[PA-8-15] 脳血管疾患患者における姿勢および姿勢バランスと嚥下機能の関連
【序論】
脳血管疾患患者における嚥下障害は,急性期には30~40%,慢性期まで10%で残存するとの報告がある.さらに脳血管疾患患者では,運動麻痺や感覚障害によって頭頚部や体幹機能,姿勢バランスの低下を来しやすく,嚥下機能に影響を与えることがある.そのため,頭頚部や座位保持の安定性など,嚥下しやすいように姿勢への介入が行われている.しかし,頭頚部が安定し,座位保持が自立している場合には,姿勢と嚥下機能との関連を重視して姿勢の評価や介入を行うことは少ない.特に,脳血管疾患は高齢者の罹患率が高いことから,脊柱後彎を呈する割合が高まり,座位保持が良好であっても脊柱後彎が嚥下機能に影響を与えている可能性が考えられる.
【目的】
本研究の目的は,脳血管疾患を呈し座位保持が自立している患者の姿勢および姿勢バランスと嚥下機能の関連を調査することとした.
【方法】
対象は,A病院の地域包括ケア病棟に入院している脳血管疾患の患者とし,座位保持において見守りが必要ないこと,認知機能に問題がないこと,本研究への協力に同意が得られた者とした.対象は8名(男性2名,女性6名,平均年齢77.4±8.9歳)であった.診断名は脳梗塞6名,くも膜下出血2名であった.
評価項目は,BMI,相対的喉頭位置,座位姿勢,反復唾液嚥下テスト(RSST),Functional Reach testの身長補正値(FR補正値),口腔関連QOLであるGeriatric Oral Health Assessment Index(GOHAI)とした.座位姿勢は,利き手に箸,非利き手にお椀を把持させて前方正面を向いて食事姿勢を取らせ,その際の姿勢における頭部の位置と体幹前傾角度,円背指数を測定した.頭部の位置は外耳孔と第7頸椎棘突起を結んだ線と,第7頸椎棘突起を通る水平線の2本の線のなす角度であり,体幹前傾角度は肩峰と大転子を結ぶ線と大転子を通る垂直線の2本の線のなす角度を計測した.円背指数はC7とL4を結ぶ直線の距離をL,直線Lから脊柱後彎の頂点までの距離をHとしてH/L×100の式で算出した.
なお,本研究は黒石市国民健康保険黒石病院の承認を得たとともに,対象者全員に口頭および文書によって研究内容を説明し,書面による同意を得た.
【結果】
各評価項目における相関分析では,頭部の位置と円背指数(r=-0.762,p<0.05),体幹前傾角とFR補正値(r=-0.714,p<0.05)に有意な相関が認められた.また,BMIと円背指数(r=0.714,p<0.05),円背指数とRSST(r=-0.749,p<0.05)に有意な相関が認められた.さらに,RSSTにおいて2名(25.0%)が3回未満であった.
【考察】
今回の結果から,座位保持に問題がない脳血管疾患患者においても円背姿勢が頭部の位置と嚥下機能に関連することが分かった.また,RSSTはGOHAIと関連がなかったことから,嚥下機能の軽度の低下は自覚しにくく見逃されている可能性が予想された.したがって,姿勢保持に問題がない場合においても,円背姿勢と嚥下機能との関連性を考え,姿勢への介入の必要性を検討することが重要であると考える.特に,運動麻痺を生じていない場合においても加齢による円背姿勢を呈している可能性があるため,誤嚥性肺炎など予防的な観点からも嚥下機能と姿勢との関連を重視した評価が重要である.
脳血管疾患患者における嚥下障害は,急性期には30~40%,慢性期まで10%で残存するとの報告がある.さらに脳血管疾患患者では,運動麻痺や感覚障害によって頭頚部や体幹機能,姿勢バランスの低下を来しやすく,嚥下機能に影響を与えることがある.そのため,頭頚部や座位保持の安定性など,嚥下しやすいように姿勢への介入が行われている.しかし,頭頚部が安定し,座位保持が自立している場合には,姿勢と嚥下機能との関連を重視して姿勢の評価や介入を行うことは少ない.特に,脳血管疾患は高齢者の罹患率が高いことから,脊柱後彎を呈する割合が高まり,座位保持が良好であっても脊柱後彎が嚥下機能に影響を与えている可能性が考えられる.
【目的】
本研究の目的は,脳血管疾患を呈し座位保持が自立している患者の姿勢および姿勢バランスと嚥下機能の関連を調査することとした.
【方法】
対象は,A病院の地域包括ケア病棟に入院している脳血管疾患の患者とし,座位保持において見守りが必要ないこと,認知機能に問題がないこと,本研究への協力に同意が得られた者とした.対象は8名(男性2名,女性6名,平均年齢77.4±8.9歳)であった.診断名は脳梗塞6名,くも膜下出血2名であった.
評価項目は,BMI,相対的喉頭位置,座位姿勢,反復唾液嚥下テスト(RSST),Functional Reach testの身長補正値(FR補正値),口腔関連QOLであるGeriatric Oral Health Assessment Index(GOHAI)とした.座位姿勢は,利き手に箸,非利き手にお椀を把持させて前方正面を向いて食事姿勢を取らせ,その際の姿勢における頭部の位置と体幹前傾角度,円背指数を測定した.頭部の位置は外耳孔と第7頸椎棘突起を結んだ線と,第7頸椎棘突起を通る水平線の2本の線のなす角度であり,体幹前傾角度は肩峰と大転子を結ぶ線と大転子を通る垂直線の2本の線のなす角度を計測した.円背指数はC7とL4を結ぶ直線の距離をL,直線Lから脊柱後彎の頂点までの距離をHとしてH/L×100の式で算出した.
なお,本研究は黒石市国民健康保険黒石病院の承認を得たとともに,対象者全員に口頭および文書によって研究内容を説明し,書面による同意を得た.
【結果】
各評価項目における相関分析では,頭部の位置と円背指数(r=-0.762,p<0.05),体幹前傾角とFR補正値(r=-0.714,p<0.05)に有意な相関が認められた.また,BMIと円背指数(r=0.714,p<0.05),円背指数とRSST(r=-0.749,p<0.05)に有意な相関が認められた.さらに,RSSTにおいて2名(25.0%)が3回未満であった.
【考察】
今回の結果から,座位保持に問題がない脳血管疾患患者においても円背姿勢が頭部の位置と嚥下機能に関連することが分かった.また,RSSTはGOHAIと関連がなかったことから,嚥下機能の軽度の低下は自覚しにくく見逃されている可能性が予想された.したがって,姿勢保持に問題がない場合においても,円背姿勢と嚥下機能との関連性を考え,姿勢への介入の必要性を検討することが重要であると考える.特に,運動麻痺を生じていない場合においても加齢による円背姿勢を呈している可能性があるため,誤嚥性肺炎など予防的な観点からも嚥下機能と姿勢との関連を重視した評価が重要である.