第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-8] ポスター:脳血管疾患等 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-8-13] 脳血管障害者における把握力調整能力の関連要因

金野 達也1, 河原 克俊2, 田坂 陸2, 櫻井 知征2, 森田 良文3 (1.東京都立大学健康福祉学部作業療法学科, 2.埼玉セントラル病院リハビリテーション科, 3.名古屋工業大学大学院電気・機械工学専攻)

【序論】日常生活では,最大出力に満たない範囲で把握力を調整する能力(以下,把握力調整能力)が必要となる.脳血管障害者の把握力調整能力と関連する要因について十分に解明されていない.
【目的】脳血管障害者の把握力調整能力と関連する要因についての知見を得ることを目的とした.
【方法】脳血管障害者8名を対象とした(平均年齢70.5±12.9歳,発症してからの期間は77.8±26.6日).対象者の取り込み基準は,1)65歳以上,2)課題遂行に支障をきたす疾患が非麻痺側手指にない,3)麻痺側手指Brunnstrom recovery stage Ⅳ以上,4)麻痺側手関節伸展が随意的に20°以上可能,5)麻痺側Ⅰ~Ⅲ手指IP及びMP関節伸展が随意的に10°以上可能,6)安定した座位可能,7)初発脳卒中であること,を設定した.除外基準には,1)同様の課題を実施した経験がある,2)著明な認知機能障害がある,3)失語・注意障害・半側視空間無視などの著明な障害がある,4)著明な視覚障害によりモニターを見ることができない,5)医学的に安定していない重症な合併症がある,を設定した.測定項目は,年齢・性別・麻痺側・発症してからの期間などの基本情報,エディンバラの利き手テスト,握力,Fugl-Meyer Assessement(FMA),Simple Test for Evaluating Hand Function(STEF),Action Research Arm Test(ARAT), Functional Independence Measure(FIM), Motor Activity Log(MAL), 把握力調整能力測定機器(iWakka)を用いた把握力調整能力評価を実施した.iWakkaは等尺性区間,求心性区間,遠心性区間に分けることができ,数値が高いほど把握力調整能力が低いことを示す.本研究は,倫理審査委員会の承認を得て実施した.データ分析は,IBM SPSS Statistics26を使用した.把握力調整能力は年齢の影響を受けると報告されており(Kaneno, 2019),また脳血管障害者は機能回復が認められるため,発症してからの期間も把握力調整能力に影響している可能性がある.そのため,データ分析は,把握調整能力に影響のある年齢と発症してからの期間を調整した順位偏相関係数を用いて,有意水準5%で実施した.
【結果】非麻痺側の把握力調整能力(等尺性区間)は,非麻痺側の握力(r=-0.88),麻痺側のFMAの下位項目(手)(r=0.86),麻痺側のSTEF(r=0.83),麻痺側のARAT(r=0.81),MAL(AOU)(r=0.81),MAL(QOM)(r=0.82)と有意な相関があった.非麻痺側の把握力調整能力(求心性区間)は,非麻痺側の握力(r=-0.88)と有意な相関があった.麻痺側の把握力調整能力は,非麻痺側のSTEF(r=0.88)と有意な相関があり,麻痺側の把握力調整能力(求心性区間)は,非麻痺側のSTEF(r=0.88)と有意な相関があった.
【考察】本研究の結果から,麻痺側の上肢機能項目の値が低いほど,非麻痺側の把握力調整能力は高いという結果になった.これは,重度の上肢機能障害を有する者の方が,非麻痺側の使用量が増加し,把握力調整能力が維持・向上しやすかったことが影響している可能性が示唆された.しかし,本研究ではその因果関係までは明らかにできなかったため,今後さらにデータ数を増やして検討していく必要がある.