[PA-5-7] 生活リズムの改善が自動車運転再開と就労へつながった一事例
目的
脳挫傷により高次脳機能障害を呈し,急性期に発症した症候性てんかんによって2年間の免許停止となっていた事例を外来リハにて経験した.事例は回復期退院後独居生活を送っていたが,運転ができないことによる生活範囲の狭小化,無為な生活となっていた.合意目標を自動車運転再開のために生活リズムの立て直すこととして介入を行ったところ運転の再開と作業所での就労へつながることができたため報告する.今回の発表にあたり当院の倫理委員会の承認と対象者から同意を得ている.
事例紹介
60歳代の女性,自宅は山間部で生活のためには自動車が必須な地域に暮らしている.ADL,IADL(自動車運転,コンビニでアルバイト)自立で独居生活を送っていた.X年5月15日に自宅の庭木を剪定中に2メートルの高さから転落し受傷.急性期病院へ入院し,X年6月22日に回復期リハ目的で当院へ入院となった.X+2年後,運転再開を目的に当院を再受診したが評価結果が芳しくないため外来作業療法が週1回開始となった.自宅の近所に実姉が居住しており通院や買い物の協力をしてくれている.運転ができなくなってからは生活リズムが乱れ,姉以外の人と関わることが極端に減ってしまっていた.運転再開のため生活リズムを立て直すという目標に対する自己評価は実行度,満足度共に1/10であった.
経過
外来初日に神経心理学的検査,ドライビングシミュレーター(DS),SDSAの評価を実施した.神経心理学的検査,DSの結果は当院の運転再開基準を満たしていたがSDSAはドット抹消378秒,ドット抹消お手つき0,方向得点24/32,コンパス得点15/32,道路標識5/12であった.注意や視空間認知について問題はなかったが,SDSAでは一度誤ると修正できないままそれに引きずられて分からなくなる場面や理解,実行機能の弱さが目立った.また,評価結果のみに固執してしまい自身の生活について問題視できていなかった.そこで認知機能の改善のために日頃の運動が有効であること,運転再開には自己管理が必須であることを本人と共有した.生活リズムの立て直しとして毎日の行動予定を本人と共に立案した.行動予定の中には起床,就寝時間と毎日近所のコンビニまでのウォーキング,脳トレを取り入れた.併せて,毎日行動記録をつけるように指導し外来リハ時に本人と共に振り返った.振り返りをする中で生活を見直すという気づきが生まれ作業所での就労を始めるに至った.最終的なSDSAはドット抹消376秒,ドット抹消お手つき0,方向得点16/32,コンパス得点14/32,道路標識7/12であった.初回と比較すると教示の意味を適切に理解し解答できるようになり誤りも少なくなった.誤りに気づくことも多くなったが,思考から判断までに時間がかかり制限時間内に終了することができない様子も見受けられた.最終確認として行った実車評価では問題を認めず運転再開可能と評価した.目標に対する自己評価は実行度8/10,満足度10/10となった.
結果
運転免許センターで臨時適正検査を受講し運転再開となった.外来終了1か月後の電話での聞き取りでは作業所での就労は継続して行えており「生活の張り合いになっている」とのことであった.
考察
今回の目標であった運転再開は本人,家族共に希望が強く,重要な活動であったことから本人の主体性を引き出しやすかったと考える.行動記録をつけることで自身の生活を見える化し客観的に捉えることで行動変容が促されたと考える.現在では運転再開となったが,今後年齢を重ねていくことで新たなリスクや問題が生じる恐れがある.免許返納のタイミングや運転ができなくなった場合の対応も合わせて考えていく必要がある.
脳挫傷により高次脳機能障害を呈し,急性期に発症した症候性てんかんによって2年間の免許停止となっていた事例を外来リハにて経験した.事例は回復期退院後独居生活を送っていたが,運転ができないことによる生活範囲の狭小化,無為な生活となっていた.合意目標を自動車運転再開のために生活リズムの立て直すこととして介入を行ったところ運転の再開と作業所での就労へつながることができたため報告する.今回の発表にあたり当院の倫理委員会の承認と対象者から同意を得ている.
事例紹介
60歳代の女性,自宅は山間部で生活のためには自動車が必須な地域に暮らしている.ADL,IADL(自動車運転,コンビニでアルバイト)自立で独居生活を送っていた.X年5月15日に自宅の庭木を剪定中に2メートルの高さから転落し受傷.急性期病院へ入院し,X年6月22日に回復期リハ目的で当院へ入院となった.X+2年後,運転再開を目的に当院を再受診したが評価結果が芳しくないため外来作業療法が週1回開始となった.自宅の近所に実姉が居住しており通院や買い物の協力をしてくれている.運転ができなくなってからは生活リズムが乱れ,姉以外の人と関わることが極端に減ってしまっていた.運転再開のため生活リズムを立て直すという目標に対する自己評価は実行度,満足度共に1/10であった.
経過
外来初日に神経心理学的検査,ドライビングシミュレーター(DS),SDSAの評価を実施した.神経心理学的検査,DSの結果は当院の運転再開基準を満たしていたがSDSAはドット抹消378秒,ドット抹消お手つき0,方向得点24/32,コンパス得点15/32,道路標識5/12であった.注意や視空間認知について問題はなかったが,SDSAでは一度誤ると修正できないままそれに引きずられて分からなくなる場面や理解,実行機能の弱さが目立った.また,評価結果のみに固執してしまい自身の生活について問題視できていなかった.そこで認知機能の改善のために日頃の運動が有効であること,運転再開には自己管理が必須であることを本人と共有した.生活リズムの立て直しとして毎日の行動予定を本人と共に立案した.行動予定の中には起床,就寝時間と毎日近所のコンビニまでのウォーキング,脳トレを取り入れた.併せて,毎日行動記録をつけるように指導し外来リハ時に本人と共に振り返った.振り返りをする中で生活を見直すという気づきが生まれ作業所での就労を始めるに至った.最終的なSDSAはドット抹消376秒,ドット抹消お手つき0,方向得点16/32,コンパス得点14/32,道路標識7/12であった.初回と比較すると教示の意味を適切に理解し解答できるようになり誤りも少なくなった.誤りに気づくことも多くなったが,思考から判断までに時間がかかり制限時間内に終了することができない様子も見受けられた.最終確認として行った実車評価では問題を認めず運転再開可能と評価した.目標に対する自己評価は実行度8/10,満足度10/10となった.
結果
運転免許センターで臨時適正検査を受講し運転再開となった.外来終了1か月後の電話での聞き取りでは作業所での就労は継続して行えており「生活の張り合いになっている」とのことであった.
考察
今回の目標であった運転再開は本人,家族共に希望が強く,重要な活動であったことから本人の主体性を引き出しやすかったと考える.行動記録をつけることで自身の生活を見える化し客観的に捉えることで行動変容が促されたと考える.現在では運転再開となったが,今後年齢を重ねていくことで新たなリスクや問題が生じる恐れがある.免許返納のタイミングや運転ができなくなった場合の対応も合わせて考えていく必要がある.