)102例,加算開始後(介入群)が45例となった.方法はカルテより基礎的情報,FMA,Functional Independence Measure (FIM)を抽出した.背景因子として性別,年齢,疾患名,リハビリテーション開始までの日数,在院日数,実施総単位数を抽出し2群間で比較した.つぎにFMAとFIMについてそれぞれ介入前後を比較した.最後にFAMとFIMの変化量を算出し2群間での比較を行った.統計解析は尺度および正規性に従いパラメトリック検定,ノンパラメトリック検定をそれぞれ選択した.また,介入前後比較および変化量の比較については効果量rも算出した.すべての解析において有意水準は5%としEZRを用いて解析した.
【結果】対照群,介入群の順に示す.年齢(68.0±9.5歳,65.4±11.2歳),性別(男/女62/40名,32/13名),疾患(脳梗塞/脳出血67/35名,32/13名),リハビリテーション開始までの日数(1.9±0.6日,1.9±1.0日),在院日数(40.5±12.1日,37.4±12.5日),実施単位数(51.2±17.2単位,58.3±28.1単位),開始時FMA(15.3±14.9点,16.8±16.4点),退院時FMA(32.3±14.9点,41.0±22.9点),開始時FIM(41.9±21.6点,42.3±19.5点),退院時時FIM(73.1±31.5点,68.6±27.3点),FMA変化量(17.0±18.2,18.7±15.4,r=0.10),FIM変化量(31.1±25.0,26.4±16.7,r=0.09).統計解析では,背景因子には有意差を認めなかった.FMA,FIMの介入前後比較では両群とも有意差および大きな効果量(r=0.71~0.87)を認めた.2群間におけるFMA,FIM変化量の比較では有意差はなく効果量も小さかった.
【考察】運動量増加機器の導入および加算の新設前後比較では上肢機能とADLの改善度に差がなかった.後ろ向き観察研究かつ対象が急性期でもあり未知の交絡や各種バイアス,自然回復の影響も示唆される.また本調査では機器の練習メニューや実際の機器使用時間まで検討もできていない.以上のような限界もあるが,加算の有無にかかわらず,開始時期,開始時の機能とADL,機器の難易度設定,他の介入との併用などに配慮した導入を再考していく必要がある.
【倫理的配慮】本研究は後ろ向き観察研究であり,個人情報の取扱いには十分配慮しヘルシンキ宣言を遵守している.また医療法人錦秀会倫理審査委員会の承認(承認番号:2022-13)を受けている.