第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

心大血管疾患

[PB-1] ポスター:心大血管疾患 1

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PB-1-1] 心不全高齢者の健康関連QOLの予後と関連するICF項目の検証

塩田 繁人1, 北川 知郎2, 日高 貴之3, 木原 康樹4, 木村 浩彰5 (1.広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門, 2.広島大学大学院医系科学研究科循環器内科学, 3.県立広島病院循環器内科, 4.神戸市立医療センター中央市民病院病院長, 5.医療法人生和会理事長)

【はじめに】
高齢化とともに心不全高齢者は増え続けており,2030年には130万人を超える.心不全患者は再発と寛解を繰り返し,徐々にADL・QOLが低下する.心不全の再発・機能的予後には疾病の重症度だけでなく,運動耐容能や認知機能,ADL,IADL,社会的サポート体制などが関連する.日本心不全学会の『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』では,ICFを用いた包括的な生活機能の評価が推奨されている.我々はICF Linking Rulesに関する文献レビューとエキスパートパネルに対するRAND Delphi調査によって心不全高齢者のICF評価手法を開発した(Shiota S.2022).本研究の目的は,心不全高齢者を対象としたコホート試験においてICF評価手法が実用可能かを検証することである.
【対象と方法】
研究デザイン:前向きコホート研究.セッティング:2021年10月1日~2022年9月30日の間に広島大学病院と県立広島病院,三次地区医療センターに入院した心不全患者をリクルートした.退院時をベースラインとし,追跡調査は退院3ヶ月の外来受診時に実施した.研究参加者:75歳以上の自宅退院した症候性心不全患者.調査項目:主要アウトカムを健康関連QOL(Euro QOL-5D-5Lの効用値)とし,我々が開発した『心不全高齢者のICF評価マニュアル』に基づきICF43項目を測定,退院後の社会保障費を調査した.再入院または死亡の時点で追跡調査を終了した.
統計学的解析:収集したデータは単純集計した後,退院3か月後のQOL変化量と退院時のICF43項目の相関係数を検証した.解析にはSPSS vol.27を用い,有意水準を両側5%未満とした.
倫理的配慮:広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:E- 2580).また,臨床試験の実施に際し,UMIN登録を行った(UMIN000045315).
【結果】
2023年1月31日時点での登録患者は50例,退院3ヶ月の追跡調査のデータが揃ったものは19例であった.ベースラインでは,心不全分類はHFrEF3例(15.8%),HFmrEF3例(15.8 %),HFpEF13例(68.4%),NYHA分類はclassⅠ6例(31.6%),classⅡ12例(63.2%),classⅢ1例(5.2%),classⅣ0例(0.0%)であった.QOLは退院時0.82±0.16,退院3ヶ月後0.77±0.21であり,両群間に有意な差を認めなかった.QOLの変化量と退院時のICF43項目の相関係数を確認した結果,b545水分・ミネラル・電解質バランスのみ,有意な正の相関を認めた(r=0.46, p=0.047).退院3ヶ月後の社会保障費を調査できたものは6例であり,中央値156,245円(98,022円-266,225円),13例は欠損データとなった.
【考察】
退院時のICF43項目の評点から,心不全高齢者は心機能や心臓の構造に加えて,睡眠機能や前頭葉機能,心機能,運動耐容能,筋力,ADL,IADL,余暇活動に問題を抱えていることが明らかとなり,先行研究を支持する結果であった.また,これらの障害は退院3ヶ月後も継続していたが,QOLの予後にはほとんど影響を与えていなかった.今回,社会保障費の測定において,約7割で欠損データとなり解析が困難であった.ICF評価およびデータベースについては実用可能であることが確認されたが研究対象者のリクルートおよび社会保障費の測定については検討が必要と考える.今後は大規模調査に向けた研究体制の整備が望まれる.