第57回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-9] ポスター:脳血管疾患等 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PA-9-12] 回復期脳卒中患者の筋量変化と運動麻痺・ADLの改善との関係性

今井 寛人1, 齊藤 果那1, 岩田 学1,2, 佐藤 ちひろ2, 小枝 周平2 (1.一般財団法人黎明郷 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター, 2.弘前大学大学院保健学研究科)

【はじめに】
脳卒中患者は,運動麻痺による活動制限や安静臥床による廃用によって,体組成の変化をきたす.入院生活では,体重測定は多く実施されているが,体組成の測定は少ない.体組成の中でも,筋量は生活行為の獲得と関連することから,本研究では,回復期脳卒中患者を対象に,生体電気インピーダンス法を用いた体組成計で筋量を測定し,その変化が運動麻痺や日常生活活動(ADL)改善に与える影響について予備的な調査を行った.
【方法】
対象は,当院回復期病棟に入院した軽度から中等度の脳卒中患者18名(平均年齢76.7±8.0歳,男性10名,女性8名)である.対象には,各々の発症日から4週目と8週目の2回,体成分分析装置InBody S10(InBody Japan, Tokyo)を用いて体組成の計測を行った.この装置では部位ごとの体組成が算出されるが,本研究では体幹および麻痺側と非麻痺側上・下肢の筋量を解析に用いた.また,運動麻痺の指標としてFugl-Meyer Assessment(FMA),ADLの指標としてFunctional Independence Measure(FIM)を体組成計測時に検査した.4から8週目の各部位の筋量の変化量とFMA,FIMの変化量との関係はSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.解析には,SPSS26.0を用い,危険率が5%未満を統計学上有意とした.なお,本研究は発表者の所属施設の承認を得た後,対象者の同意を得て実施した.また,研究発表に際して報告すべきCOIはない.
【結果】
対象者の体重は,18名中12名(66.7%)が減少したが,4週目に対する8週目の体重変化率は-3.9~4.9%であり,大きな変化ではなかった.筋量とFMAとの関係では,非麻痺側下肢とFMA「上肢」(rs=0.49)「手関節」(rs=0.51)「手指」(rs=0.57)「バランス」(rs=0.48)得点との間に有意な正の相関が認められた(p<0.05)ほか,麻痺側下肢とFMA「協調性」得点において有意な負の相関(rs=-0.56, p<0.05)が認められた.筋量とFIMとの関係では,非麻痺側下肢とFIM「トイレ動作」(rs=0.59)「排尿管理」(rs=0.54)「移動(歩行)」(rs=0.57)得点との間に有意な正の相関が認められた(p<0.05)ほか,非麻痺側上肢とFIM「食事」(rs=-0.47)「更衣(下衣)」(rs=-0.54)得点,麻痺側下肢とFIM「移動(階段)」(rs=-0.48)得点との間に有意な負の相関が認められた(p<0.05).
【考察】
本研究の対象者は,ほとんどが体重減少の傾向を示しており,それに伴い筋量も減少するため,運動麻痺改善やADL能力向上とは負の相関を示すと考えられた.しかし,筋量変化とFMA,FIM変化量との関係では,非麻痺側下肢筋量とFMA「上肢」「手関節」「手指」「バランス」得点および FIM「トイレ動作」「排尿管理」「移動(歩行)」得点のように筋量変化と正の相関を示すものが散見された.このことから,非麻痺側下肢の筋量の向上は,抗重力姿勢の保持やそれに伴う活動の向上,上肢機能の使用の機会を向上させ,これらの運動機能,ADL能力の向上に寄与する可能性が推察された.今後は,対象者を増やし,性差や脳卒中の重症度,実際の活動量の影響を加味した詳細な検討が必要である.