第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

心大血管疾患

[PB-1] ポスター:心大血管疾患 1

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PB-1-4] ADOCを用いたたこつぼ心筋症に対する作業療法

増田 智也, 小林 勇基, 上田 純介, 桑島 壱成, 三本木 光 (イムス葛飾ハートセンターリハビリテーション科)

【はじめに】たこつぼ型心筋症は身体的・精神的ストレスを契機に高齢女性に多く発症するとされている.今回,病前生活の身体的・精神的ストレスが主原因と考えられる高齢女性のたこつぼ型心筋症症例への介入機会を得た.症例へのストレス軽減を目標とした生活習慣の改善,再発予防に向けた指導を実施したため報告する.
【症例紹介】80代女性X月Y日,家事中に嘔気が出現し受診.12誘導心電図上は2,3,avF,V4〜V6でST変化を認めた.左室造影検査でたこつぼ型心筋症の診断となり入院.翌日からOT,第2病日よりPTの介入が開始となった.血液データはBNP866pg /mlであった.心臓超音波検査ではEF51%,壁運動では心基部の過剰収縮,心尖部の低収縮を認め,ApicalTypeと思われた.左室流出路狭窄の影響により3〜4度の僧帽弁閉鎖不全症,1〜2度の三尖弁閉鎖不全症を認めた.また下大静脈径は22mmと呼吸性変動の低下,右室の収縮期圧は46mmHgと右心負荷を認めた.既往歴は高血圧症,甲状腺機能亢進症,発作性心房性細動.薬剤はリバーロキサバン15mg,プロピルチオウラシル50mg,オルメサルタン20mg,アムロジピン5mg,メコバラミン0.5mgが処方された.病前生活は息子,夫と3人暮らし.夫は高齢で亭主関白な性格.息子は日中と夜間の仕事を掛け持ちされていた.そのため全ての家事や買い物は症例が一人で実施していた.なお本報告にあたり症例からは書面にて同意を得ている.
【方法】たこつぼ型心筋症は身体的・精神的ストレスが原因で発症し急性期発症では合併症リスクがあるとされている.そのため収取期血圧や心拍数の上昇などの全身状態に留意しベッドサイドから介入した.OTとしては病前,入院生活のストレスをNIOSHのストレスモデルを用いて聴取を行った.介入は評価結果に基づき本人の希望を阻害せず生活スケジュールの改善や再発予防への指導を行った.
【経過と結果】初回評価:MMSE29点で認知機能は問題なし.DS14では,悲観的感情1点,社会的抑制が12点と抑制傾向なタイプであった.HADSは不安5点,抑うつ9点であり入院生活での活動制限や退院後の再発に対する発言を認めた.病前生活は1日を通し家事や買い物を行い,連続した睡眠が取れていない状態であった. ADOCを用いた所症例からは,ショッピングと外食が列挙された.各活動の重要度,満足度は共に4点,1点であった.この時,趣味に対しての外出意欲は生活の繁忙さから10点法評価で0点であり生活の繁忙さから趣味活動に制限を認めた.最終評価:HADSは不安1点,抑うつ5点まで改善し退院後の再発に対する発言は消失.外出意欲は0点から8点まで向上.ADOCは退院後1週間で再評価し,初回評価と変化はなかった.
【考察】先行研究では,病態理解と自己管理能力の獲得が不安や抑うつの軽減,趣味活動はストレスの軽減に繋がるという報告がみられる.本症例では,病態理解と自己管理能力の獲得,また歪んだ認知の修正(活動が再発に繋がるという認知の歪みから,趣味活動によるストレス軽減が再発予防に繋がるという認知)が行われたことで不安や抑うつが軽減したと考えられる.また高齢者の外出意欲の向上は食材・日用品以外の買い物,趣味活動が影響すると報告されている.本症例の趣味は外食やショッピングであり,本介入で趣味活動への参加時間の捻出や嗜好に沿った近隣店舗の魅力の提供を行ったことで外出意欲の向上に繋がったと考えた.本疾患は発症から数年以内の再発が報告されているが,本症例は発症から現在まで再発はない.今後も経過観察は必要だがOT介入が再発予防の一助になる可能性が示唆された.